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3月, 2015の投稿を表示しています

【世界】ベルギーでは10日先までの洪水予報の詳細が簡単に閲覧できます

こんにちは。渡邉です。

欧州の気象情報/洪水予報等のポータルサイトを巡る旅、第2弾はベルギーです。

WATERINFO.beがそのサイトです。ちなみにこのサイトの表示言語は3種類あります。ベルギー北部はオランダ語圏、南部はフランス語圏のため、蘭語・仏語の他に英語も選ぶことができます。
















基本的なメニューとしては、以下のとおりです。
1. 洪水
 1.1  現在の状‘況
 1.2  48時間以内の短期の予測
 1.3  10日間先までの長期の予測  2. 潮の影響(沿岸部だけではなく、潮の満ち引きで影響を受ける河川も含む)
 2.1  現在の状況
 2.2  48時間先までの短期の予測  3. 降雨
 3.1  現在の状況
 3.2  過去から48時間先までの短期の予測  4. 干ばつ
 4.1  現在の状況
 4.2  10日先までの予測 実際に触ってもらえると分かるのですが、かなり細かい情報が公開されています。特に便利そうだと思うのは、1.3として挙げた10日先までの長期の洪水予報です。実際の例は次のようになります。


















一番上のグラフが河川の流域雨量("NU"とあるのは現在の時間です)、2段目が水位、3段目が流量です。

先のことになると不確実性が増す訳ですが、そこはモデル計算結果のばらつきがそのまま表示されているようです(1段目では予測の線が複数あること、2段目・3段目ではグラフの示す幅が広いことを指して言っています)。

「予測には幅があるものだ」という理解を持ちながらこれを利用すれば、概ねいつ・どのような規模で増水する可能性があるのかを前もってつかみ、ある程度対策に活かすことができます。

このレベルの情報が一般に入手しやすい形で公開されているのはベルギーの1つの特長だと思います。

【世界】オーストリアでは「○年に1回の大雨」に関する情報がウェブで簡単に入手できます

こんにちは。渡邉です。

今日から何回か、ヨーロッパ各国のハザードマップや気象データを網羅した地図を見ていきたいと思います。

ちなみに、ただの地図ではなく、ウェブ上のシステムで情報を引き出していくというインタラクションができるものを紹介していきます(各国のインタラクティブなマップのリスト自体はこちらの報告書(p.31)にあります)。なお、「これは便利かもしれない」というのが私の説明のポイントです。


第1弾となる今日はオーストリアです。
Austria: Hochwasser Risikozonierung Austria HORA (http://www.wassernet.at/)

オーストリアの上記のマップからは、「○年に1回の雨」という情報を簡単に見ることができます。

















オーストラリア(豪州)の場合は緯度経度を入力して○年に1度の雨を知るというシステムでしたが(詳しくはこちらの回のブログです)、こちらオーストリア(墺)の場合は赤い点々(グリッド)ごとにデータがまとまっています。

赤の点を選択してPDFを見ていくと次のような情報が入手できます(ある地点の例(PDF)はこちらです)。表の縦軸は時間、横軸は○年に1度の「○」にあたる年、表中の数字は雨量で単位はミリです。計算手法によって導き出される数値が異なるので各条件で3パターンずつ挙げられています。
















データがこのような形で簡単に手に入ると、たとえオーストリアに行ったことがなくても現地の「大雨」はどの程度のレベルを指すのかなどが定量的に分かるので便利です。


【コラム】災害情報の伝達はいつも注目を集めますが・・・(後編)

こんにちは。渡邉です。

前回(こちらです)は災害情報の「伝達」に注目が集まることを札幌市の事例をあげて紹介しました。

一方で、世界気象機関(WMO)が発行した報告書"Flood Forecasting and Early Warning"では、災害警戒情報のコミュニケーションを考える際のモデルとして以下の図と説明をあげています。



















この報告書では災害情報がうまく使われるようになるためには人の行動に着目する必要があることを指摘しています。そのうえで、人々の行動変容をもたらす説得力のあるコミュニケーションには次の3つの段階が必要であると述べます。キーワードの後の説明は例として挙げられているものの訳です。
1.気付き(Awareness):自分たちの置かれている状況に関するリスクに気づいていること  2.理解(Understanding):家族や地域に対して進行する大雨などがどのような影響を及ぼし得るか分かること  3.承諾(Acceptance):警戒情報に従わなければ怪我やいのちの危険があるという見解を受け入れること 情報伝達重視のパターンと上記を比較して1つ事実として言えることは、情報が伝達されればすべて解決するという枠組みではないということです。また、上記の1・2・3どれもが情報を受け取った個々人の対応力を問題としています。

「情報伝達がうまく行けば自動的に人は避難行動をとるはず」という見方を批判的に検証しながら対策を練っていかない限り、災害情報の有効利用に関する議論は表面的なもので終わる可能性があります。

