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危機の中の動画によるコミュニケーション(オランダの例から)

オランダでは新型肺炎の感染者が急拡大し、 通常のICUのベット数では対応しきれないといっていた危機の時にも 環境衛生の研究所(政府にアドバイスする立場の機関)は 様々な動画を作成して国民に情報提供を図っていた。 https://www.facebook.com/pg/RIVMnl/videos/?ref=page_internal 「よくぞこれだけ」という印象を受ける。 日本ではリスクコミュニケーションのために ここまで手が回らないだろう。 非常時の中でも情報を伝えることに人や資源を配置する。 それができるか否か。 それは平常時からの体制やコミュニケーションを 重視するかという姿勢にかかっていると言えるだろう。

危機の伝え方/米・蘭・日の比較から

次の3つの動画は、アメリカ、オランダ、日本で コロナウィルスの影響が切迫する際に行われた記者会見を並べたものだ。 内容の比較はともかく、モニターを使って予測を見せ、 説明を展開するアメリカは視覚的に分かりやすい。 メッセージの根拠を図示することで、 言葉だけよりも説得力は増すものだ。 見せ方一つで危機の伝わり方は異なる。 そんなことを考えさせられる例だ。

オランダの新型肺炎対応から学べる危機管理の中の合理性

オランダはよく合理的な国だと言われる。 日々の生活の中でも折に触れてそう感じるが、 今回の新型肺炎の政府対応を見ているとその思いを強くする。 オランダでは2020年3月16日から初等教育が閉鎖された。 子どもはリスクが高いグループではないということで 政府は直前まで学校を継続させる意向で粘っていた。 しかし、欧州のほとんどの国がそれまでに学校を閉鎖しており、 世論の声に押し切られる形で学校閉鎖が決まった。 3月15日の夕方のことである。 その後オランダは、新型肺炎の拡大に息をひそめた状態となる。 オランダのICUのベット数を超える患者数が予測されたため、 大急ぎで増床が図られた。医療資源が逼迫するオランダ南部から 比較的ゆとりのある北部まで患者を運んだ。ドイツにもICU患者を輸送した。 幸いにして社会的距離や飲食店休業、自宅勤務などの措置が効果を発し、 通常のICUベット数を少し超える程度で第一波を超えた。 最近のオランダはすっかり弛緩ムードが出ている。 その中での問題の一つは、いつ学校を再開するかだった。 学校を明日から閉鎖するとアナウンスされた当初は4月6日までとされていた。 しかしそれは結果的に延長されることとなるのだが、その理由が興味深い。 オランダ政府は延長措置を取る前に、子どもが感染源となっているかの 調査を行うとアナウンスし、その結果を踏まえて判断するとした。 その調査は短期間で終わるものではない。数週間を要するしっかりとしたものだ。 3月31日に首相はその他の措置延長と合わせる形で 5月休暇まで学校の閉鎖継続を国民に告げた。 そして4月21日、首相らの会見で5月11日より 小学校が再開されることが伝えられた。 この決定の背景には先ほど触れた調査を得た知見がある。 調査結果によると、子ども→子ども、子ども→大人への 感染はごく限られていると判明したという。 調査結果は翌4月22日の国会議員対象の テクニカルブリーフィングで詳細が当局から報告された。 報告の様子は中継が入っていて視聴ができる。 プレゼンテーション資料 も公開されているので 一般市民も確認できる。政策決定の背景が非常にクリアだ。 それにしても、議論をする土台、政策を判断する土台を作るた...

