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【お知らせ】避難勧告や避難指示に関する過去の特集記事ダウンロードについて

こんにちは。渡邉です。

大雨や洪水が予測される事態に対して避難勧告や避難指示の基準をどう設けるか、どのように住民とコミュニケーションを図るかについては、特集記事として事例をもとに以前考察したことがあります。

特別警報の利用の仕方1つをとっても自治体ごとに千差万別であり、多くの事例に問題点が隠れています。今回の水害でも特別警報の扱い方などが問われていますが、平常時からすでに問題を含んでいたものが非常時に顕在化してしまったとも言えます。

また、日本の防災行政や災害時のコミュニケーションの課題として、避難勧告・避難指示を発表した事実(=例えて言えば赤信号をつけたこと)の伝達は重視されますが、避難勧告等を発表した「根拠」の部分(=なぜ赤信号をつけたか)をもとに住民の行動を促していくという視点の欠如が挙げられます。この欠点はアメリカの事例と比較した記事の中で指摘しています。

個別の記事へのリンクは以下の通りです。

これらすべての記事をまとめたPDFについてはこちらからダウンロードできますので、今後の水害対策の参考としてご利用を頂ければ幸いです。

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1.避難勧告等の発表基準に関する問題提起
2015年2月13日 【日本】その避難勧告の発表基準に問題はありませんか?
2015年2月14日 【日本】避難勧告等の基準を考える上での論点(愛知県A町)
2015年2月15日 【日本】内水氾濫を対象とした避難勧告等の基準に対する考察(静岡県Y市)
2015年2月16日 【日本】記録的短時間大雨情報を避難勧告のトリガーにしたケースの考察
2015年2月17日 【日本】避難勧告等の基準に大雨の特別警報をどう取り入れるか(愛知県K市)
2015年2月18日 【日本】避難勧告等の基準に大雨の特別警報をどう取り入れるか(山形県S市)
2015年2月19日 【日本】半世紀近く前に作られた基準と現行の土砂災害関係の情報をどう避難勧告基準に織り交ぜるか

2.避難勧告等の基準づくりに役立つ情報
2015年2月21日 【コラム】私が避難勧告の基準づくりに携わるとしたら真っ先に見る情報
2015年2月22日 【コラム】私が避難勧告の基準づくりに携わるとしたら2番目にやること

3.避難勧告等の発表とコミュニケーション
2015年2月23日 【日本】避難勧告の発表に対する市のスタンスをホームページに明記…

【プレゼン】日本の防災文化は気象情報利用力で生まれ変わる

こんにちは。渡邉です。

今日はいつもと少し趣向を変えて、Preziというプレゼンソフトを使って気象情報利用力の紹介です。

以下のプレゼンテーションの題名は少し大風呂敷を広げた形ですが、全くの誤りではないだろうという思いがあるのでそのままにしました。

Preziはぐるぐる動かせるので作っていると若干酔うのと、日本語入力が不安定なのが玉にキズですが、動きがある方がやはりわかりやすいので、今後何回かのシリーズにしてみたいと思います。



(うまく見られない方はこちらからどうぞ)
https://prezi.com/repqbcnbicnm/presentation/?utm_campaign=share&utm_medium=copy

【コラム】オランダやオーストラリアの水害対策事例に基づいて意見交換を行いました

こんにちは。渡邉です。

気象とコミュニケーションデザインの事業では、日本に向けて気象情報の利用方法の提案を行っている一方で、水害対策の先進地として知られるオランダにいることのメリットも活かしてオランダ視察の支援も行っています。
先月後半、私にとって記念すべき最初のお客様とアムステルダムでお会いしました。
私のこのブログを見てオランダ訪問に併せて意見交換をしてみたいとおっしゃっていただいたのは、NTTデータの前社長(現在は相談役)である山下徹氏です。
山下氏は総務省が平成26年に設置した「災害時等の情報伝達の共通基盤の在り方に関する研究会」(詳しくはこちら)の座長を務められた他、内閣官房ナショナルレジリエンス(防災・減災)懇談会(詳しくはこちら)等にも参加されるなど、日本の防災施策に関して企業の立場から積極的に貢献されていらっしゃる方です。























意見交換の中では、日本の防災対策の行政依存性が話題になりました。
私自身、2000年代前半に地方自治体の防災行政を担う立場にいたことがあり、こうした構造的な問題には感覚的に気づいていました(余談ですが、「行政」も「地域」や「住民」に依存していると感じていました)。ただ、「行政依存ではないあり方」の具体像を明確にイメージできるようになったのはごく最近のことで、オーストラリアの自治体や市民がどのように災害に対応するかという知見を豪州留学(2013年~2014年)で得た時です。
日本の防災を分析するには比較する軸が必要だというのが私の個人的な経験からの結論です。
比較軸としてオーストラリアやオランダがどこまで有効かという面もありますが、両国の事例紹介を元とした山下氏との約2時間の話し合いは話題が尽きることなく瞬く間に過ぎました。
なお、意見交換の参考用にオランダの堤防だけを網羅した300ページを超える大型本(こちらです)を持参しました。1ページ1ページ、山下氏に丁寧に見て頂けたのがとても印象に残っています。
最後になりますが、この意見交換会は、私自身にとっても日本の防災の課題を改めて認識することができた貴重な場となりました。この場をお借りしまして、山下様はじめ、NTTデータ秘書室の皆様に厚くお礼申し上げます。

【コラム】低地の国、オランダの子どもの遊び場にあるものは?

