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1月, 2015の投稿を表示しています

【日本】特別警報の説明時の工夫点(佐賀地方気象台資料より)

こんにちは。渡邉です。

昨日調べ物をしていたら、たまたま佐賀地方気象台の作成した特別警報に関する資料を見て、それ以来頭からそのキャッチコピーが離れないので紹介したいと思います。

それはこちらです↓。






気象庁のキャラクター・はれるんの表情とキャッチコピーとのギャップに惹きつけられもしますが、特別警報を「最後のメッセージ」と位置づけて紹介している点がある意味分かりやすいと感じています。

佐賀地方気象台が作った特別警報に関する資料(以下参照)を見ていくと、「最後」に至る前までに避難が呼びかけられています。
























注目したいのは、「特別警報が発表された時は、すでに避難のタイミングを逃した可能性があります」とはっきり述べていることです。

一般的に、特別警報は、「発表された時にはただちに命を守る行動をとってください」という呼びかけが行われます(例えば以下の気象庁のページ等)。



















佐賀地方気象台の資料も気象庁のホームページも、特別警報が発表されたら命を守る行動をとれという結論は同じです。ただし、「あなたはもう逃げ遅れているかもしれない」ということを前提とした方が、「命を守る行動=避難所へ行く」という図式を崩すことができ、無理な避難に伴う災害を未然に防ぐことができるのではないでしょうか。

(参考)
*1:
http://www.jma-net.go.jp/saga/bosai/jyouhou/tokubetsu-keiho.pdf

(コラム)これまでの記事トップ9(もうすぐ100回目の記事なので)

こんにちは。渡邉です。

このブログを書き始めたのが11月の下旬のことで、以来更新を続けてきました。間もなく100回なので、これまでの記事からページビューが多かったものの上位9つを紹介します。

まずは第4位から第9位までです。

▼第4位
【オーストラリア】緯度経度から「○年に1度の雨」の雨量が分かります
オーストラリアの気象機関のホームページには便利な機能がついていて、緯度経度を入れるとグラフや表などで〇年に1度の雨の量が分かるということをまとめました。
http://www.wpcd.jp/2014/12/1.html

▼第5位
【オーストラリア】各家屋向けに発表されるブリスベン市の洪水予報
ブリスベンでは水害リスクに関する詳細な分析をインターネット上で確認できることを紹介しました。
http://www.wpcd.jp/2015/01/blog-post_6.html

▼第6位
【災害と気象情報 vol.2】「情報の伝達」という課題/「情報の伝達」にまつわる課題
「気象情報は伝えさえば万事OK」という考え方に対して疑問を投げかけた記事です。
http://www.wpcd.jp/2014/11/blog-post_14.html

▼第7位
【オランダ】子どもも大人も体験を通して河川管理を身近に
個人のフェイスブックページで紹介したこともあって多くの方に見て頂いた記事です。
http://www.wpcd.jp/2014/11/blog-post.html

▼第8位
【無料ツールで災害対策 vol.11】今後の雨雲の動きをインターネットで見る(高解像度降水ナウキャスト その1)
気象庁の高解像度降水ナウキャストを見るときは拡大しすぎると見づらいですという内容でした。
http://www.wpcd.jp/2014/12/vol111.html

▼第9位
【無料ツールで災害対策 vol.3】「雨量に対する地域の弱さ」確認シート
雨量を判断基準にして大雨の影響を整理するのに便利なシート案を作って載せた記事です。
http://www.wpcd.jp/2014/12/vol3.html


見て頂くと分かるのですが、テーマ的には結構バラバラです。続いて第3位はこちらの記事です。

------------------------------------------------------…

【オーストラリア】洪水対策アイデアの洪水プロジェクト(Flood of Ideas)の意義

こんにちは。渡邉です。

今日は、水害被害を受けた地域がどのように住民を巻き込んで今後の対策を練っていくかという点に関する事例のご紹介です。

参考として取り上げるのは、このブログでも何度か紹介しているオーストラリアのブリスベンの事例です(ブリスベン関係の過去の記事はこちらからご覧ください)。

2011年の洪水により、ブリスベンの中心市街地や住宅街は浸水被害を受けました。

「どうすれば水害と共存できる街を作れるか」がブリスベン市民にとってのテーマとなったわけですが、突拍子もないものから専門的なものまでどのようなアイデアでもいいので集めようというプロジェクトが実施されました。