「人の行動変容」についてより積極的に着目していくことが必要ではないでしょうか。

【コラム】災害情報の伝達はいつも注目を集めますが・・・(前編)

こんにちは。渡邉です。

毎日新聞の記事によれば、去年9月の災害を受けて札幌市が避難勧告等の情報伝達のあり方を見直すそうです。いずれリンクが切れると思いますが、該当記事は2015年3月23日配信の「避難勧告:昨秋集中豪雨被害の札幌 情報伝達方法を見直し」というものです。

その記事を要約すると次のような中身です。
・昨年9月に特別警報が出された集中豪雨の際、札幌市から約78万人に避難勧告が出され、緊急速報メールが町内会単位で20回以上配信されたが実際の避難者は約500人だった。  ・災害後のアンケートで町内会名が分からない住民がおよそ40%近くいるなど、町内会を対象とした情報伝達に課題があった。  ・このため、町内会単位ではなく町名単位で情報提供を行っていくほか、広報車や防災ラジオ、警戒が必要な施設への一斉ファックスなどで情報を伝えていくことが検討されている。 全体としてこの記事は「情報伝達経路さえうまく整備されれば避難行動がもっと取られるようになる」という直線的な関係が基本的な前提になっています。

この前提に対する比較として面白いのは、世界気象機関(WMO)が2015年3月に発行した"Flood Forecasting and Early Warning"という報告書です。この報告書には、洪水予報の技術的な点が網羅されているほか、警報などの早期の警戒情報が一般市民によって使われるためのポイントも含まれています。
























結論を先に言えば、この報告書では毎日新聞の記事の論調のようにすべての問題を「情報の伝達」に帰している訳ではありません。詳しくは次回述べたいと思います。

(続く)

メモ:
WMOの報告書の表紙写真はオランダにあるノアの箱舟のレプリカです。キリンは船の上から大洪水を見ているはずです。

【オーストラリア】冠水した道路の危険性を伝えるドライバーに伝える際の工夫点

こんにちは。渡邉です。

道路が冠水しているところに車が進んでいき、犠牲者が出るということはオーストラリアでもしばしば起こります。
クイーンズランド州政府は"If it's flooded, forget it"というフレーズを用いて道路冠水の危険性を呼びかけています(こちらのページです)。
以下はそのキャンペーンの一環で州政府広告として放送されたものの動画です。「夏に買ったばかりの2.5トンの新車は何でもできると思っていたが・・・」という内容です。起承転結がはっきりしているので、英語が聞き取りづらくても見ていると流れが分かります。



この人の話が本当にあった話かどうかは別として、全体のトーンとしては押しつけがましい説教のようなスタイルを巧みに避けながら道路冠水に向かっていくことの危険性を伝えようとしている好例だと思います。



【コラム】「バックビルディング」の解説が気象庁の予報用語集に復活する日は近いか?

こんにちは。渡邉です。
豪雨をもたらした大雨をニュースなどが報道・解説するときに「バックビルディング」という言葉を聞いたことはありますか?

以前このブログで以下のように取り上げたことがありました(こちらの回です)。

・・・2014年のユーキャン新語・流行語大賞の候補語に「バックビルンディング」という気象関係の用語が含まれていました。流行語大賞の候補語をまとめたサイト*1を見ると、2014年8月の広島豪雨発生メカニズムの解説から広まっていった言葉であるようです。  マスコミが取り上げた「バックビルディング」の説明(「積乱雲が建ち並ぶビルのように見えることから、バックビルディング現象と呼ばれる」といったようなもの)が、気象研究者から見たらトンデモだった*2というのもコミュニケーションを考える上では興味深いテーマですが・・・
実際のバックビルディングを見ると「積乱雲が立ち並ぶビルのように」見えますか?右側のイラストを見るとそのように見えなくもないですね。



















さて、このマスコミの誤解が生まれた遠因の1つを昨日たまたま見つけました。気象庁の予報用語が2007年に見直された際、それまでは用語集に含まれていた「バックビルディング」が削除されていたのです。

予報用語見直しのプレスリリースに「天気予報や解説では用いないことから削除した用語」としてつけられたPDF(こちらです)を引用すると次のとおりです。
















削除された「バックビルディング」の定義を見ると、「積乱雲が進行していくその後ろ側で、繰り返し新しい積乱雲が発生する状態。集中豪雨は、このように繰り返し積乱雲が発生することで生じることがある」とあります。これを読むと「バックビルディング」は「積乱雲が立ち並ぶビル」といった見た目ではなく、雨雲の発生のメカニズムに注目した用語であることが分かります。