個人を出発点とするリスク情報への切り替えを

今までの日本の防災行政では、自宅が災害に巻き込まれて危険かの 読み取りや判断は住民に任せてきた。 「洪水ハザードマップの中から自宅や自宅周辺の浸水深を読み取り、 各自の事情や家の構造などと照らして避難の必要性を判断してほしい。」 言ってみればそれが行政からの働きかけの柱である。 内閣府による「避難行動判定フロー」(下図)もこの一種だ。 地域のレベルで情報を提供し、実質的な判断は個人に委ねている。 しかし、新型コロナウィルス肺炎の蔓延を受け、 避難所へ集まる避難者の抑制が急務だ。 広域避難の文脈では、浸水区域内での垂直避難者や 浸水区域内から、自治体内の浸水しない区域への避難者をのぞいて 広域避難対象者を絞り込むという考え方も出ている(下図)。 いずれの場合も、避難者数絞り込みの実質的な成否は 個人の理解力によるのだが、何とも心もとない。 これまで自治体はハザードマップなどで面的な情報を伝えてきた。 これを改め、個人に対してもっと個別にリスクを伝えるべきではないか。 ・洪水が発生するとあなたの家はどこまで浸水するか? ・どの程度の時間浸水するか? ・家で垂直避難が可能なのか? ・家で垂直避難できるときは何を想定しておけばよいのか?  ・避難先としてシナリオごとにどこが考えられるか 少なくとも上のようなことを事前に伝えておく必要がある。 ポイントは具体的であること、目線が個人単位であることだ。 「面」ではなく「点」の情報を伝えなければならない。 「点」の情報提供は海外ですでに前例がある。 オーストラリアのブリスベンでは 住所単位で浸水のリスク情報を 前もって伝え 、 水害が発生しそうなときにも住所単位で 浸水予測を出す 。 これだと危険が迫る時に具体的に何をすべきかが分かる。 河川の特性などが異なるので、オーストラリアのやり方を そのまま日本に当てはめることには無理もあろう。 しかし、コミュニケーションの発想法からは十分学ぶことができる。 オランダでは住所を入れれば最大の浸水深と発生する確率のほか、 どのような状況に直面するか、災害時に何をすべきかなどが 分かる サイト もある(下図)。 日本にも「 重ねるハザードマップ 」があ...

逆境の中で:オランダで準備が進む「1.5メートル経済」

新型コロナウィルスで筆者の住むオランダでは 3月からソフトなロックダウンが取られている。 1.5メートルの社会的距離が取れない飲食店は軒並み営業不可。 映画やイベントなどももちろん認められない。 都市を結ぶ鉄道は30分に一本のレベルまで間引きされ、 国内の4割の労働者が毎日在宅勤務を行なっているという数字もある。 対策の効果があり、死者や新規入院患者のピークは一旦超えた。 重症患者の一部はドイツに運ばれたが、 国内で対応できるレベルでICU患者数は止まりはした。 しかし社会を止めたために、経済への影響は大きい。 IMF(国際通貨基金)は2020年のオランダの成長率を-7.5%と予測する。 今、欧州各国はロックダウンをいかに緩めていくかの段階にある。 しかし、すぐに元の生活に戻すことはできない。 対策の手を緩めればICUで対応できる患者数を数倍上回るレベルでの感染となる。 このため、医療のキャパシティーを超えない範囲内で 経済や社会を少しでも回す方法が模索されている。 そのコンセプトとして出てきたのが冒頭の「1.5メートル・エコノミー(経済)」だ。 オランダのルッテ首相は各業界団体や各産業部門、政府の全省庁に発破をかけ、 新型コロナの爆発的感染と隣り合わせという「新しい現実」下でも 収益が上がる方法、社会が運営できる方法を見出すよう指示している。 それが「1.5メートル経済」である。 最悪を直視しつつ、その中で最善を目指すというオランダの危機管理の姿勢。 終わりのない危機が日常となる中、その姿勢は評価に値するものではないか。