プロジェクトの名称は、Flood of Ideasです。訳すとすれば「アイデアの洪水」といったところですが、もちろん洪水(Flood)はブリスベン川の2011年の洪水にかけています。

プロジェクトの実施主体はクイーンズランド州の州立図書館とHealthy Waterways(HPはこちらです)という水環境に取り組むNPO団体です。

Flood of Ideasのサイトでは市民から寄せられた数多くのアイデアを現在も見ることができます。


















アイデアの提案自体は2012年あたりを最後に自然に終了していますが、ウェブサイトを見ると専門家から市民のアイデアまで幅広い声や知識が集まったことが分かります。

こうしたプロジェクトに対しては、実際の政策形成過程や洪水対策に活かされる(活かされた)のかという厳しい見方もできます。

一方で、往々にして<専門家>が主体となり進めていく洪水対策への対抗軸(あるいは補完軸)として、市民の中にある知識をウェブサイト上で共有して川との折り合い方を考える場を作り、被災後の洪水対策立案の中で一定の存在感を示していったことは高く評価されています*1。

(関連情報)
*1:
http://www.lat27.com.au/assets/Newsletters/2013-03-May-AILA-Awards.pdf

【日本・オランダ・オーストラリア・イギリス】気象機関のtwitterアカウントを見比べてみると?

こんにちは。渡邉です。

気象庁がtwitterを始めたというのが話題になっているので、少し便乗してみたいと思います。

実物はこれです↓



















各国の気象機関のtwitterアカウントを見比べてみると単純に面白いです。

▼オランダ
こちらは警報を発表していますが、割と事務的な印象で淡々としています。





















▼オーストラリア
オーストラリアもごく最近、twitterでの情報発信を始めました(詳しくはオーストラリア気象庁のこのページです(こちら))。州単位の発表で、先行して3州が実験的に運用を開始しています。内容は現在のところサイクロンに関する情報をアップデートしていくものに限っていますが、今年前半には発信する情報内容を広くしていく予定とのことです。













▼イギリス
注意報や警報を伝えるだけというわけではなく、フォロワーが興味を持ちそうな話題を織り交ぜながら情報発信をしています。人の手を介さずに警報などを発信し続ける、Met Office warnings@metofficeUKというアカウントや、嵐に関することに特化したMet Office Storms@metofficestormsというアカウントもあります。













ちなみに最近ではこのような記事が投稿されています。





























































写真や動画を使って、分かりやすくコミュニケーションをとっていこうという意思が感じられます。イギリスは科学コミュニケーションの分野で力を入れ始めた国ということがしばしば言われますが、これらのツイートの背景にはそうした思想的なバックグラウンドがあるのかもしれません。

ちなみに日本の気象庁のアカウントではシステム障害に関して報道発表があった時にその情報を流すそうです。良い悪いではなく、とても日本らしい使い方だと納得しました。

【オーストラリア】小規模な自治体とはいえ水害対策は侮れない(その1:洪水マップ)

こんにちは。渡邉です。

今日はオーストラリアの話題です。

昨年5月に参加したThe Australian & New Zealand Disaster and Emergency Management Conferenceという学会(HPはこちらです)で仕入れた資料をオランダに持ってきていました。

その資料とは、クイーンズランド州のNorth Burnettという自治体が作った防災マニュアルです。

North Burnettは人口1万人強で、面積は20,000平方キロです(場所はこちらです)。東京都の面積が2,103平方キロ*1なので、およそ9~10倍の広さに1万人しか住んでいません。

この町は次のような防災冊子を作っています。



















なぜこの冊子をわざわざ手元に置いているかというと、洪水マップの見せ方が日本とは異なったからです。

写真の関係で少し見づらいかもしれませんが、North Burnettの洪水マップは「川が〇メートルまで増水したらどこが浸水するか」という視点でまとめられており、増水した川の水位がプロットされています。シナリオとしては水位が14メートル~21メートルまで、1メートル刻みになっています(下の拡大図参照)。




