「バックビルディング」は2014年3月現在の予報用語集(こちらです)にも含まれていません。

流行語大賞の候補用語になるなど昨今の豪雨災害を受けて人目に触れる言葉になってきていることや、大雨の危険性をリアルタイムで伝える際にも意味のある言葉であるので、できるだけ早い段階で再度予報用語集に復活されていくことが望まれます。


(引用)
*1:流行語大賞候補語をまとめたサイト
http://matome.naver.jp/odai/2139591219…

【天気のトリビア】国が違えば気象用語で使われる時間の説明の仕方が変わる例

こんにちは。渡邉です。
2015年3月20日金曜日の午前中はヨーロッパは皆既日食でした。ちょうどその時間には日食のことをすっかり忘れてしまっていましたが、家の中が夜のはじめごろのように一時的に真っ暗になっていたのは今振り返ると日食のせいだったのだと思います。
さて、今日はコラム的に気象用語で使われる時間の概念について書いてみたいと思います。
冒頭の日食の話題の中で使った「夜のはじめごろ」というのは何時から何時頃だと思いますか?天気予報で「夜のはじめごろ」というキーワードが出た時はその言葉が指す時間が決まっています。
























「夜の初めごろ」は18時頃から21時頃のことを指します。ちなみに、18時~21時という時間帯は2007年に気象用語が広範囲で見直されるまでは「宵のうち」と言われてました(詳しくはこちらです)。
ちなみに、気象用語(Weather Words)として使われる時間の区切り方は地理的又は文化的な要素などが絡んでくるので各国を比較してみると面白いです。
例としてオーストラリアの場合を取り上げると以下のとおりで、日本とは全く異なる時間の区切り方がされています。
以下を見ると、日本でいう「夜の始めごろ」の18時から21時はオーストラリアでは"late afternoon"(~19時)から"evening"(19時以降)にかけてとなります。






















気象自体は自然現象ですが、天気予報や気象情報となるとそれが使われる社会の通念であったり文化が色濃く反映される場合があります。気象用語としての「時間の説明の仕方」という面を見ただけでもこの点を垣間見ることができます。

【日本】「逃げ時マップ」を補完する「気象情報利用力」

こんにちは。渡邉です。

2000年東海豪雨から15年近く経ち、その間に旧西枇杷島町は清須市として新市に移行しました。

清須市の現在のホームページを見ると、「逃げ時マップ」という形で個々人の住居形態に応じて避難のタイミングや避難行動のあり方などがまとめられています(該当ページはこちらです)。

以下は庄内川が決壊した場合を想定しての「逃げ時」を示したものです(出典はこちらです)。逃げ時マップ上の掲載事項を順を追って引用していきます。

1.庄内川が決壊するとこの程度浸水すると考えられているので・・・

























2.私の住まいを考慮すると・・・













3.いつの段階でどこに避難行動をとるのがいいのかが分かります











逃げ時マップは普通の洪水ハザードマップに時間的な要素(浸水が起こる前と起こった後)と空間的な要素(住宅の位置する高さと浸水深との関係)が加えられ、より個々人の生活実態に近い部分に洪水の予想を落とし込んで判断をしてもらおうという試みです。この視点は2000年東海豪雨の時点ではまったくなかったもので、ソフト面の防災対策という面で1つの重要な進歩であると言えると思います。

しかし、実はまだ問題が残っています。その問題は「逃げ時マップ」の中の次の一文に隠れています。









引用した最後の部分には、「気象情報・水位情報・避難情報や周辺状況などに注意をはらって、ご自身の判断で行動してください」とあります。

入手可能な気象情報や水位情報、あるいはメディアや行政から伝えられる情報などから水害の危険性を見極めて、行動指針にまとめられた行動を開始することが期待されていますが、この「見極める」という部分がおそらく一番難しいのではないでしょうか。

行動指針はできたものの、その指針に基づいて判断するのは基本的には個人であるため、やはりここでも気象情報等をうまく使いこなすことができるかという「気象情報利用力」が本質的な課題になっていると考えられます。

【日本】「顔見知りの町内会の役員さんに言われたから避難しました」が示唆する様々な問題点

こんにちは。渡邉です。

2000年東海豪雨の事例をここ何回かお伝えしていますが、今回は住民の視点をご紹介します。

本題に進む前に1つご紹介ですが、東海豪雨時のアメダス名古屋の雨量と気象台からの各種情報を一つにまとめたグラフが次のものです。




















これを見ると記録的短時間大雨情報が愛知県下に何度も発表されており、異常な事態が進行してたことが分かります。ちなみにこの日(2000年9月11日)の雨は観測開始以来の日最大1時間雨量や月最大24時間降水量を簡単に上回っています。
















こうした中で新川・庄内川の水位が上がり、庄内川がいよいよ危ないとなった9月11日23時55分に西枇杷島町では全町を対象とした避難勧告が発表され、町から12地区の地区長を通じて57の町内会に連絡が行きました(避難勧告を発表するまでのいきさつはこちらです)。