【オランダ】オランダで使われていた警報伝達の手段

オランダがその歴史を通じて向き合い、そして恐れてきた災害は高潮災害です。 嵐によってもたらされた高潮は、畑や牧草地を侵食し、堤防を壊し、人々の生命や家畜などを含めた財産を奪ってきました。そのオランダでは過去どのような手段で、高潮に対する警戒を住民に呼びかけてきたのでしょうか。 ■音で合図 Schokland という高潮災害に非常に脆弱だった島(今は周りが干拓されて、陸地の中に島の面影を残しています)では、海沿いに大砲が設置されていました。この大砲は外敵を撃つものではありません。住民に高潮に対する警戒情報を伝えるためのものです。 大砲の背後には畑が広がっていますが、干拓される前は海でした 教会の横に大砲が設置されていました。この元島はオランダの水との関わりを示しているため 世界遺産 に登録されています 大砲1発は牛を避難させるタイミングの合図でした。状況が悪化した際には大砲が2発鳴らされます。これは、家財道具や貴重品をより高い2階部分へと移動させるタイミングを意味しました。 ■視覚的に合図 そして、次の写真は、19世紀後半から20世紀前半の漁村の様子を再現した Zuiderzee Museum という野外博物館で撮ったものです。これは、今風に言えば、高潮注意報・高潮警報を伝える装置です。 Stormbalの下の部分です 玉が吊るされています この日はポールの真ん中に玉が位置していました 遠くからみるとこのようなものです(出典: wikipedia ) この仕組みは、Stormbal(ストーム(嵐)ボール)と呼ばれています。高く建てられたポールの上・中・ 下どの場所に大きな玉が位置するかで危険を示しました。 玉が地面近くにある場合は平常、ポールの高さの半分のところに玉がある場合は牛を避難させるタイミング、ポールの一番上にある場合はすでに高潮が発生しているので、住民は避難せよという情報でした。沿岸沿いに堤防が設置されている場合は増水の状況が堤内からは見ることができないので、人々はこのボールの位置を頼りに判断をしました。 非常時にはStormbalの玉の位置だけではなく、教会の鐘が鳴らされたそうです。 また、Stadsomroeper(新聞などもなく、また識字率も低い時代に公的な知...

【コラム】FLOODrisk 2016: European Conference on Flood Risk Managementに参加しました

こんにちは。渡邉です。しばらくぶりの記事の更新となりました。 今週は4年に一回、ヨーロッパの都市で開催されている FLOODrisk というカンファレンスの週でした。第3回となる今回はフランスのリヨンが会場です。参加者は520名。その6割がフランス・イギリス・オランダからの参加者で、日本人は自分を含めて4名でした。 リヨン市内を流れる河川 災害情報という観点で全体会や分科会で報告された内容を見ていると、単なる河川水位や流域の内水氾濫の予測から一歩進み、「いつ・どこで・どのような危険がどの程度の確度で持って発生しうるか」という点に踏み込み、災害対策に当たる当局や一般の住民にとってより利用しやすい情報提供ができないかという方向性を垣間見ることができました。 また、サイエンス(自然科学や社会科学)と政策、あるいはサイエンスと水害対策の現場の乖離はヨーロッパでも問題視されており、それぞれの機関や個人が持つ知識や経験をいかに共有して全体の対策を進めていくかも重要な論点の一つとされていたのが印象的でした。EU全体の枠組みの中や各加盟国で試行錯誤が行われていますが、オランダはすでに各水防機関を束ねたワーキンググループをユニークな形で運用しており、この分野で一歩先を行っているようです。 ところで、オランダというと水害対策の先進地というイメージですが、「これまでの対策は不十分」と自己否定を行って、これから数十年かけて堤防網の大改造を予定しています。また、高度に整備された堤防などのハード対策で水害を抑えている為、水防関係者も水害対応の経験がない、ましてや住民はあまり水害の事を心配していないというオランダ独自のパラドックスもあります。オランダはこのパラドックスに自覚的で、先に触れた知識の共有化プロジェクトを始め、得意とする仕組みづくりの能力を生かしてシステマティックに課題を解決していこうとしています。 全体会の様子 さて余談ですが、一言で「ヨーロッパ」といっても、水害を引き起こす要因は場所によってそれぞれ異なっていました。 地中海沿岸の地方(スペイン南部、フランス南部、イタリア北部など)は短時間強雨による小中河川の急激な増水(Flash Flood)が大きな課題です。逆に北海に面したイギリス・フランス・ドイツ・オランダなどでは冬の嵐による高潮災害や...