ちなみに日本のハザードマップは浸水の深さを色別で示しているタイプのもの(例えば以下の例)が主なのでオーストラリアとは見せ方が異なります。


















オーストラリアの洪水予報は「〇月〇日〇時ごろ、ピークが〇メートルになる見込み」という発表形態です(この回のブログ記事を参照ください)。

このため、North Burnettの洪水マップを使えば、「ピークは〇メートル」という洪水予想からどのエリアに影響が出るのかということが簡単に分かります。この洪水マップには個人の住宅まで特定できる情報がついているので、自宅や自宅周辺、避難経路が影響を受ける可能性があるかどうかも知ることができて便利です。

ところで、オーストラリアではNorth Burnettのような小さな自治体(面積的には巨大ですが)であっても、日本と比べてかなり画期的な取り組みをしています。これはまた次回以降、ご紹介します。

*1:
http://www.gsi.go.jp/KOKUJYOHO/MENCHO/201310/ichiran.pdf

(コラム)気象を知らずして自治体の防災担当だった私

こんにちは。渡邉です。
今日はコラムというかエッセー風に気象災害の利用に関してまとめてみたいと思います。
プロフィール(こちらです)でも書いていますが、私はもともとは教育学専攻で気象学とは縁がありませんでした。大学の最終学年の時にたまたま自分の育った町(愛知県の旧西枇杷島町。現在は合併して清須市)が2000年の東海豪雨によって水害被害を受け、卒業と同時にその町の自治体職員として消防や防災行政を担うこととなりました。


















当時の私は気象の知識ゼロでした。町役場全体の職員は130名程度。気象レーダーを見るのが好きな総務部長はいましたが、気象について基礎的な教育を受けた人はいませんでした。
今この当時を振り返ってみると、かなりいろいろなことが分かっていなかったと思います。
例えば、 レーダーで雨雲を見てもそこから何かを読み取れなかった。同僚が「この雨雲がやってくるんじゃないか」と言っていたのを「そんなものなのか」と半信半疑で聞いていた雨雲は西から東へ動いていくもの、という認識しかなかったので、台風の時に南から北に向かって進む雨雲を見て首をかしげた気象台からの台風情報の中に「多いところで400ミリ」という予想雨量を見て、この町で実際に起こるのではないかと必要以上に危惧した台風の大雨がほぼ終わりかけの段階で避難勧告準備情報を発表した(その1時間後には晴れていた)役場に雨量計が設置されて10分雨量が分かるようになってもその情報から何らかの危険性を掴むというのが難しかった「被害があった時の時間と場所を地図にプロットしておけば次回の対応に活かせる」という当時の上司の指示の重要性が分かっていなかった といった具合です。
自治体の防災担当の中には気象予報士の方などもいて、ある程度の知識を持って業務に当たられている方もいますが、中小の自治体や大きな自治体であっても担当者が気象情報の利用に通じているかというとなかなかそうではありません。大雨の警戒を呼びかける情報が気象庁から出されていても自治体の職員が重要性を認識できずに帰宅して対応が遅れた、という事例はまだまだ起こっています(例えば2013年の東京都大島町の気象災害時の職員の対応など*2)。
かつて町の防災を担当していた私自身の反省を含めてですが、こうした点は日本の防災行政の構造的な問題点です。
防災担当を離れてすでに10年以上が経ち、当時…

【オランダ】運河でスケートができる日はいつ来るか?

こんにちは。渡邉です。

今日は気象の話でも水害対策の話でもなく、ローカルな知識(Local Knowledge)に関する話です。

さて、オランダではここ最近、寒い日が続いていました。

運河や湖がそこかしこにあるのがオランダの風景で、先週金曜日にデンハーグという政治の中心地に行った時には池に氷が張っていました。















































オランダ人は運河などが凍るとその上でスケートをしはじめるそうです。

どのタイミングでスケートができるぐらいの氷の厚さになるか?ということですが、日本人はその点の知識があまりないので判断が難しいです。

オランダに滞在する日本人はではどう判断しているかというと、「オランダ人が滑っているのを確認できたらOK」と判断を現地の人に任せます。

ではオランダ人はどう見極めているのか?ですが、ある人の話したところによると基準が3つあるそうです。

氷が張るような日が10日続かなければ滑ってはいけない滑ってよいかをチェックする人がいるのでその判断を待つ他のオランダ人が滑っていないところは滑らない 特に基準の1を耳にしたときは、まさにこれが地元民が持つローカルな知識だと受け取りました。2はどういう人か気になります。3は意外と慎重なのだなという印象です。