こんにちは。渡邉です。

オランダで子どもたちを公園に連れていくと船をモチーフとした遊具がよく目に入ってきます。例えばこうしたものです。




オランダは17世紀~18世紀に海上交易の覇権を握っていたという歴史があるからか、あるいは単にヨーロッパ最大の港があるからか、個人の家にはミニチュアの船が飾ってあったり、大型客船が寄港したことがテレビのニュースになったりするなど、船に対する思い入れがひときわ強い土地の様です。このため船の遊具が多いのかもしれません。

そしてもう一つ。公園でよく目にするものはこちらです。ロッテルダム市内の別々の場所(1枚目は公園、2枚目は幼稚園の一角で休日などに一般開放されている場所)で撮った写真ですが、共通するものは何でしょう?











































答えは、「アルキメデスのポンプ」と呼ばれる水を低いところから高いところに送る装置です。子どもたちが取っ手をぐるぐる回すと水が昇ってきて上から出てきます。























オランダは国土の約26%が海水面以下のため、雨水や地下水の強制排水が欠かせません。この仕組みを使った揚水ポンプはオランダでも現役です。以下の動画はロッテルダムからほど近いキンデルダイクと言う場所にあるポンプ場です。


子どもたちが遊ぶ公園に揚水ポンプや河川をモチーフとした遊具がさりげなく設置されているあたりに、何世紀にも渡って水と関わってきたオランダならではの土地柄を感じます。


(関連記事)
【オランダ】子どもも大人も体験を通して河川管理を身近に
http://www.wpcd.jp/2014/11/blog-post.html

【オランダ】オランダの小学生が参加した「波に負けない砂山作り」のイベントが面白い
http://www.wpcd.jp/2015/06/blog-post_84.html

【オランダ】オランダの小学生が参加した「波に負けない砂山作り」のイベントが面白い

こんにちは。渡邉です。

今日はオランダの防災・環境教育について書いてみます。

オランダは水との何世紀にも渡る格闘の中で国土を作ってきた国です。このオランダが一番恐れている水害は北海からの高潮によるものです。

1953年にオランダ南部で大規模な高潮被害が発生し、1800人以上が犠牲になるという災害が起きました。これを契機に国を挙げた治水計画(デルタプラン)が動き出し、堤防や高潮用のバリアなどが張り巡らされ、オランダでは1953年の災害以降、水害で人命は失われていないとのことです。

海面上昇の見込みや地盤沈下により高潮は今後も大きな課題とされていますが、治水インフラが高度に整備され、すでに半世紀上大規模な水害が国内で発生していないため、人々の災害に対する意識が逆に低いというパラドックスがあります。

このため、水関係の当局は様々な機会を通じて住民の危機意識の向上に取り組んでいます。

その一環として開かれたのが今日ご紹介するイベントです。以下の写真をご覧ください。

これは、2015年6月16日にオランダ国内の8つの小学校が参加して行われた"The Battle of the Beach"という催しの一コマです。子どもたちが海辺で美しい砂の城を作って競い合うというイベントではなく、満ちてくる潮に対して抵抗力の高い砂山が作れたら勝ちというルールです。


海に近いところに幾重にも堤防を築いたチームもありましたが、どの砂山もすべて波に洗われ跡形もなくなって行くのを見て、子どもたちは視覚的に波の力や堤防の重要性を学んだとのことです。

The Battle of the Beachのホームページ(こちら)には去年のイベントの動画がありますので以下に引用しました。楽しいイベントの中でオランダの防災の根幹に関わる重要なことをさりげなく学べるようにしている所が非常に興味深いと言えるのではないでしょうか。

The Battle of the Beach
(関連記事)
【オランダ】子どもも大人も体験を通して河川管理を身近に
http://www.wpcd.jp/2014/11/blog-post.html

【コラム】気象情報に対する反応的な思考方法から脱しよう

こんにちは。渡邉です。

NHKの解説委員室のホームページに「時論公論 『特別警報 3年目の課題』」という記事が掲載されています(該当ページはこちらです)。今日はその記事を基に概念的な議論をしてみたいと思います。

この記事の中では、これまでの特別警報の発表事例に基づいて、気象庁の運用面の課題や情報を受け取る自治体や住民側の理解不足の課題が指摘されています。

興味深い論考ではあるのですが、「気象情報を有意義に使うということは何をさすか」という視点で見ると私と見解が異なってきます。

この記事を書いた解説委員は最後の段落で次のように述べます(下線部は筆者による)。
災害時の情報は命に関わる情報です。情報を受ける側である自治体と住民が、その情報がでたらどう対応するかがわかっていないと防災に役立てることができません。
上記の主張を図で表すと次のようになります。



この思考方法を読み解くと、「情報が出たら」という前提があり、その情報に反応して行動をすべきであるという枠組みが見えてきます。

この枠組みは一見正しいように見えますが、 情報が適切なタイミングで発表されることを前提としている(実際には予報に不確実性があるのでタイミングよく発表されるとは限らない)「警報」や「特別警報」といった情報の発表自体に注目が集まる(実際は予測されている雨量や大雨の継続時間など、警報や特別警報の中身の方が防災上重要な意味を持つ) 等の問題点を含んでいます。
「気象情報には反応的に対応するものである」と言うのは防災の常識になっている部分があるので他の使い方が見えづらいかもしれませんが、要は思考方法を逆転させれればいいのです。
このブログでも折に触れて何度も同じことを書いていますが、今住んでいる場所でどのような気象災害(水害や土砂災害等)のリスクがあるかということを出発点とし、その危険性が高まっているかどうかを数ある情報群の中から見抜いていくという使い方が代替案です。
これを図にしてみます。