私の実家にも避難勧告の連絡が入り家族は近くの小学校に避難しました。その時はどちらかというと町内会の役員さんの顔を立てて避難したというのが実情に近いようです。「庄内川が危ない」ということは聞いたそうですが、「まあ避難所で一泊してくるか」ぐらいの心づもりだったそうです。皮肉にも、その数時間後には新川決壊により水没した西枇杷島町を避難所の窓から見ることになりました。

さて、このエピソードは3つの意味で示唆的です。

1つは新川の危険性が住民側でも見過ごされていた点です。庄内川が危ないという情報が町役場に入り、それを受けて避難勧告が出されたため、「新川も危ない」ということが主題に上りませんでした。このため新川決壊はまさに背後から刺されたものとして行政や町民に受け止められました。

また、2つ目として、桁違いに記録的な大雨となっていても人は案外何もしていないことが指摘できます。私の実家が特に鈍いという訳ではなく、これは大雨による災害で共通する課題だと思います。雨量や水位のデータ、あるいは気象台から発表される情報の数々を災害が発生した後から振り返ってみれば、災害発生に直結する危険性を数多く指摘することができます(例えば新川が計画高水位を超えていた点や雨の降り方が観測開始以降もっとも強いものであった点など)。ただ、そうした危険性を進行する事態の中から読み解いて備えることは容易ではないことが言えます。

3つ目として、私の実家のようなケースの場合では避難には避難勧告が必要だっ…

【日本】災害情報は手元にあるだけでは使えないという例

こんにちは。渡邉です。
今日も2000年東海豪雨時の続きです。

旧西枇杷島町の西を流れる新川が計画高水位を超えたのは2000年9月11日19時40分であったのですが、町が避難勧告を発表した直接の契機は町の東側を流れる庄内川が危険な状態になる見込みであると河川管理者から伝えられた後の同日23時50分のことでした。

新川の緊迫した状況に対して積極的な避難が呼びかけられなかった理由には、目が庄内川に向いていたというものに加えて、そもそも河川水位を避難の判断に活かすことができなかったという点も指摘されています。

この点について詳しく調査した結果が吉井博明氏の論文(出典はこちらです)のP128にまとめられているので以下引用します。以下の引用で町長とあるのは当時の西枇杷島町長のことです。
町長は避難勧告をいつ出すべきか迷っていた。庄内川と新川の水位については、テレフォンサービスにより、ある程度入手できたが、水位が何メートルになったところで避難を呼びかけるべきか、天端まであとどのくらいあるのか、いつ越流しそうなのか、といったことがわからず、判断に迷っていたのである。  そこに一本の電話がかかってきた。庄内川工事事務所所長からの電話であった。庄内川がはん濫する危険性があり、避難勧告を出した方が良いのではないかという内容だった。この電話でのやりとりにより、町長は避難勧告を出す踏ん切りがついたという。午後11時55分、町長は全世帯を対象に避難勧告を出した。「庄内川が氾濫する恐れがあるので、避難してください」という内容であった。 「災害情報は認知されただけでは活用されない」というのは災害情報の研究者の指摘です*1。水位に関する情報から町にとっての危険性を読み解くという点は旧西枇杷島町では残念ながらうまく行うことができませんでした。

ただ、当時は洪水ハザードマップが整備される前の段階で、新川・庄内川ともに浸水想定区域図は未整備でした(東海豪雨を受けて水防法が改正され、浸水想定区域図が整備されるようになっていきました)。また、新川は当時、洪水予報の対象河川ではありませんでした(出典はこちら)。

社会制度的にも、町の行政能力的にも、河川管理や気象の面で素人の町長が丸腰で避難を判断しなければならないという状況でした。庄内川工事事務所長という専門家集団のトップからのアドバイスを受けて避難の判断…

【日本】大きな河川の大きな危機と小さな河川の大きな危機

こんにちは。渡邉です。

今日は前回の続きで、2000年9月の東海豪雨の際に新川が計画高水位を超えていたのになぜ旧西枇杷島町ではあまり注目されなかったのかをテーマにします。

計画高水位は堤防の設計限度のようなもので、実際の堤防の高さまではまだ余裕が少しある場合もありますが、きわめて危険な水位です。

新川はかなり危険ではあったのですが、それ以上に行政や関連機関が固唾をのんで注目したのは庄内川の水位でした。

旧西枇杷島町は新川と庄内川に囲まれた地域に位置しています(以下の図でいえば水色の部分に相当。一部名古屋市西区を含む)。新川と庄内川では河川の大きさが違っており、新川が切れても町が水没する程度ですが、庄内川が決壊すると「町が川になる」と言われています。


