さて、氷点下の日が10日続いても日本人にとっては「ただ寒い日が続くね」で終わるのですが、地元の人たちにとっては「運河でのスケートの解禁日が近い」となるわけです。

これは、全く同じ気象現象を経験していても、ローカルな知識の有無で受け取る意味合いが異なってくるという例です。

運河の氷に限らず、集中豪雨と水害・土砂災害に対しても同じようなことが言えるのですが、これはこのブログの基本テーマの1つなので今後も様々な記事で紹介していきたいと思います。

【レーダーと雨量と地域の弱さ Vol.3】2014年8月の広島豪雨の場合(その3)

こんにちは。渡邉です。

今日は前回の特集記事(こちらです)の続きで、2014年の広島豪雨にスポットを当ててみたいと思います。観測史上の値と見比べて今現在降っている大雨の危険性を類推するという方法で振り返ってみます(この回の記事で詳しく紹介しました)。

広島豪雨による土砂災害は2014年8月20日の午前3時~3時30分ごろに発生したとみられています。今日の分析で使うアメダスの三入という雨量計のデータではないですが、当時の様子を時系列で掴むのに適しているので国交省が作成した資料を下に付けました(この回で引用した図です)。

















広島豪雨で最多の雨量を観測したアメダス三入の10分間雨量をグラフに落とすと以下のとおりです(10分間雨量などの調べ方はこちらです)。




















上のグラフに関する説明に先立って、アメダス三入の観測史上トップ10のデータを見てください。赤い四角で囲っているものは広島豪雨時のデータであり、日降水量と1時間雨量で観測史上1位の値を塗り替えました(極値を更新しました)。












先ほど引用したグラフと上の表を見比べてみると、日降水量の当時1位を実際に超えたタイミングは3時40分で、土砂災害が相次いで起こったとされる時間の後です。一方で、日最大1時間雨量の当時の第1位(62ミリ)を超え始めたのは午前2時半からで、土砂災害の発生の前になります。当時の雨量を抜粋した表の赤色部分が62ミリ以上となっている部分です。

























ところで2時半以降の前1時間雨量は、10分ごとにほぼ極値を塗り替えていくという状態でした。最終的には午前4時までの1時間に101ミリという記録が新たな観測史上1位の値となりました。

1時間雨量で見ると、異常な降り方が継続していたということが分かります。ちなみにリアルタイムで大雨を監視する場合、1時間雨量は手計算やパソコンで計算をしなくても、国土交通省防災情報提供センターのサイトですぐに分かります(こちらのブログです)。

1時間雨量、日降水量の観測史上の値も参考になりますが、極値更新のタイミングが災害発生の前であったり後であったり様々なケースがあります。観測史上○位の降雨については参考にしつつも、「10分間で10ミリ前後以上の降雨が続くと危ない。降り方によっては極値を超えてくる可能性がある」ことを基本姿勢として捉えた方が柔軟に大雨による危険に備えることができると考えられます…

【オランダ】オランダ気象庁のトップページには非常モードがあります

渡邉です。こんにちは。

昨日はオランダの注意報・警報についてまとめました(こちらのブログです)。

今晩から明日にかけて各地でみぞれや雪が見込まれ、上から2番目の警戒情報が発表されていますが、それに合わせてオランダ気象庁のトップページ(こちらです)のデザインが非常モードに全面的に変わりました。


















トップページを見ると、エリアごとの警戒情報の発表状況(この場合は全国的に上から2番目のオレンジ)やレーダー、全国の概況などがまとめられています。地域別の情報へのリンクなども付けられています。

ちなみに普段はどういったページデザインかというと、以下のような構成です。

















見比べてみると、非常モードと通常モードが全く異なることが分かります。私の知る限り、日本やオーストラリアの気象庁のページでは気象現象に応じてここまで大胆に変わることはありません。