この思考方法の第一のメリットは、情報待ちの姿勢が排除されていることです。
また、災害が起こり得る雨量などを念頭に情報収集をするので、警報や特別警報が本来伝えたい予測情報の方に注目が集まると思います。
さらに、注意報・警報・特別警報の発表有無だけではなく、リアルタイムの観測情報や直近の予測(ナウキャスト情報)など数々の情…

【コラム】空港予報を使って台風の風のピークを読む方法

こんにちは。渡邉です。

台風や発達した低気圧等による強風・暴風のピークを知る方法の1つに航空機用に発表される飛行場の予報が便利です。TAF(タフ)と呼ばれる「運航用飛行場予報気象通報式」のことです。
TAF自体は以下のように少し暗号じみています。 【那覇空港のTAFの例】
TAF AMD ROAH 111940Z 1119/1224 16025KT 6000 SHRA SCT008 BKN015
 TEMPO 1119/1121 16030G45KT 1500 +TSRA FEW005 BKN008 BKN015 SCT020CB
 BECMG 1121/1122 19035KT
 TEMPO 1121/1124 19045G60KT 1500 +TSRA FEW005 BKN008 BKN015 SCT020CB
 BECMG 1123/1201 31015KT NSW
 BECMG 1212/1215 05006KT これを見ると現在接近している台風6号の風のピーク時間帯や風速・風向などが分かるのですが、一般的には上記の電文はなじみがありません。そこで役に立つのがこちらのサイトです。
















このサイトで例えば那覇空港を選ぶと、実況を示す情報であるMetar(メター)(左側)と予測を示すTAF(右側)の電文(冒頭のような暗号じみた文)が翻訳されたものを見ることができます。























TAFの便利なところは以下の点です。

強風や暴風が吹く時間帯が詳しく分かる風速や瞬間風速を通じて風のレベルが分かる嵐が終わる時間帯が分かる
那覇空港の上記の例でみれば、Metarに示された現状の南西 16m/s 瞬間風速22m/sという風よりも強い風(南 23m/s 瞬間風速 31m/s)が12日9時にかけて一時的に予測されています。

風速と体感的な状況や懸念される被害との関連性は以下の気象庁の表を見ると分かりやすいです。

















TAFはすべての空港で発表される訳ではありませんが、飛行場がある地方の風のピークを大まかに知る情報源として有益な情報だと思いますのでぜひご覧ください。台風用途として使うだけではなく、最初に述べたとおり、発達した低気圧などによる強風・暴風時にも有効です。

【コラム】台風の際に押さえたい「地方気象情報」や「府県気象情報」

こんにちは。渡邉です。

台風6号の風に関する情報提供で沖縄気象台が発表している情報がわかりやすいのでご紹介したいと思います。以下の資料の出典はこちらです。





















分かりやすいと思われる点:

風の影響の出始めや風のピーク、台風最接近が1つの表にまとめられていて判断しやすい風向や風速、最大瞬間風速までまとめられているので多くの資料を別々に見る必要がない暴風警報の発表予定時間帯も言及されているので行政等も事前に対策を立てやすい暴風警報や強風注意報の発表状況が分かる次の情報がいつ出されるかが分かる 情報の有効期限が「発表時刻からおおむね3時間」であると明記してあるのもこの資料のポイントの1つです。以前、賞味期限が切れたような情報がYahooのトップニュースに流れることがあるという記事を書きましたが(こちらです)、刻一刻と変わっていく状況を反映していない気象情報は有益ではないため、気象情報の有効期限の言及は非常に重要だと思います。

なお、以下のルートで本情報は入手できます。

1.まずは気象庁HPの「防災情報」(こちら)から「気象情報」を開きます。



2.地方のところから「沖縄」を選びます。



3.さらに「府県」のところから「沖縄本島地方」を選びます。

4.その中の1つのファイルが今回紹介したものです。




















気象庁のホームページではなく、沖縄気象台のページ(こちらです)からもアクセスできます。

(ア)「台風関連の情報」を開きます











(イ)「各地方の情報」を見ます。例として「沖縄本島地方」を選びます。




(ウ)右側に開いた情報が沖縄本島に関する情報なのでそこからファイルを開きます












今回の記事は沖縄気象台の発表情報を例にしました。

このブログでも何度か繰り返し述べていますが、「地方気象情報」や「府県気象情報」といった「気象情報」には詳細でかつ分かりやすい解説や今後の予測情報が含まれていることがありますので台風や大雨の際にはご覧になられるとよいと思います。



【お知らせ】防災啓発のウェブサイト等に関する無償コンサルティングのお知らせ(先着3自治体対象)

こんにちは。渡邉です。

出水期が近づいてきたこともあり、水害対策や豪雨対策に力を入れる自治体を対象として、防災啓発に関する無償のコンサルティングを試行的に行ってみたいと思います。

内容としましては、水害対策のパンフレットやウェブ媒体(自治体のホームページ等)を拝見させていただき、私の専門とする「気象情報の利用」という側面から気付いた点についてA4・1~2枚程度にまとめてフィードバックをさせていただくというものです。