当時の庄内川の水位を見ると次のとおりです。庄内川の水位が11日夕方から一気に上がり続けていることが分かります。

旧西枇杷島町の避難勧告は庄内川の管理者との電話協議で背中を押された町長が23時55分に全町向けて発表しました。時を同じくして各市町村が矢継ぎ早に避難勧告を発表したことが垣間見れます。

















結果的には9月12日の午前3時半ごろに新川が決壊しています。水位のデータを見れば新川が十分危険だったことは明白なのですが、当時としては「後ろ(新川)から刺された」という表現がもっとも心情にあっていたと思います。

ちなみに新川は江戸時代に治水目的で掘られた人工河川です。旧西枇杷島町から見て上流部分に洗堰と呼ばれる堰があり、通常は干上がっていますが、庄内川増水時には増水した水が新川に流れ込み、より甚大な被害をもたらす庄内川の決壊を防ぐという仕組みがありました。

再度、新川の水位を示したグラフを掲載しましたが、この中で「洗堰流入」とあるのは庄内川の水が洗堰を経て新川に流れ込んだ時間帯を示すものです。



















この洗堰があったから新川が決壊し旧西枇杷島町が沈んだのか、あるいはどこかでもっと甚大な被害が起こることを未然に防いだのかは分かりません。ただ、旧西枇杷島町民の中には「新川はその役目を果たした」と言う人が少なからずいたのも事実です。

次回は当時の住民の動きをまとめます。

(「【日本】災害情報は手元にあるだけでは使えないという例」に続く)

【日本】計画高水位を超えてもすぐに避難勧告が出なかったのはなぜか?

こんにちは。渡邉です。

昨日に引き続き2000年9月の東海豪雨を振り返ります。

今日の視点は愛知県旧西枇杷島町や近隣の自治体の対応です。以下のグラフは東海豪雨時の新川の水位に併せて各市町村の避難勧告などをまとめたものです。

計画高水位を超えた時間と各地で避難勧告が出された時間を見てみてください。「あれ?」っと思いませんか。























計画高水位については以下のイラストが分かりやすいので引用しました(出典はこちらです)。計画高水位は「川の堤防工事などの基準でその堤防が耐えられる最高の水位」とあります。















東海豪雨時の新川を見ますと、計画高水位を超えたのは9月11日の19:40です(10:40とありますがこれは誤植です)。

旧西枇杷島町の避難勧告は23:55に発表されました。結果的には翌12日の3:30頃に新川の堤防が名古屋市西区で決壊したため、旧西枇杷島町では町のほぼ全域が浸水。道路から2メートルを超える深さとなった場所があります。

「新川の異常事態に気づいてもっと早く避難勧告が出せたのではないか?」という見方が当然できるわけですが、旧西枇杷島町は新川の洪水の危険性よりももっと大きな危機に直面していました。

これが、新川に対する役場の、また町民の警戒心を相対的に低下させたのではないかと思います。

(「【日本】大きな河川の大きな危機と小さな河川の大きな危機」に続く)

【日本】2000年9月の東海豪雨災害を雨量面で振り返る

こんにちは。渡邉です。

今日から何回かに分けて、2000年9月に発生した東海豪雨災害を振り返ります。私個人にとってはその後の人生の方向性をある意味決定づけた出来事なのですが、もう15年も前のことです。

初回の今日は東海豪雨災害を雨量面から振り返っておきたいと思います。

東海豪雨災害は、観測開始以降、その地域が経験したことのないほどの大雨でした。「極値」というのは観測史上第1位の値を指しますが、アメダス名古屋での観測で日最大1時間降水量、日降水量、最大24時間降水量ともに極値を更新しています(下表参照)。











表中にもあるように、特に日降水量や最大24時間降水量はこれまでの値の2倍となっており、いかに異常な事態であったかが分かります。

この大雨を受け、愛知県内では死者7名、重軽症者107名、住宅の全壊・半壊・一部損壊が319棟、床上浸水が22,078棟、床下浸水が39,728棟などの被害が発生しました(出典はこちらです)。

記録的な大雨により愛知県管理河川の新川が決壊したことで、私の実家のある(そして翌2001年から私が町の防災担当として勤務した)旧西枇杷島町では、床下浸水が13世帯40人なのに対し、床上浸水は4,009世帯10,387人の被害を記録しました。旧西枇杷島町の2000年9月1日現在の総世帯は6,592世帯、総人口は17,365人でしたので、世帯数及び人口数でおよそ6割が床上浸水の被害を受けたことになります(出典:西枇杷島町編「平成12年9月東海豪雨災害記録誌」)。

この当時、役場や住民はどう動いたかということや、避難を呼びかけられた際の住民の意識などをシリーズで振り返り、この災害の教訓を改めてまとめていきたいと思います。

(「【日本】計画高水位を超えてもすぐに避難勧告が出なかったのはなぜか?」に続く)