【コラム】オランダやオーストラリアの水害対策事例に基づいて意見交換を行いました

こんにちは。渡邉です。 気象とコミュニケーションデザインの事業では、日本に向けて気象情報の利用方法の提案を行っている一方で、水害対策の先進地として知られるオランダにいることのメリットも活かしてオランダ視察の支援も行っています。 先月後半、私にとって記念すべき最初のお客様とアムステルダムでお会いしました。 私のこのブログを見てオランダ訪問に併せて意見交換をしてみたいとおっしゃっていただいたのは、NTTデータの前社長(現在は相談役)である山下徹氏です。 山下氏は総務省が平成26年に設置した「災害時等の情報伝達の共通基盤の在り方に関する研究会」(詳しくは こちら )の座長を務められた他、内閣官房ナショナルレジリエンス(防災・減災)懇談会(詳しくは こちら )等にも参加されるなど、日本の防災施策に関して企業の立場から積極的に貢献されていらっしゃる方です。 アムステルダムにて山下徹氏と筆者(右) 意見交換の中では、日本の防災対策の行政依存性が話題になりました。 私自身、2000年代前半に地方自治体の防災行政を担う立場にいたことがあり、こうした構造的な問題には感覚的に気づいていました(余談ですが、「行政」も「地域」や「住民」に依存していると感じていました)。ただ、「行政依存ではないあり方」の具体像を明確にイメージできるようになったのはごく最近のことで、オーストラリアの自治体や市民がどのように災害に対応するかという知見を豪州留学(2013年~2014年)で得た時です。 日本の防災を分析するには比較する軸が必要だというのが私の個人的な経験からの結論です。 比較軸としてオーストラリアやオランダがどこまで有効かという面もありますが、両国の事例紹介を元とした山下氏との約2時間の話し合いは話題が尽きることなく瞬く間に過ぎました。 なお、意見交換の参考用にオランダの堤防だけを網羅した300ページを超える大型本( こちら です)を持参しました。1ページ1ページ、山下氏に丁寧に見て頂けたのがとても印象に残っています。 最後になりますが、この意見交換会は、私自身にとっても日本の防災の課題を改めて認識することができた貴重な...

【コラム】低地の国、オランダの子どもの遊び場にあるものは?

こんにちは。渡邉です。 オランダで子どもたちを公園に連れていくと船をモチーフとした遊具がよく目に入ってきます。例えばこうしたものです。 オランダは17世紀~18世紀に海上交易の覇権を握っていたという歴史があるからか、あるいは単にヨーロッパ最大の港があるからか、個人の家にはミニチュアの船が飾ってあったり、大型客船が寄港したことがテレビのニュースになったりするなど、船に対する思い入れがひときわ強い土地の様です。このため船の遊具が多いのかもしれません。 そしてもう一つ。公園でよく目にするものはこちらです。ロッテルダム市内の別々の場所(1枚目は公園、2枚目は幼稚園の一角で休日などに一般開放されている場所)で撮った写真ですが、共通するものは何でしょう? 答えは、「アルキメデスのポンプ」と呼ばれる水を低いところから高いところに送る装置です。子どもたちが取っ手をぐるぐる回すと水が昇ってきて上から出てきます。 オランダは国土の約26%が海水面以下のため、雨水や地下水の強制排水が欠かせません。この仕組みを使った揚水ポンプはオランダでも現役です。以下の動画はロッテルダムからほど近いキンデルダイクと言う場所にあるポンプ場です。 子どもたちが遊ぶ公園に揚水ポンプや河川をモチーフとした遊具がさりげなく設置されているあたりに、何世紀にも渡って水と関わってきたオランダならではの土地柄を感じます。 (関連記事) 【オランダ】子どもも大人も体験を通して河川管理を身近に http://www.wpcd.jp/2014/11/blog-post.html 【オランダ】オランダの小学生が参加した「波に負けない砂山作り」のイベントが面白い http://www.wpcd.jp/2015/06/blog-post_84.html