まずは先着3自治体を対象として行ってみたいと思います。

なお、フィードバックの内容についてはブログ等で一般に公開する形ではなく非公開で個別にお伝えします。また、個人の方は今回は対象としておりませんのでご了承ください。なお、災害対策に関係する企業の方についてはご希望がございましたらご相談ください。

このブログでも何度か独自に自治体の例を取り上げてコメントをしてきた経緯がありますので、国内外の具体的な例を基に改善点などのご提案ができると思います。

(例)
【日本】箕面市HP上にある「平成26年夏の豪雨被害概要」に対する一考察
http://www.wpcd.jp/2015/02/hp26.html

【日本】災害記録誌を作る際に参考となる和歌山県古座川町の浸水実績図
http://www.wpcd.jp/2015/02/blog-post_12.html

【コラム】避難指示を出した根拠を丁寧に説明して住民とコミュニケーションを図った例(三重県鈴鹿市)
http://www.wpcd.jp/2015/02/blog-post_25.html

災害情報をうまく利用して地域の防災力を向上させたいと考えている自治体の方からのご連絡をお待ちしております。

お申込み・お問い合わせはこちらへ。



【コラム】大雨の予測に関するニュース記事を読むときのコツ

こんにちは。渡邉です。

4月20日のYahoo!Japanのトップニュースの1つが「太平洋側 非常に激しい雨警戒」というものでした。今日の話題は、インターネット上でニュースになる時間と天気予報の作成された時間に「ズレ」があり、ニュースとして話題になる時にはすでに大雨が終わっているという例です。

■大雨に警戒が呼びかけれているけど・・・
2015年4月20日、Yahoo!のトップページの記事で大雨に警戒が呼びかけられました。
















「非常に激しい雨に警戒」という記事の中身はこちらです。4月20日の11時36分に作成され、12時00に配信されました。最終更新は同日の14時16分とあります。なお、上記のトップページは4月20日の16時50分に更新されたものです。





















今回注目したいのは、最後の段落にある四国地方の予想です。抜粋しますと次の一文です。
「21日午前6時までの雨量は、四国地方の多いところで200ミリと予想されています。」 では、この記事が配信された後にあたる4月20日13時50分時点のレーダー画像(気象庁高解像度降水ナウキャスト)を見てみます。これを見ると雨が強く降っている地域は東海地方であり、四国にはほとんど雨雲がかかっていないことが分かります。






















■記事が配信された時には四国の大雨はピークを越えていた
12時時点で配信された記事では「四国地方では翌朝6時まで200ミリ」と言われていますが、そこから2時間ほどしかたっていないレーダー画像(上の図)を見るとそのような気配すらありません。

四国の大雨は実は情報が発表された12時にはピークを越えつつありました。

20日の午前中は確かに四国の太平洋岸は大雨で、所々に発達した雨雲がかかっていました。参考までに下の図は同日7時50分のレーダー画像です。黄色やオレンジ・赤などの部分が高知県を中心にかかっています。





















高知県内の繁藤(シゲトウ)というところのアメダス雨量の記録を見ると、午前中を中心にして1時間30ミリ前後の雨が降ったことが分かります。

























明日21日の朝にかけてまだこれから大雨が降るのではないか?という見立てもあるかもしれませんが、すでに大雨注意報は解除されており一連の大雨は終わっています(下図の黄色部分が注意報の発表地域、灰色は発表なしを示します)。

























■なぜこうしたずれが起こるのか?
では、四国で実際には大雨が終わっている…

【コラム】気象情報の取り扱い説明書を作るとしたらどう作りますか?

こんにちは。渡邉です。

今日は1つ思考実験です。「気象情報の取り扱い説明書(トリセツ)」というものを作るとしたら、どう章立てしますか?

























多くの自治体で作られている防災ハンドブックなどでは、「どこから情報が入手できるか」、「情報の種類は何か」といったところが気象情報のトリセツの主要項目になります。

一例としてはこのような形でしょうか。

  1.気象情報に注意を呼びかける
  2.災害が起こりそうな時に発表される気象情報の種類を伝える
  3.情報の伝達経路をまとめる

このアプローチに対して、私は異を唱え続けています。
なぜならこれは目的に直結していない形だからです。

私の持論ですが、「役立つ気象情報」には逆転の発想が必要です。

気象情報を使う目的は、気象情報から災害の可能性を見抜くことに尽きます。

これが正しいとすれば、災害を引き起こしかねない気象状況を予測や実況の中から読み取っていく方法を基にトリセツを組んだ方がはるかに合理的でありまた実用的です。
例えば次の3ステップです。

  1.この地域は水害の可能性がある・土砂災害の可能性がある<前提>
  2.数ある気象情報の中から災害が発生しそうなサインを伝えるものを整理する<取捨選択>
  3.その気象情報の具体的な見方やくせ、賢い使い方などを伝える<気象情報の実践的利用>

気象情報は以前のブログでもまとめましたが実際はかなり種類が多いです(以下の図を参照)。一つ一つの項目がさらに細かな情報を含んでいるので、実際の情報量はさらに増えます。

「あれも見よ、これも見よ」よりもむしろ目的に沿って取捨選択をした上で、情報の解釈の方法を伝えた方が効率的です。
















「災害時に気象情報を見ましょう」という呼びかけ程度のトリセツよりも、その地域の災害特性に合わせて必要とされる気象情報に基づいてトリセツを組んだ方が役に立ちそうだと思いませんか?