オランダは、国土は九州とほぼ同じ大きさ、人口は約1,700万人という小国です。小さいが故に小回りが利くので、災害が起こり得る状況が予測されるときは、トップページごと入れ替えて警戒を呼びかけるという対応ができるのではないかと感じました。

【オランダ】現在から48時間先までをターゲットにしたオランダの注意報・警報

こんにちは。渡邉です。

このブログでは以前、イギリスの洪水予報の見せ方をご紹介しました(こちらです)。3日先まで、1日ごとにどこで洪水の危険性があるのか分かるような仕組みでした。

今日はオランダの注意報・警報の話題です。見せ方とすると、イギリスの洪水予報のような方法をとっています。

本題に触れる前にまず、オランダの気象庁(KNMI)が発表する気象に関する注意報・警報について簡単に触れてみたいと思います。オランダの場合、注意・警戒情報は「発表なし」を含めて4段階に分かれています。4段階とは以下のとおりです。











すぐ下に地図を引用しますが、カラー表示の場合、緑色は発表なし、黄色はシビアな現象に対する注意を意味しており、天候の影響を受けやすい活動に対して注意が呼びかけれます。一方、オレンジ色は極端な気象現象に対しての警戒が呼びかけられるもので、日本でいう注意報に相当すると考えられます。赤は気象警報に相当するものといった形です。

こうした情報は、この先3日間の曜日ごとに発表されます。














上の図を見ると、この先土曜日が黄色で、全国的にシビアな現象が予測されていることが分かります。「?」マークをクリックすると以下のようにマークの意味とそれぞれの基準が出てきます。

















雪マークの黄色ということで、今週末の土曜日は1時間に時間0~3センチの雪が見込まれています。ちなみにオレンジ色の基準と赤色の基準が全く同じなので、どちらの情報を発表するかという運用をどう行っているのかが気になるところではあります。

さて、話を元に戻すと、先ほど紹介した3日間の状況の下には以下のような補足情報がついています。ここにはそれぞれの地域で起こり得る可能性があることと(下の例ではスリップに注意とあります)、影響を受ける時間帯が文字情報とグラフ情報で表示されます。
























オランダの気象庁のHP(こちらです)はオーストラリアの気象庁のページ(BOM)に比べるとかなり素っ気ない作りである印象を受けますが、いつ・どこで・何が起こり得るかという基本的な情報がコンパクトにまとめられていて、これはこれで使いやすいのではないでしょうか。

(出典)
*1:
http://www.knmi.nl/waarschuwingen_en_verwachtingen/regio.php?pr=DR

【レーダーと雨量と地域の弱さ Vol.2】2014年8月の広島豪雨の場合(その2)

こんにちは。渡邉です。

今日は広島豪雨の例の続きです(前回はこちら)。

前の記事では主に雨雲の動きと雨量という面から危険性を掴もうという趣旨だったのですが、この特集記事でも繰り返してお伝えしているとおり、降ってきた雨に対して地域がどう弱いのかという面を見る必要があります。

今日はその一つ、50年に1度の降雨という基準を利用して当時を振り返ってみたいと思います。

広島市の50年に一度の降水量を調べると、48時間で434ミリ、3時間で155ミリです*1(調べ方はこちらです)。広島豪雨の場合は短時間の大雨でしたので、3時間の数字に着目します。上記の数字は市町村別の平均値なので、広島市内の各地の計算結果を詳しく知るために図を見てみましょう*2。

























被害の大きかった広島市の東部では3時間雨量が101~150ミリというクラスが50年に一度の規模の大雨であることが分かります。

ここでもう一度、広島豪雨の際の雨量を引用してみます。以下の図は3時間の降水量ではないので、上記の図と単純に比較することができません。しかし、実際には短時間のうちに大部分が降ったので、どのエリアが50年に一度以上の降雨となっていたかをある程度把握することができます。























気象庁の資料*3によれば、アメダス三入では3時間に、 217.5 ミリの降雨となりました。

























上記のような表を見ると、3時間で155ミリという50年に一度の雨をいつ超えたかという点に注目が行ってしまうかもしれませんが、それよりも重要なのは、当時の段階でレーダーや雨量計を見て数十年に1回の大雨になるかもしれないと気づくことができたか、という点です。