【オランダ】youtubeや簡易なイラストで伝える河川政策

こんにちは。渡邉です。

今日はオランダの水害対策を紹介したyoutube動画のご紹介です。

全編オランダ語・・・なので何を言っているのかわからないのですが、治水対策をアニメーションで分かりやすく紹介しています。



この動画はRoom for the Riverというオランダの治水事業をまとめたものです(英語版ページはこちらです)。Room for the Riverは文字通り川の水があふれていかないよう、水用の場所(Room)を作っておくことを意味します。
Room for the Riverのホームページでは9つの具体的な方法が分かりやすく図示されています(こちらです)。

この内容は動画でも紹介されていました。河川政策を一般に対してどうわかりやすく伝えるかは各地で試行錯誤が重ねられています。日本の場合、きちんとした断面図で説明されることがあります。

オランダの方法は治水対策を分かりやすくまとめているので一つの参考事例になるのではないかと思います。








【オランダ】地域のリスクをインターネット上で詳細に公開している例

こんにちは。渡邉です。

このブログでも何回か取り上げた「国土交通省の新たなステージに対応した防災・減災のあり方に関する懇談会」は、2015年1月20日に「新たなステージに対応した防災・減災のあり方」という報告書を公表しました(懇談会のリンクはこちらです)。

その報告書の中では、次のような指摘がありました。










上記の内容を要約すると、地域のリスクを分かりやすい形で住民に提供すべきであるという主張です。

ところで、この提案のモデルとなりそうな事例がオランダにありました。http://www.risicokaart.nl/というサイトで、risicokaartは「リスクマップ」という意味です。























このリスクマップのサイトで住所や郵便番号を入力すると地域の様々なリスクが地図上に表示されます。例えばロッテルダムの私の住所近辺を調べると次のような情報が入手できます。
















地図上の情報を地図の左上にある「!」マークを選択してクリックしていくと、さらに詳細な情報を得ることができます。また、危険な施設からの距離などを測ったり地図上に同心円状で表示したりすることが可能です。

表示されるリスクは自然災害にとどまらず、多方面にわたっています。例えば、可燃性や毒性、爆発の可能性のある物質を貯蔵・製造等している会社の所在地及びそれらの危険物質の輸送ルート、放射性物質を扱う会社の所在地、航空機や水上・陸上を含めた交通関係の事故のリスク、火災発生時に危険性が高い建物、スタジアムといった暴動の可能性がある建物、自然発生の火災が起こりやすいエリアなどが地図上にプロットされています。
























このマップには、国や地方政府、自治体などが持つ情報が網羅されている形になります(関連情報はこちら)。住民への情報提供の意図の他、行政当局や警察・消防といった機関の利用も意図されて設計されています(設計意図に関する説明はこちらです)。

リスク情報を地図上にまとめて見せていく際の1つの参考となる事例ではないかと思います。見やすいか見づらいかは別として、カバーするリスクの網羅性の高さは特筆に値するのではないでしょうか。

【コラム】気象災害時にも具体的な判断ができる個々人を育てよう

こんにちは。渡邉です。

ここ何回か情報伝達の経路図に焦点を当てて記事をまとめてきました。

災害情報の経路図に対する行政側の関心の高さは、災害情報の伝達を重要課題と位置づける行政の姿勢に通じています。

ただし、情報を送り届けることができれば災害被害の低減ができるはずという「期待」は単なる「期待」でしかありません。

一方で、情報の伝達云々ではなく、危機が迫っているという認識力であったり、生き残るための判断力・行動力を育む形のアプローチが功を奏したのが4年前の釜石市の事例です。このアプローチの特筆すべき点は、行政などからの情報があろうとなかろうと、判断ができる個々人を育てた点です。

同じことが、気象災害に対してできない理由はありません。

【日本】災害情報の伝達図への一工夫

こんにちは。渡邉です。

昨日一昨日のブログで、オーストラリアやオランダの事例と比較して、日本の場合は情報の伝達経路図が好んで使われていることを述べてきました。

日本でよく見かける情報伝達図の中にもバリエーションがあり、大きく2つに分けることができます。すべての例は自治体のウェブページや広報誌からの引用で、比較的住民の目に触れやすい情報です(地域防災計画等で使われている図表からの引用ではありません)。

■パターン1:情報の流れを事細かに網羅したもの
このパターンについて、論より証拠ということで何点か紹介してみます。

秋田市の例です。

続いて北海道八雲町の例です。























秋田市も八雲町も着眼点はまさに情報がどの経路を伝って流れてくるかです。秋田の場合は正確を期するためにかえって複雑化した印象を受けます。

それでは別のパターンを見てみます。

■パターン2:情報の受け手を意識した書き方をしているもの
こちらも経路図の一種と言えますが、「住民はどの手段で情報を確認できるか」という視点でまとめられています。


