パラダイムを変えていく必要があります。

分かりやすい気象情報の伝え方や、情報伝達手段の整備といった面に着目されることが多いですが、気象情報から災害の可能性を見抜くという目的から考えて気象情報の利用方法の整理ができるかというところが本質的な課題です。

【天気のトリビア】もはや必ず当たるオランダ式天気予報

こんにちは。渡邉です。

オランダの天気予報が面白いとオランダ人が教えてくれました。

確かに面白いです。以下をご覧ください。特に北の部分です。雷、ひょう、雪、晴れ、曇りマークがいっぺんに表示されています。
























日本語堪能なそのオランダ人によると、「やっぱりオランダ的な気まぐれなお天気だ!オランダ語で、"Wisselvallig"(変わりやすい)と言います」とのこと。

5つの現象(雷、雹、雪、晴れ、曇り)を一度に示しながら結論として伝えたいことはただ一つ、天気の変わりやすさです。

そしてそれはオランダの天気的にはいつものことなので、もはや必ず当たる最強の予報の1つだと思います。


【世界】ベルギーでは10日先までの洪水予報の詳細が簡単に閲覧できます

こんにちは。渡邉です。

欧州の気象情報/洪水予報等のポータルサイトを巡る旅、第2弾はベルギーです。

WATERINFO.beがそのサイトです。ちなみにこのサイトの表示言語は3種類あります。ベルギー北部はオランダ語圏、南部はフランス語圏のため、蘭語・仏語の他に英語も選ぶことができます。
















基本的なメニューとしては、以下のとおりです。
1. 洪水
 1.1  現在の状‘況
 1.2  48時間以内の短期の予測
 1.3  10日間先までの長期の予測  2. 潮の影響(沿岸部だけではなく、潮の満ち引きで影響を受ける河川も含む)
 2.1  現在の状況
 2.2  48時間先までの短期の予測  3. 降雨
 3.1  現在の状況
 3.2  過去から48時間先までの短期の予測  4. 干ばつ
 4.1  現在の状況
 4.2  10日先までの予測 実際に触ってもらえると分かるのですが、かなり細かい情報が公開されています。特に便利そうだと思うのは、1.3として挙げた10日先までの長期の洪水予報です。実際の例は次のようになります。


















一番上のグラフが河川の流域雨量("NU"とあるのは現在の時間です)、2段目が水位、3段目が流量です。

先のことになると不確実性が増す訳ですが、そこはモデル計算結果のばらつきがそのまま表示されているようです(1段目では予測の線が複数あること、2段目・3段目ではグラフの示す幅が広いことを指して言っています)。

「予測には幅があるものだ」という理解を持ちながらこれを利用すれば、概ねいつ・どのような規模で増水する可能性があるのかを前もってつかみ、ある程度対策に活かすことができます。

このレベルの情報が一般に入手しやすい形で公開されているのはベルギーの1つの特長だと思います。

【世界】オーストリアでは「○年に1回の大雨」に関する情報がウェブで簡単に入手できます

こんにちは。渡邉です。

今日から何回か、ヨーロッパ各国のハザードマップや気象データを網羅した地図を見ていきたいと思います。

ちなみに、ただの地図ではなく、ウェブ上のシステムで情報を引き出していくというインタラクションができるものを紹介していきます(各国のインタラクティブなマップのリスト自体はこちらの報告書(p.31)にあります)。なお、「これは便利かもしれない」というのが私の説明のポイントです。


第1弾となる今日はオーストリアです。
Austria: Hochwasser Risikozonierung Austria HORA (http://www.wassernet.at/)

オーストリアの上記のマップからは、「○年に1回の雨」という情報を簡単に見ることができます。

















オーストラリア(豪州)の場合は緯度経度を入力して○年に1度の雨を知るというシステムでしたが(詳しくはこちらの回のブログです)、こちらオーストリア(墺)の場合は赤い点々(グリッド)ごとにデータがまとまっています。

赤の点を選択してPDFを見ていくと次のような情報が入手できます(ある地点の例(PDF)はこちらです)。表の縦軸は時間、横軸は○年に1度の「○」にあたる年、表中の数字は雨量で単位はミリです。計算手法によって導き出される数値が異なるので各条件で3パターンずつ挙げられています。
















データがこのような形で簡単に手に入ると、たとえオーストリアに行ったことがなくても現地の「大雨」はどの程度のレベルを指すのかなどが定量的に分かるので便利です。


【コラム】災害情報の伝達はいつも注目を集めますが・・・(後編)

こんにちは。渡邉です。

前回(こちらです)は災害情報の「伝達」に注目が集まることを札幌市の事例をあげて紹介しました。

一方で、世界気象機関(WMO)が発行した報告書"Flood Forecasting and Early Warning"では、災害警戒情報のコミュニケーションを考える際のモデルとして以下の図と説明をあげています。



















この報告書では災害情報がうまく使われるようになるためには人の行動に着目する必要があることを指摘しています。そのうえで、人々の行動変容をもたらす説得力のあるコミュニケーションには次の3つの段階が必要であると述べます。キーワードの後の説明は例として挙げられているものの訳です。
1.気付き(Awareness):自分たちの置かれている状況に関するリスクに気づいていること  2.理解(Understanding):家族や地域に対して進行する大雨などがどのような影響を及ぼし得るか分かること  3.承諾(Acceptance):警戒情報に従わなければ怪我やいのちの危険があるという見解を受け入れること 情報伝達重視のパターンと上記を比較して1つ事実として言えることは、情報が伝達されればすべて解決するという枠組みではないということです。また、上記の1・2・3どれもが情報を受け取った個々人の対応力を問題としています。