10分間雨量で15ミリ前後(1時間に換算すると15×6で90ミリ)の大雨が1時間を超えて継続しているのであれば、広島市の50年に一度の雨量(3時間)である155ミリを簡単に超えて行きます。つまり、災害の恐れの高い雨だということがある程度の段階で分かり得たと言えます。

こうした方法を使いながら、リアルタイムで大雨の影響を見極めていくことが重要ではないでしょうか。


(「2014年8月の広島豪雨の場合(その3)」に続く)

*1:気象庁 雨に関する各市町村の50年に一度の値一覧
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/tokubetsu-keiho/1-50ame.pdf
*2:h…

【オランダ】家だって浮いていれば沈まないじゃないか

こんにちは。渡邉です。

特集記事の続きをと言いたいところですが、今日は少しバテ気味なので軽い話題を。

数日前のブログで、水に浮く実験的な街がオランダで試作されていることをお伝えしました。以下の記事です。

▼【オランダ】街だって浮いていれば沈まないじゃないか
http://wpcdnote.blogspot.nl/2015/01/blog-post_14.html

ところでオランダでは、街だけではなく家も浮きます。



















この写真のように、ボートを家にして運河の上で住んでいる人もオランダにはいます(ちなみに貧しいからボートで生活という訳ではなく、ライフスタイルとしてボート暮らしが選ばれています。自治体への住所登録も普通にできるそうです)。

今日ご紹介したいのはこのような船の家ではなく、通常は普通の家でも洪水時に浮力で浮かび上がっていく家のことです。
























オーストラリアに留学していた当時に知り合った建築家のレポート*1を引用すると、これらの水に浮かぶ家はオランダ中央部のMaasbommelという場所にあり、2007年から46棟が立てられたそうです。

建物はマース川の土手に作られており、増水時には5.5メートル浮かび上がることができます。

浮かび上がっても地面に固定されているので流されていきません。ライフラインは伸びるパイプを通されており影響を受けません。

オランダにはRoom for the Riverというプログラムがあり、増水時に浸水する場所を河川沿いに作っておいて洪水をコントロールする方針がとられています。

これらの浮かぶ家は、増水時に水没する地域に作られています。そうした地域には通常は住居の建築が許可されませんがこの形態の家は認められました。ただし、住宅という形ではなく休日用の別荘という形での許可のみを受けているそうです。

オランダには街も家も浮かせて水害を乗り越えようという発想があるという訳です。一方で、オーストラリアには水に沈むことを前提とした住宅があります。こちらもおいおい記事にしていきたいと思います。


(出典)
*1:Accommodating Water: Winston Churchill Fellowship
http://www.jamesdavidsonarchitect.com.au/131213_Churchill%20Final%20Report%2…

【レーダーと雨量と地域の弱さ Vol.1】2014年8月の広島豪雨の場合(その1)

こんにちは。渡邉です。

気象情報の利用特集ではここまで、レーダーと雨量計の基本的な使い方をまとめてきました。

実際に災害が起こるような大雨がある場合に、これら2つの情報を使うとどう役に立つのかという点について、新シリーズで書いていきたいと思います。

まずは2014年8月の広島豪雨のケースを取り上げたいと思います。広島豪雨による土砂災害は2014年8月20日の未明に発生し、広島市安佐南区と安佐北区で土砂災害が166か所発生し、74名が犠牲となりました(消防庁調べ*1)。

気象庁のアメダスの雨量計で観測された雨量を基に、当時の雨の分布を示したものが以下の図です。























上の図を見ると明らかなように、大雨となったのは広島県内の一部です。県西部の北東方向から南西方向に伸びるエリアが大雨となりました。この図は一連の雨でこのような積算雨量となったといういわば「結果」なのですが、大雨の「過程」は次のようなものでした。1時間ごとの雨雲のレーダー画像をご覧ください。






























上記を見ると、19日22時の時点で大雨となっていますが、23時の段階ではいったん落ち着きました。しかし、20日0時には広島県西部から活発な雨雲が近づいてきて、1時・2時・3時とそのまま同じようなところで見た目上、雨雲が動かなくなり、結果として雨量がまとまった訳です。

アメダス三入の当時の10分間雨量を見てみましょう。赤で囲った部分は10分間雨量が10ミリ程度から20ミリを超えた時間帯です。1時50分から4時までがピークだったことが分かります。

