情報がどう流れてくるかと、どこを見れば情報を入手できるかということも本質的には同じことを言っています。

ただ、視点を住民の行動に置き、どの手段で情報を得ることができるかというパターン2のようなまとめ方にした方がよりわかりやすい資料になっていくのではないかと思います。

【オランダ・日本】よく見る情報の経路図に疑問を投げかけてみると?(その2)

こんにちは。渡邉です。

昨日は災害時の情報伝達経路に関心が高い日本の例と、災害の危険が高まった時に取るべき行動を軸として入手する情報を整理したオーストラリアの事例との対比を行いました(昨日の記事はこちらです)。

では、私が今住むオランダはどうか?という点が今日の話題です。

オランダ政府は危機管理情報のポータルサイト(www.crisis.nl)を用意しています。

まとめられているのは全国を網羅するサイレンの音を聞いたら何をするかという行動基準です。情報の伝達経路は出てきません。spp

ちなみにサイレンは次のような形態で、こちらの記事によると全国に約4,200箇所設置されているそうです。毎月月曜日の正午に全国一斉に吹鳴テストが行われるので、その日にちょうどオランダにいると、基本的にはどこにいてもサイレンの電子音を耳にすることになると思います。
























サイレンは即時に対応する必要がある危険性が迫った時に鳴らされます。

サイレンを聞いたときの行動としては、

1.屋内に避難すること
2.窓やドアを閉めること
3.非常時の放送を担当する地域のラジオやwww.crisis.nlを見ること

の3つが主なものとして掲げられています。
























さて、日本では自治体が設置した防災スピーカーなどを利用した警報システムがあり、Jアラート(全国瞬時警報システム)と呼ばれています。

このシステムの説明には・・・・

















もちろん、情報の伝達経路図が出てきます。

「情報がどう流れるか」というところがないとどうも落ち着かないのが日本、情報の経路は省略して具体的に何をすべきかという点に担当直入に焦点を当てるのがオランダやオーストラリアの方法のようです。



【コラム】よく見る情報の経路図に疑問を投げかけてみると?

こんにちは。渡邉です。

日本の自治体が作成する防災啓発冊子や洪水ハザードマップなどを見ると、次のような情報の伝達図がしばしば掲載されています。















これに対して、例えばオーストラリアのクイーンズランド州が発行する防災パンフレットの場合、そうした図はなく、「チャンネルを合わせる」「インターネットで見る」「警報などを聞く」「そして行動する」という視点から組まれています。


















たったこれだけの絵の違いですが、災害情報の考え方が凝縮されていて割と面白いと思います。

日本の場合は情報の「伝達」が重視されているのでどのルート通って情報が流れてくるかが表現されています。オーストラリアの場合はルートは重視されず、どのメディアを使って何をするかという面から組まれています。

行政の立場から見ると伝達経路を載せたくなる気持ちが分からなくもないのですが、「経路はそこまで重要なのか?」と基本に戻って問いかけていくと、オーストラリアの例のように人の行動を中心として説明を組む方が本質的であるような気がしてきます。



【日本・オーストラリア】過去の水害情報をまとめる意味

こんにちは。渡邉です。

これまで何度か過去の災害記録から学ぶことの重要性について触れてきました。今日はその点に関する日本とオーストラリアの話題です。

さて、過去の水害から学ぶという発想は日本でもオーストラリアでも見られます。

例えば滋賀県のページでは、明治28年(1895年)からの水害事例を以下のように紹介しています。





















一方で、オーストラリアの南オーストラリア州では、オーストラリアの気象庁の州事務所が旗を振って1836年から2005年までの水害事例を集めた本を作成しています。
















滋賀県も南オーストラリア州もかなり過去に遡って水害事例を集めていることが分かります。特にオーストラリアの場合はヨーロッパ人の入植時代からの情報となります(ちなみにオーストラリア連邦ができたのは1901年です)。

なお、極論のように聞こえるかもしれませんが、水害は何度も同じところで繰り返し起きるという意味で、"known risks"(知られたリスク)であると説明されることがあります*1。ただし、すべての人にリスクが知られている訳ではないので、今回紹介した事例のように過去の被災履歴を見せていくことは1つの戦略として有効ではないかと考えています。

(参考文献)
*1:Ben Wisner, Piers Blaikie, Terry Cannon, and Ian Davis共著のAt Risk (Second edition)、P205

(編集後記)お便りありがとうございました他4点

こんにちは。渡邉です。

今日は久々に編集後記です。思いつくまま書いていきます。

1.
大阪府のある市の事例をこのブログで取り上げていたのですが、その市の担当者の方からメールを頂きました。その記事は市の取り組みの良い点を書きつつも、半分以上やんわりとダメ出しをし続けたという内容で、まさかまさか担当の方が気づいて読んでいただけたとは・・・!読んで頂いただけでもうれしかったのですが、私がまとめた指摘事項を今後の参考にしていくとのことでした。非常にありがたいと思います。