「情報伝達がうまく行けば自動的に人は避難行動をとるはず」という見方を批判的に検証しながら対策を練っていかない限り、災害情報の有効利用に関する議論は表面的なもので終わる可能性があります。

「人の行動変容」についてより積極的に着目していくことが必要ではないでしょうか。

【コラム】災害情報の伝達はいつも注目を集めますが・・・(前編)

こんにちは。渡邉です。

毎日新聞の記事によれば、去年9月の災害を受けて札幌市が避難勧告等の情報伝達のあり方を見直すそうです。いずれリンクが切れると思いますが、該当記事は2015年3月23日配信の「避難勧告:昨秋集中豪雨被害の札幌 情報伝達方法を見直し」というものです。

その記事を要約すると次のような中身です。
・昨年9月に特別警報が出された集中豪雨の際、札幌市から約78万人に避難勧告が出され、緊急速報メールが町内会単位で20回以上配信されたが実際の避難者は約500人だった。  ・災害後のアンケートで町内会名が分からない住民がおよそ40%近くいるなど、町内会を対象とした情報伝達に課題があった。  ・このため、町内会単位ではなく町名単位で情報提供を行っていくほか、広報車や防災ラジオ、警戒が必要な施設への一斉ファックスなどで情報を伝えていくことが検討されている。 全体としてこの記事は「情報伝達経路さえうまく整備されれば避難行動がもっと取られるようになる」という直線的な関係が基本的な前提になっています。

この前提に対する比較として面白いのは、世界気象機関(WMO)が2015年3月に発行した"Flood Forecasting and Early Warning"という報告書です。この報告書には、洪水予報の技術的な点が網羅されているほか、警報などの早期の警戒情報が一般市民によって使われるためのポイントも含まれています。
























結論を先に言えば、この報告書では毎日新聞の記事の論調のようにすべての問題を「情報の伝達」に帰している訳ではありません。詳しくは次回述べたいと思います。

(続く)

メモ:
WMOの報告書の表紙写真はオランダにあるノアの箱舟のレプリカです。キリンは船の上から大洪水を見ているはずです。

【オーストラリア】冠水した道路の危険性を伝えるドライバーに伝える際の工夫点

こんにちは。渡邉です。

道路が冠水しているところに車が進んでいき、犠牲者が出るということはオーストラリアでもしばしば起こります。
クイーンズランド州政府は"If it's flooded, forget it"というフレーズを用いて道路冠水の危険性を呼びかけています(こちらのページです)。
以下はそのキャンペーンの一環で州政府広告として放送されたものの動画です。「夏に買ったばかりの2.5トンの新車は何でもできると思っていたが・・・」という内容です。起承転結がはっきりしているので、英語が聞き取りづらくても見ていると流れが分かります。



この人の話が本当にあった話かどうかは別として、全体のトーンとしては押しつけがましい説教のようなスタイルを巧みに避けながら道路冠水に向かっていくことの危険性を伝えようとしている好例だと思います。



【コラム】「バックビルディング」の解説が気象庁の予報用語集に復活する日は近いか?

こんにちは。渡邉です。
豪雨をもたらした大雨をニュースなどが報道・解説するときに「バックビルディング」という言葉を聞いたことはありますか?

以前このブログで以下のように取り上げたことがありました(こちらの回です)。

・・・2014年のユーキャン新語・流行語大賞の候補語に「バックビルンディング」という気象関係の用語が含まれていました。流行語大賞の候補語をまとめたサイト*1を見ると、2014年8月の広島豪雨発生メカニズムの解説から広まっていった言葉であるようです。  マスコミが取り上げた「バックビルディング」の説明(「積乱雲が建ち並ぶビルのように見えることから、バックビルディング現象と呼ばれる」といったようなもの)が、気象研究者から見たらトンデモだった*2というのもコミュニケーションを考える上では興味深いテーマですが・・・
実際のバックビルディングを見ると「積乱雲が立ち並ぶビルのように」見えますか?右側のイラストを見るとそのように見えなくもないですね。



















さて、このマスコミの誤解が生まれた遠因の1つを昨日たまたま見つけました。気象庁の予報用語が2007年に見直された際、それまでは用語集に含まれていた「バックビルディング」が削除されていたのです。

予報用語見直しのプレスリリースに「天気予報や解説では用いないことから削除した用語」としてつけられたPDF(こちらです)を引用すると次のとおりです。
















削除された「バックビルディング」の定義を見ると、「積乱雲が進行していくその後ろ側で、繰り返し新しい積乱雲が発生する状態。集中豪雨は、このように繰り返し積乱雲が発生することで生じることがある」とあります。これを読むと「バックビルディング」は「積乱雲が立ち並ぶビル」といった見た目ではなく、雨雲の発生のメカニズムに注目した用語であることが分かります。

「バックビルディング」は2014年3月現在の予報用語集(こちらです)にも含まれていません。

流行語大賞の候補用語になるなど昨今の豪雨災害を受けて人目に触れる言葉になってきていることや、大雨の危険性をリアルタイムで伝える際にも意味のある言葉であるので、できるだけ早い段階で再度予報用語集に復活されていくことが望まれます。


