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【レーダーと雨量と地域の弱さ Vol.1】2014年8月の広島豪雨の場合(その1)

こんにちは。渡邉です。

気象情報の利用特集ではここまで、レーダーと雨量計の基本的な使い方をまとめてきました。

実際に災害が起こるような大雨がある場合に、これら2つの情報を使うとどう役に立つのかという点について、新シリーズで書いていきたいと思います。

まずは2014年8月の広島豪雨のケースを取り上げたいと思います。広島豪雨による土砂災害は2014年8月20日の未明に発生し、広島市安佐南区と安佐北区で土砂災害が166か所発生し、74名が犠牲となりました(消防庁調べ*1)。

気象庁のアメダスの雨量計で観測された雨量を基に、当時の雨の分布を示したものが以下の図です。

8月19日11時~20日9 時までのアメダス期間降水量
(気象庁ホームページより)*2






















上の図を見ると明らかなように、大雨となったのは広島県内の一部です。県西部の北東方向から南西方向に伸びるエリアが大雨となりました。この図は一連の雨でこのような積算雨量となったといういわば「結果」なのですが、大雨の「過程」は次のようなものでした。1時間ごとの雨雲のレーダー画像をご覧ください。

雨雲のレーダーが1時間ごとに
示されています
(気象庁ホームページより)*2





























上記を見ると、19日22時の時点で大雨となっていますが、23時の段階ではいったん落ち着きました。しかし、20日0時には広島県西部から活発な雨雲が近づいてきて、1時・2時・3時とそのまま同じようなところで見た目上、雨雲が動かなくなり、結果として雨量がまとまった訳です。

アメダス三入の当時の10分間雨量を見てみましょう。赤で囲った部分は10分間雨量が10ミリ程度から20ミリを超えた時間帯です。1時50分から4時までがピークだったことが分かります。

アメダス三入の10分間雨量
(気象庁ホームページより)
























ちなみに、10分間雨量10ミリクラスが1時間続けば時間雨量60ミリ、15ミリクラスであれば90ミリ、20ミリクラスであれば120ミリといった雨量になります。

アメダス三入の場合、1時50分段階の10分間雨量が14.5ミリだったところ、そして当時の気象レーダーを見ると雨雲が同じところに停滞し続ける形となっていたことから、発達した雨雲がかかっていた地域では災害の発生が非常に懸念される状態に直面しつつあったことが分かります。

雨雲の動きと10分間雨量から見て異常事態が仮に認識されていれば、犠牲者の数が減ったのかどうかは分かりません。ただ、この2つの情報を使いこなすことができるかどうかで、早めの避難(家の中のより安全な場所への避難を含む)が可能になるのではないかと思います。

このように、雨雲のレーダーと10分間雨量は大雨の危険性をキャッチする核となる情報として機能します。

(「2014年8月の広島豪雨の場合(その2)」に続く)


(出典)
*1:消防庁8月19日からの大雨等による広島県における被害状況及び消防の活動等について(第44報)
*2:平成26年8月19日から20日にかけての広島県の大雨について
http://www.jma-net.go.jp/hiroshima/siryo/20140820_sokuhou.pdf