【オランダ】オランダの小学生が参加した「波に負けない砂山作り」のイベントが面白い

こんにちは。渡邉です。 今日はオランダの防災・環境教育について書いてみます。 オランダは水との何世紀にも渡る格闘の中で国土を作ってきた国です。このオランダが一番恐れている水害は北海からの高潮によるものです。 1953年にオランダ南部で大規模な高潮被害が発生し、1800人以上が犠牲になるという災害が起きました。これを契機に国を挙げた治水計画(デルタプラン)が動き出し、堤防や高潮用のバリアなどが張り巡らされ、オランダでは1953年の災害以降、水害で人命は失われていないとのことです。 海面上昇の見込みや地盤沈下により高潮は今後も大きな課題とされていますが、治水インフラが高度に整備され、すでに半世紀上大規模な水害が国内で発生していないため、人々の災害に対する意識が逆に低いというパラドックスがあります。 このため、水関係の当局は様々な機会を通じて住民の危機意識の向上に取り組んでいます。 その一環として開かれたのが今日ご紹介するイベントです。以下の写真をご覧ください。 これは、2015年6月16日にオランダ国内の8つの小学校が参加して行われた"The Battle of the Beach"という催しの一コマです。子どもたちが海辺で美しい砂の城を作って競い合うというイベントではなく、満ちてくる潮に対して抵抗力の高い砂山が作れたら勝ちというルールです。 工夫を凝らして砂山を守る小学生のチーム(出典は こちら ) 波にさらわれていく砂の城を見て驚く子どもたち(出典は こちら ) 海に近いところに幾重にも堤防を築いたチームもありましたが、どの砂山もすべて波に洗われ跡形もなくなって行くのを見て、子どもたちは視覚的に波の力や堤防の重要性を学んだとのことです。 The Battle of the Beachのホームページ( こちら )には去年のイベントの動画がありますので以下に引用しました。楽しいイベントの中でオランダの防災の根幹に関わる重要なことをさりげなく学べるようにしている所が非常に興味深いと言えるのではないでしょうか。 The Battle of the Beach (関連記事) 【オランダ】子どもも大人も体験を通して河川管理を身近に http://www.wpcd.jp/2014/...

【天気のトリビア】もはや必ず当たるオランダ式天気予報

こんにちは。渡邉です。 オランダの天気予報が面白いとオランダ人が教えてくれました。 確かに面白いです。以下をご覧ください。特に北の部分です。雷、ひょう、雪、晴れ、曇りマークがいっぺんに表示されています。 オランダの天気予報(北部に注目) 日本語堪能なそのオランダ人によると、「やっぱりオランダ的な気まぐれなお天気だ!オランダ語で、"Wisselvallig"(変わりやすい)と言います」とのこと。 5つの現象(雷、雹、雪、晴れ、曇り)を一度に示しながら結論として伝えたいことはただ一つ、天気の変わりやすさです。 そしてそれはオランダの天気的にはいつものことなので、もはや必ず当たる最強の予報の1つだと思います。

【オランダ】youtubeや簡易なイラストで伝える河川政策

こんにちは。渡邉です。 今日はオランダの水害対策を紹介したyoutube動画のご紹介です。 全編オランダ語・・・なので何を言っているのかわからないのですが、治水対策をアニメーションで分かりやすく紹介しています。 この動画はRoom for the Riverというオランダの治水事業をまとめたものです(英語版ページは こちら です)。Room for the Riverは文字通り川の水があふれていかないよう、水用の場所(Room)を作っておくことを意味します。 Room for the Riverのホームページでは9つの具体的な方法が分かりやすく図示されています( こちら です)。 この内容は動画でも紹介されていました。河川政策を一般に対してどうわかりやすく伝えるかは各地で試行錯誤が重ねられています。日本の場合、きちんとした断面図で説明されることがあります。 スーパー堤防断面図(出典は こちら です) オランダの方法は治水対策を分かりやすくまとめているので一つの参考事例になるのではないかと思います。

【オランダ】地域のリスクをインターネット上で詳細に公開している例

こんにちは。渡邉です。 このブログでも何回か取り上げた「国土交通省の新たなステージに対応した防災・減災のあり方に関する懇談会」は、2015年1月20日に「新たなステージに対応した防災・減災のあり方」という報告書を公表しました(懇談会のリンクは こちら です)。 その報告書の中では、次のような指摘がありました。 報告書P8より抜粋(報告書のリンクは こちら です) 上記の内容を要約すると、地域のリスクを分かりやすい形で住民に提供すべきであるという主張です。 ところで、この提案のモデルとなりそうな事例がオランダにありました。 http://www.risicokaart.nl/ というサイトで、risicokaartは「リスクマップ」という意味です。 オランダのリスクマップ(リンクは こちら ) このリスクマップのサイトで住所や郵便番号を入力すると地域の様々なリスクが地図上に表示されます。例えばロッテルダムの私の住所近辺を調べると次のような情報が入手できます。 地図上に示されたリスク(リンクは こちら ) 地図上の情報を地図の左上にある「!」マークを選択してクリックしていくと、さらに詳細な情報を得ることができます。また、危険な施設からの距離などを測ったり地図上に同心円状で表示したりすることが可能です。 表示されるリスクは自然災害にとどまらず、多方面にわたっています。例えば、可燃性や毒性、爆発の可能性のある物質を貯蔵・製造等している会社の所在地及びそれらの危険物質の輸送ルート、放射性物質を扱う会社の所在地、航空機や水上・陸上を含めた交通関係の事故のリスク、火災発生時に危険性が高い建物、スタジアムといった暴動の可能性がある建物、自然発生の火災が起こりやすいエリアなどが地図上にプロットされています。 表示されるリスクの概要( こちら ) このマップには、国や地方政府、自治体などが持つ情報が網羅されている形になります(関連情報は こちら )。住民への情報提供の意図の他、行政当局や警察・消防といった機関の利用も意図されて設計されています(設計意図に関する説明は こちら です)。 ...