ちなみに、10分間雨量10ミリクラスが1時間続けば時間雨量60ミリ、15ミリクラスであれば90ミリ、20ミリクラスであれば120ミリといった雨量になります。

アメダス三入の場合、1時50分段階の10分間雨量が14.5ミリだったところ、そして当時の気象レーダーを見ると雨雲が同じところに停滞し続ける形となっていたことから、発達した雨雲がかかっていた地域では災害の発生が非常に懸念される状態に直面しつつあったことが分かります。

雨雲の動きと10分間雨量から見て異常事態が仮に認識されていれば、犠牲者の数が減ったのかどうかは分かりません。ただ、この2つの情報を使いこなすことができるかどうかで、早めの避難(家の中のより安全な場所への避難を含む)が可能になるのではないかと思います。

このように、雨雲のレ…

【世界】世界中の水害情報を取りまとめたウェブサイト

渡邉です。こんにちは。

今日は水害関連のウェブサイトのご紹介です。
ドイツや南アフリカに在住するジャーナリスト・ライターなどの3人は、FloodList(www.floodlist.com)というウェブサイトで情報を発信しています。FloodListは造語ですが、「洪水のリスト」という名が示す通り、世界各地の水害情報が日々発信されています。研究機関や国際機関ではなく、民間のチームが継続的に質の高い情報を発信していることや、水害被害だけではなく治水システムや水害対策の方法もレビューしていることが特徴です。


















記事にもよりますが、水害が発生した時点などでの雨量や被害の様子がまとめられており、ここに掲載された情報を集約していけば「どこの地域が何ミリの雨に対してどう弱いか」という情報を世界各地分、得ることもできます。私自身、彼らの活動に大きな関心を寄せており、将来的に何らかの形でタイアップしていけたらと考えています。

(コラム)国土交通省防災情報提供センターの雨量情報を見る利点 その3(4つの雨量が瞬時に分かる)

こんにちは。渡邉です。

一昨日から3回に分けて国土交通省防災情報提供センターの雨量情報を見る利点をまとめています。今日はその最終回で、「4つの雨量が分かる」という点をまとめていきます。

防災情報提供センターの雨量計データを使うと、「前10分間雨量」、「前1時間雨量」、「前3時間雨量」、「前24時間雨量」の4つを表示できます。












サンプルとして挙げる以下の画像はある時点の4つの雨量ですが、それぞれの違いがイメージしやすいので並べてみます。

▼前10分間雨量
今現在、どこで雨が降っているかが分かります。














▼前1時間雨量
前10分間雨量より雨量を拾っている場所が増えました。前10分間雨量を見た時には雨量計で捕捉していなかった場合でも、過去の1時間に雨があった場所の雨量情報が出てきます。















▼前3時間雨量
この3時間で雨量が多かった場所が分かります。















▼前24時間雨量
過去1日の降水状況を把握できます。















大雨の時の状況で説明した方が分かりやすいのですが、この記事を書いた日の天気が冬型の気圧配置でした。大雨となった時に改めて紹介したいと思いますが、4つの雨量は重要な意味を教えてくれます。

雨量別の意味はこの回のブログ(こちらです)に箇条書きでまとめました。それぞれのポイントを絵にすると次のとおりです。













10分間雨量・1時間雨量は直近の雨量を示すので、短時間強雨の把握などに適しています。一方、3時間雨量は大雨災害の場合、短時間強雨が連続して発生して雨量がまとまっていないかを調べるのに最適です。24時間雨量は長い時間に渡って雨が降ったことによる地域への影響を考慮する際に参考になります。

これらの情報をワンストップで引き出せるため、防災情報提供センターのサイトはその意味で秀逸であると言えます。ただし、降り始めからの雨量を示すシステムがないので、自分でアメダスの雨量計などを見て計算する必要があります。

(コラム)国土交通省防災情報提供センターの雨量情報を見る利点 その2(ワンストップで雨雲と雨量が分かる)

こんにちは。渡邉です。

今日も昨日のブログ(こちらです)に引き続き、国土交通省防災情報提供センターのサイトのメリットをお伝えします。今日のキーワードはタイトルにもあるとおり、「ワンストップ」です。