(引用)
*1:流行語大賞候補語をまとめたサイト
http://matome.naver.jp/odai/2139591219…

【天気のトリビア】国が違えば気象用語で使われる時間の説明の仕方が変わる例

こんにちは。渡邉です。
2015年3月20日金曜日の午前中はヨーロッパは皆既日食でした。ちょうどその時間には日食のことをすっかり忘れてしまっていましたが、家の中が夜のはじめごろのように一時的に真っ暗になっていたのは今振り返ると日食のせいだったのだと思います。
さて、今日はコラム的に気象用語で使われる時間の概念について書いてみたいと思います。
冒頭の日食の話題の中で使った「夜のはじめごろ」というのは何時から何時頃だと思いますか?天気予報で「夜のはじめごろ」というキーワードが出た時はその言葉が指す時間が決まっています。
























「夜の初めごろ」は18時頃から21時頃のことを指します。ちなみに、18時~21時という時間帯は2007年に気象用語が広範囲で見直されるまでは「宵のうち」と言われてました(詳しくはこちらです)。
ちなみに、気象用語(Weather Words)として使われる時間の区切り方は地理的又は文化的な要素などが絡んでくるので各国を比較してみると面白いです。
例としてオーストラリアの場合を取り上げると以下のとおりで、日本とは全く異なる時間の区切り方がされています。
以下を見ると、日本でいう「夜の始めごろ」の18時から21時はオーストラリアでは"late afternoon"(~19時)から"evening"(19時以降)にかけてとなります。






















気象自体は自然現象ですが、天気予報や気象情報となるとそれが使われる社会の通念であったり文化が色濃く反映される場合があります。気象用語としての「時間の説明の仕方」という面を見ただけでもこの点を垣間見ることができます。

【日本】「逃げ時マップ」を補完する「気象情報利用力」

こんにちは。渡邉です。

2000年東海豪雨から15年近く経ち、その間に旧西枇杷島町は清須市として新市に移行しました。

清須市の現在のホームページを見ると、「逃げ時マップ」という形で個々人の住居形態に応じて避難のタイミングや避難行動のあり方などがまとめられています(該当ページはこちらです)。

以下は庄内川が決壊した場合を想定しての「逃げ時」を示したものです(出典はこちらです)。逃げ時マップ上の掲載事項を順を追って引用していきます。

1.庄内川が決壊するとこの程度浸水すると考えられているので・・・

























2.私の住まいを考慮すると・・・













3.いつの段階でどこに避難行動をとるのがいいのかが分かります











逃げ時マップは普通の洪水ハザードマップに時間的な要素(浸水が起こる前と起こった後)と空間的な要素(住宅の位置する高さと浸水深との関係)が加えられ、より個々人の生活実態に近い部分に洪水の予想を落とし込んで判断をしてもらおうという試みです。この視点は2000年東海豪雨の時点ではまったくなかったもので、ソフト面の防災対策という面で1つの重要な進歩であると言えると思います。

しかし、実はまだ問題が残っています。その問題は「逃げ時マップ」の中の次の一文に隠れています。









引用した最後の部分には、「気象情報・水位情報・避難情報や周辺状況などに注意をはらって、ご自身の判断で行動してください」とあります。

入手可能な気象情報や水位情報、あるいはメディアや行政から伝えられる情報などから水害の危険性を見極めて、行動指針にまとめられた行動を開始することが期待されていますが、この「見極める」という部分がおそらく一番難しいのではないでしょうか。

行動指針はできたものの、その指針に基づいて判断するのは基本的には個人であるため、やはりここでも気象情報等をうまく使いこなすことができるかという「気象情報利用力」が本質的な課題になっていると考えられます。

【日本】「顔見知りの町内会の役員さんに言われたから避難しました」が示唆する様々な問題点

こんにちは。渡邉です。

2000年東海豪雨の事例をここ何回かお伝えしていますが、今回は住民の視点をご紹介します。

本題に進む前に1つご紹介ですが、東海豪雨時のアメダス名古屋の雨量と気象台からの各種情報を一つにまとめたグラフが次のものです。




















これを見ると記録的短時間大雨情報が愛知県下に何度も発表されており、異常な事態が進行してたことが分かります。ちなみにこの日(2000年9月11日)の雨は観測開始以来の日最大1時間雨量や月最大24時間降水量を簡単に上回っています。
















こうした中で新川・庄内川の水位が上がり、庄内川がいよいよ危ないとなった9月11日23時55分に西枇杷島町では全町を対象とした避難勧告が発表され、町から12地区の地区長を通じて57の町内会に連絡が行きました(避難勧告を発表するまでのいきさつはこちらです)。

私の実家にも避難勧告の連絡が入り家族は近くの小学校に避難しました。その時はどちらかというと町内会の役員さんの顔を立てて避難したというのが実情に近いようです。「庄内川が危ない」ということは聞いたそうですが、「まあ避難所で一泊してくるか」ぐらいの心づもりだったそうです。皮肉にも、その数時間後には新川決壊により水没した西枇杷島町を避難所の窓から見ることになりました。

さて、このエピソードは3つの意味で示唆的です。

1つは新川の危険性が住民側でも見過ごされていた点です。庄内川が危ないという情報が町役場に入り、それを受けて避難勧告が出されたため、「新川も危ない」ということが主題に上りませんでした。このため新川決壊はまさに背後から刺されたものとして行政や町民に受け止められました。