【オランダ・日本】よく見る情報の経路図に疑問を投げかけてみると?(その2)

こんにちは。渡邉です。 昨日は災害時の情報伝達経路に関心が高い日本の例と、災害の危険が高まった時に取るべき行動を軸として入手する情報を整理したオーストラリアの事例との対比を行いました(昨日の記事は こちら です)。 では、私が今住むオランダはどうか?という点が今日の話題です。 オランダ政府は危機管理情報のポータルサイト(www.crisis.nl)を用意しています。 まとめられているのは全国を網羅するサイレンの音を聞いたら何をするかという行動基準です。情報の伝達経路は出てきません。spp ちなみにサイレンは次のような形態で、こちらの 記事 によると全国に約4,200箇所設置されているそうです。毎月月曜日の正午に全国一斉に吹鳴テストが行われるので、その日にちょうどオランダにいると、基本的にはどこにいてもサイレンの電子音を耳にすることになると思います。 オランダのサイレン(出典は こちら ) サイレンは即時に対応する必要がある危険性が迫った時に鳴らされます。 サイレンを聞いたときの行動としては、 1.屋内に避難すること 2.窓やドアを閉めること 3.非常時の放送を担当する地域のラジオやwww.crisis.nlを見ること の3つが主なものとして掲げられています。 サイレンを聞いたときの行動指針( こちら ) さて、日本では自治体が設置した防災スピーカーなどを利用した警報システムがあり、Jアラート(全国瞬時警報システム)と呼ばれています。 このシステムの説明には・・・・ 総務省消防庁が作成したJアラートの資料より( こちら ) もちろん、情報の伝達経路図が出てきます。 「情報がどう流れるか」というところがないとどうも落ち着かないのが日本、情報の経路は省略して具体的に何をすべきかという点に担当直入に焦点を当てるのがオランダやオーストラリアの方法のようです。

【オランダ】〇〇〇だって浮いていれば沈まないじゃないか

こんにちは。渡邉です。 今日はオランダ式水害対策の話題です。 オランダでは海面上昇や水害関連の問題を解決する方法として、「浮かせて解決」という思考方法がとられることがあります。 例えば、水害対策として増水時に家が水に浮くような設計にしたり( こちら の回のブログです)、街そのものを水上都市化して不沈都市を作ろうという構想があったりします( こちら の回です)。 この他にも、オランダの企業はいろいろなものを浮かせようとしています。 例えばアパート、ホテル、カンファレンスセンター、そしてゴルフコースまで。 浮くゴルフコース http://www.waterstudio.nl/projects/66 このゴルフコースは海面上昇が懸念されるモルジブで実際に計画されており、世界初の試みだそうです。 「浮かせて解決」のオランダ式発想法は、途上国の都市のスラム問題を解決する方法でも見受けられます。こちらはまたいずれご紹介していきたいと思います。

【日本・オランダ・オーストラリア・イギリス】気象機関のtwitterアカウントを見比べてみると?