防災情報提供センターのサイトを見ると、「リアルタイムレーダー」と「リアルタイム雨量(広域版)」という2つのボタンが左上にあることが分かります(赤色で囲んだ部分です)。

















このボタンを切り替えることで、雨雲が実際にどの程度降水をもたらしているかを簡単に調べることができます。上記の図はリアルタイムレーダーですが、同時刻の「リアルタイム雨量(広域版)」を選択して表示させると次のようになります。

















少し把握しづらいものの、レーダーで見て北東から南西方向に伸びる雨雲に対応して地上の雨量計で10分間に0.5-1ミリ程度、多いところで2ミリ程度を観測していることが分かります。

ちなみに、レーダーと雨量計が同じサイト上で確認できるような設計がなされているのは、2つの情報が大雨を観測するために重要であるからです。レーダーだけでは実際の雨量が分からず、雨量計のデータだけでは雨を降らせている雨雲の動きが分かりません。2つの情報を使うことでそれぞれの欠点が補われ、どの雨雲によってどの程度の雨量となっているかがようやく分かるという訳です。

(コラム)国土交通省防災情報提供センターの雨量情報を見る利点 その1(細かく分かる)

こんにちは。渡邉です。

この回の特集記事(こちらです)で気象庁アメダスとアメダス以外の雨量情報サイト(国土交通省防災情報提供センターなど)を紹介しました。

雨量情報を見るのであれば、防災情報提供センターのサイトは3つの意味で充実しています。今日はまずそのうちの1つ目、「とにかく細かくみられる」という点の紹介です。

論より証拠ということで、まずはこちらが関東周辺に設置されたアメダスの雨量計ネットワークです。雨が降っていない時のデータなので、「0」は0ミリのことです。アメダスのネットワークを見ると全体にまんべんなく配置されているとはいえ、所々で雨量を捕捉できない地域があることが分かります。






















では、国土交通省の防災情報提供センターで関東地方を見てみましょう。四角で囲まれているのが雨量計の雨量情報です。

















まさに見たとおりですが、防災情報提供センターのサイトの方が雨量計の量が圧倒的に多いです。これは、気象庁、国土交通省水管理・国土保全局・道路局、自治体の雨量計データが統合されて表示されるシステムのためです。

雨の降り方が局地的である場合はこの規模のネットワークでもうまく雨量を実測できないこともありますが、雨量情報を得るためにまずは見に行くサイトとして防災情報提供センターのウェブサイトは非常に有益ですので是非ご利用ください。

【オランダ】街だって浮いていれば沈まないじゃないか

こんにちは。渡邉です。

今日も特集記事をお休みして、さらりとオランダの水害対策の話題です。

数日前にまとめた記事(こちらです)につけた動画にはサッカーボールが半分になったような建物が写っています。我が家から歩いて5分程度のところにあり、先週末に近くに行ってみました。写真で見るとこれです。



















この建物はFloating Pavilion(浮くパビリオン)と呼ばれているもので、3つの島からできています。高さは約12メートル、広さはテニスコート4つ分で、最大の特徴はどこでも移動させていくことが可能なことです。

このパビリオンは、気候変化などの影響を受けても沈まない都市を作るというパイロットプロジェクトとして作られました。将来的にはこのパビリオンで培われた技術が使われて、下の図のような都市が出現することがあるかもしれません。














浮いていれば沈まないという発想はオランダ国内の住宅でも見られます。こちらについては後日紹介していきます。

【お知らせ】気象防災実践ツール作成の近況報告

渡邉です。こんにちは。

今日はプロジェクトの近況報告の記事です。
以前のブログ(こちらです)でお伝えした住民の気象情報利用力を高める冊子が少しずつ形になってきています。かえる博士と少年と大雨怪獣が出てきて気象情報の使い方を伝えます。























そして、冊子の制作意図などを紹介するホームページも準備を進めています。














まだ細かい点の修正作業やら調整やらが残っていますが、半年ほど前に事業のタネを考えてた頃と比べると格段に具体化してきました。自治体向けに販売を始めるのも遠くない将来なので、世の中の役に立つツールとして見てもらえるか、期待半分・不安半分といったところです。