また、2つ目として、桁違いに記録的な大雨となっていても人は案外何もしていないことが指摘できます。私の実家が特に鈍いという訳ではなく、これは大雨による災害で共通する課題だと思います。雨量や水位のデータ、あるいは気象台から発表される情報の数々を災害が発生した後から振り返ってみれば、災害発生に直結する危険性を数多く指摘することができます(例えば新川が計画高水位を超えていた点や雨の降り方が観測開始以降もっとも強いものであった点など)。ただ、そうした危険性を進行する事態の中から読み解いて備えることは容易ではないことが言えます。

3つ目として、私の実家のようなケースの場合では避難には避難勧告が必要だっ…

【日本】災害情報は手元にあるだけでは使えないという例

こんにちは。渡邉です。
今日も2000年東海豪雨時の続きです。

旧西枇杷島町の西を流れる新川が計画高水位を超えたのは2000年9月11日19時40分であったのですが、町が避難勧告を発表した直接の契機は町の東側を流れる庄内川が危険な状態になる見込みであると河川管理者から伝えられた後の同日23時50分のことでした。

新川の緊迫した状況に対して積極的な避難が呼びかけられなかった理由には、目が庄内川に向いていたというものに加えて、そもそも河川水位を避難の判断に活かすことができなかったという点も指摘されています。

この点について詳しく調査した結果が吉井博明氏の論文(出典はこちらです)のP128にまとめられているので以下引用します。以下の引用で町長とあるのは当時の西枇杷島町長のことです。
町長は避難勧告をいつ出すべきか迷っていた。庄内川と新川の水位については、テレフォンサービスにより、ある程度入手できたが、水位が何メートルになったところで避難を呼びかけるべきか、天端まであとどのくらいあるのか、いつ越流しそうなのか、といったことがわからず、判断に迷っていたのである。  そこに一本の電話がかかってきた。庄内川工事事務所所長からの電話であった。庄内川がはん濫する危険性があり、避難勧告を出した方が良いのではないかという内容だった。この電話でのやりとりにより、町長は避難勧告を出す踏ん切りがついたという。午後11時55分、町長は全世帯を対象に避難勧告を出した。「庄内川が氾濫する恐れがあるので、避難してください」という内容であった。 「災害情報は認知されただけでは活用されない」というのは災害情報の研究者の指摘です*1。水位に関する情報から町にとっての危険性を読み解くという点は旧西枇杷島町では残念ながらうまく行うことができませんでした。

ただ、当時は洪水ハザードマップが整備される前の段階で、新川・庄内川ともに浸水想定区域図は未整備でした(東海豪雨を受けて水防法が改正され、浸水想定区域図が整備されるようになっていきました)。また、新川は当時、洪水予報の対象河川ではありませんでした(出典はこちら)。

社会制度的にも、町の行政能力的にも、河川管理や気象の面で素人の町長が丸腰で避難を判断しなければならないという状況でした。庄内川工事事務所長という専門家集団のトップからのアドバイスを受けて避難の判断…

【日本】大きな河川の大きな危機と小さな河川の大きな危機

こんにちは。渡邉です。

今日は前回の続きで、2000年9月の東海豪雨の際に新川が計画高水位を超えていたのになぜ旧西枇杷島町ではあまり注目されなかったのかをテーマにします。

計画高水位は堤防の設計限度のようなもので、実際の堤防の高さまではまだ余裕が少しある場合もありますが、きわめて危険な水位です。

新川はかなり危険ではあったのですが、それ以上に行政や関連機関が固唾をのんで注目したのは庄内川の水位でした。

旧西枇杷島町は新川と庄内川に囲まれた地域に位置しています(以下の図でいえば水色の部分に相当。一部名古屋市西区を含む)。新川と庄内川では河川の大きさが違っており、新川が切れても町が水没する程度ですが、庄内川が決壊すると「町が川になる」と言われています。


















当時の庄内川の水位を見ると次のとおりです。庄内川の水位が11日夕方から一気に上がり続けていることが分かります。

旧西枇杷島町の避難勧告は庄内川の管理者との電話協議で背中を押された町長が23時55分に全町向けて発表しました。時を同じくして各市町村が矢継ぎ早に避難勧告を発表したことが垣間見れます。

















結果的には9月12日の午前3時半ごろに新川が決壊しています。水位のデータを見れば新川が十分危険だったことは明白なのですが、当時としては「後ろ(新川)から刺された」という表現がもっとも心情にあっていたと思います。

ちなみに新川は江戸時代に治水目的で掘られた人工河川です。旧西枇杷島町から見て上流部分に洗堰と呼ばれる堰があり、通常は干上がっていますが、庄内川増水時には増水した水が新川に流れ込み、より甚大な被害をもたらす庄内川の決壊を防ぐという仕組みがありました。

再度、新川の水位を示したグラフを掲載しましたが、この中で「洗堰流入」とあるのは庄内川の水が洗堰を経て新川に流れ込んだ時間帯を示すものです。



















この洗堰があったから新川が決壊し旧西枇杷島町が沈んだのか、あるいはどこかでもっと甚大な被害が起こることを未然に防いだのかは分かりません。ただ、旧西枇杷島町民の中には「新川はその役目を果たした」と言う人が少なからずいたのも事実です。

次回は当時の住民の動きをまとめます。

(「【日本】災害情報は手元にあるだけでは使えないという例」に続く)