こんにちは。渡邉です。 気象庁がtwitterを始めたというのが話題になっているので、少し便乗してみたいと思います。 実物はこれです↓ 気象庁ツイッターアカウント https://twitter.com/JMA_kishou 各国の気象機関のtwitterアカウントを見比べてみると単純に面白いです。 ▼オランダ こちらは警報を発表していますが、割と事務的な印象で淡々としています。 https://twitter.com/KNMI ▼オーストラリア オーストラリアもごく最近、twitterでの情報発信を始めました(詳しくはオーストラリア気象庁のこのページです( こちら ))。州単位の発表で、先行して3州が実験的に運用を開始しています。内容は現在のところサイクロンに関する情報をアップデートしていくものに限っていますが、今年前半には発信する情報内容を広くしていく予定とのことです。 https://twitter.com/BOM_Qld ▼イギリス 注意報や警報を伝えるだけというわけではなく、フォロワーが興味を持ちそうな話題を織り交ぜながら情報発信をしています。人の手を介さずに警報などを発信し続ける、Met Office warnings@metofficeUKという アカウント や、嵐に関することに特化したMet Office Storms@metofficestormsという アカウント もあります。 https://twitter.com/metoffice ちなみに最近ではこのような記事が投稿されています。 なぜ寒くなっているかを天気図上で解説する記事 なぜ雪の予報が難しいかという問いと答え ジェット気流の予測動画を使いながら 週末寒くなることの解説 写真や動画を使って、分かりやすくコミュニケーションをとっていこうという意思が感じられます。イギリスは科学コミュニケーションの分野で力を入れ始めた国ということがしばしば言われますが、こ...

【オランダ】運河でスケートができる日はいつ来るか?

こんにちは。渡邉です。 今日は気象の話でも水害対策の話でもなく、ローカルな知識(Local Knowledge)に関する話です。 さて、オランダではここ最近、寒い日が続いていました。 運河や湖がそこかしこにあるのがオランダの風景で、先週金曜日にデンハーグという政治の中心地に行った時には池に氷が張っていました。 氷の上を鳥が歩いていました 氷の厚さは1センチ程度でしょうか オランダ人は運河などが凍るとその上でスケートをしはじめるそうです。 どのタイミングでスケートができるぐらいの氷の厚さになるか?ということですが、日本人はその点の知識があまりないので判断が難しいです。 オランダに滞在する日本人はではどう判断しているかというと、「オランダ人が滑っているのを確認できたらOK」と判断を現地の人に任せます。 ではオランダ人はどう見極めているのか?ですが、ある人の話したところによると基準が3つあるそうです。 氷が張るような日が10日続かなければ滑ってはいけない 滑ってよいかをチェックする人がいるのでその判断を待つ 他のオランダ人が滑っていないところは滑らない 特に基準の1を耳にしたときは、まさにこれが地元民が持つローカルな知識だと受け取りました。2はどういう人か気になります。3は意外と慎重なのだなという印象です。 さて、氷点下の日が10日続いても日本人にとっては「ただ寒い日が続くね」で終わるのですが、地元の人たちにとっては「運河でのスケートの解禁日が近い」となるわけです。 これは、全く同じ気象現象を経験していても、ローカルな知識の有無で受け取る意味合いが異なってくるという例です。 運河の氷に限らず、集中豪雨と水害・土砂災害に対しても同じようなことが言えるのですが、これはこのブログの基本テーマの1つなので今後も様々な記事で紹介していきたいと思います。

【オランダ】オランダ気象庁のトップページには非常モードがあります

渡邉です。こんにちは。 昨日はオランダの注意報・警報についてまとめました( こちら のブログです)。 今晩から明日にかけて各地でみぞれや雪が見込まれ、上から2番目の警戒情報が発表されていますが、それに合わせてオランダ気象庁のトップページ( こちら です)のデザインが非常モードに全面的に変わりました。 警戒を呼びかけるページデザインになりました トップページを見ると、エリアごとの警戒情報の発表状況(この場合は全国的に上から2番目のオレンジ)やレーダー、全国の概況などがまとめられています。地域別の情報へのリンクなども付けられています。 ちなみに普段はどういったページデザインかというと、以下のような構成です。 普段のトップページ 見比べてみると、非常モードと通常モードが全く異なることが分かります。私の知る限り、日本やオーストラリアの気象庁のページでは気象現象に応じてここまで大胆に変わることはありません。 オランダは、国土は九州とほぼ同じ大きさ、人口は約1,700万人という小国です。小さいが故に小回りが利くので、災害が起こり得る状況が予測されるときは、トップページごと入れ替えて警戒を呼びかけるという対応ができるのではないかと感じました。

【オランダ】現在から48時間先までをターゲットにしたオランダの注意報・警報

こんにちは。渡邉です。 このブログでは以前、イギリスの洪水予報の見せ方をご紹介しました( こちら です)。3日先まで、1日ごとにどこで洪水の危険性があるのか分かるような仕組みでした。 今日はオランダの注意報・警報の話題です。見せ方とすると、イギリスの洪水予報のような方法をとっています。 本題に触れる前にまず、オランダの気象庁( KNMI )が発表する気象に関する注意報・警報について簡単に触れてみたいと思います。オランダの場合、注意・警戒情報は「発表なし」を含めて4段階に分かれています。4段階とは以下のとおりです。 オランダの注意報・警報の種類 すぐ下に地図を引用しますが、カラー表示の場合、緑色は発表なし、黄色はシビアな現象に対する注意を意味しており、天候の影響を受けやすい活動に対して注意が呼びかけれます。一方、オレンジ色は極端な気象現象に対しての警戒が呼びかけられるもので、日本でいう注意報に相当すると考えられます。赤は気象警報に相当するものといった形です。 こうした情報は、この先3日間の曜日ごとに発表されます。 木曜日(左)、金曜日(中)、土曜日(右)の 注意報・警報等の発表状況*1 上の図を見ると、この先土曜日が黄色で、全国的にシビアな現象が予測されていることが分かります。「?」マークをクリックすると以下のようにマークの意味とそれぞれの基準が出てきます。 注意報・警報の意味と基準の例 雪マークの黄色ということで、今週末の土曜日は1時間に時間0~3センチの雪が見込まれています。ちなみにオレンジ色の基準と赤色の基準が全く同じなので、どちらの情報を発表するかという運用をどう行っているのかが気になるところではあります。 さて、話を元に戻すと、先ほど紹介した3日間の状況の下には以下のような補足情報がついています。ここにはそれぞれの地域で起こり得る可能性があることと(下の例ではスリップに注意とあります)、影響を受ける時間帯が文字情報とグラフ情報で表示されます。 影響内容と影響が予測される時間帯の表示 オランダの気象庁のHP( こちら です)はオーストラリアの気象庁のページ( BOM )...

【オランダ】家だって浮いていれば沈まないじゃないか

こんにちは。渡邉です。 特集記事の続きをと言いたいところですが、今日は少しバテ気味なので軽い話題を。 数日前のブログで、水に浮く実験的な街がオランダで試作されていることをお伝えしました。以下の記事です。 ▼【オランダ】街だって浮いていれば沈まないじゃないか   http://wpcdnote.blogspot.nl/2015/01/blog-post_14.html ところでオランダでは、街だけではなく家も浮きます。 アムステルダムの運河から見たどなたかの家 この写真のように、ボートを家にして運河の上で住んでいる人もオランダにはいます(ちなみに貧しいからボートで生活という訳ではなく、ライフスタイルとしてボート暮らしが選ばれています。自治体への住所登録も普通にできるそうです)。 今日ご紹介したいのはこのような船の家ではなく、通常は普通の家でも洪水時に浮力で浮かび上がっていく家のことです。 増水時に浮かび上がる家*1 オーストラリアに留学していた当時に知り合った建築家のレポート*1を引用すると、これらの水に浮かぶ家はオランダ中央部のMaasbommelという場所にあり、2007年から46棟が立てられたそうです。 建物はマース川の土手に作られており、増水時には5.5メートル浮かび上がることができます。 浮かび上がっても地面に固定されているので流されていきません。ライフラインは伸びるパイプを通されており影響を受けません。 オランダにはRoom for the Riverというプログラムがあり、増水時に浸水する場所を河川沿いに作っておいて洪水をコントロールする方針がとられています。 これらの浮かぶ家は、増水時に水没する地域に作られています。そうした地域には通常は住居の建築が許可されませんがこの形態の家は認められました。ただし、住宅という形ではなく休日用の別荘という形での許可のみを受けているそうです。 オランダには街も家も浮かせて水害を乗り越えようという発想があるという訳です。一方で、オーストラリアには水に沈むことを前提とした住宅があります。こちらもおいおい記事にしていきたいと思います。 (出典) *1:Accommodat...