2.
先月ふと始めてひとまず終わらせた「避難勧告の基準特集」を冊子状にしてお配りしています。ワードで十数ページの代物です。個人の方や自治体の方にデータをお渡ししていますので、ご関心のある方はこちらからお問い合わせください。






3.
現在私はオランダのロッテルダムに住んでいます。オランダで在留許可を得て滞在していると、地方選挙の参政権が与えられます。水関係の機関の選挙が3月18日にあるらしく、投票券が送られてきました。どのような組織なのかいずれ記事にまとめたいと思います。

4.
花粉症もちですが、オランダの春はそういえば症状がなく平気です。ニーズに基づいて天気予報が組まれるため、日本では花粉の予測が気象ニュースの一部として流れますが、オランダではどうでしょう?一度天気予報の番組を見てみたいと思います。

5.
ニーズに基づいた予報と言えば、桜の開花予測がその例です。これは日本特有の事象かもしれず、気象情報の使われ方を文化的に見る上で面白い事例だと毎年思っています。

【コラム】情報収集の重要性を説くこと以上にすべきこと

こんにちは。渡邉です。

今日は昨日に引き続き、消防庁の検討会資料を基に議論します(消防庁の検討会に関する情報はこちら、昨日のブログはこちらです)。

昨日の記事の要点は、例え情報伝達手段が高度化されて対象者に避難勧告などの情報が届いたとしても、受け手側がどう反応するかという課題が残るという点でした。

災害情報が届くということに加えて、避難の行動をどう引き出すかということが重要と述べたのですが、この点に関して検討会では次のようなたたき台を作っています。以下は第3回検討会の資料1「論点整理(案)」の抜粋です(引用はこちらです)。



















上記を要約すると、事前に行政から住民に周知しておくこととして次のポイントが指摘されています。
1. ハザードマップでの情報伝達手段・避難経路等
2. 避難行動の指針(土砂災害警戒区域外への避難や屋内避難の方法)
3. 自治体等から発信される情報
4. 積極的な情報収集の必要性

今回特に議論したいのは上記で挙げた4つ目のポイントである「情報収集の必要性」です。

「情報収集の必要性」は消防庁の検討会資料で指摘される以前からすでに多くの自治体で実践されています。埼玉県川口市の啓発資料を例とすると、次のようなイラスト付きで情報収集を呼びかけています。
























消防庁の検討会資料や上記のイラストが示すとおり、避難行動を引き出すには情報が不可欠であるという前提があります。ただ、何の情報をどう見るかやその上でどう判断していけばよいのかという具体的なところとなると詰められていないのが実情です。

情報収集は避難等の判断根拠を得るためのあくまで「手段」にすぎません。

以下のイラストにまとめたように、情報収集を通じて雨雲の動きや雨量を追い、それらリアルタイムのデータを過去の災害発生時の雨量などと比べることができれば、「おい!この雨は危なそうだ!」と気づくことが可能になると考えられます。情報は、見るだけではなく使いこなしてこそ意味があるので、情報を使う能力を上げていく観点から政策を練っていくことが国レベルでも自治体レベルでも必要ではないでしょうか。
















【コラム】災害情報の伝達が仮に成功したとしても結果的に意味をなさない例もある

こんにちは。渡邉です。

総務省消防庁の「突発的局地的豪雨による土砂災害時における防災情報の伝達のあり方に関する検討会」(関連ページはこちらです)の第4回目の会合で報告書案が基本的に了承されたと報道がありました。

消防庁のホームページにはその回の資料がまだ掲載されていないので、内容についてはまた改めて書きたいと思います。第3回までの検討会資料を見ていたところ、興味深いものがありましたので紹介したいと思います。

それは、第3回の検討会で参考資料として配られたもので、「災害情報伝達手段の比較」と題されたシートです。




















上で引用した資料の場合、横軸には2015年現在の主な情報伝達手段が列挙されており、縦軸ではその特性が分析されています。

なお、情報伝達手段として検討の対象とされたのは次のものです。
・市町村防災行政無線(屋外スピーカー/戸別受信機)
・緊急速報メール
・自動起動対応の防災ラジオを用いたコミュニティFM
・IP告知システム
・登録制メール
・Lアラートに対応したスマートフォンアプリ
・CATV
・コミュニティFM
・SNS
・市町村ホームページ
・Lアラート情報に対応したテレビ・ラジオ・ホームページ

これらのメディアそれぞれに対し、縦軸で情報量、伝達範囲、自動起動の有無の他、新規整備費用(費用負担なしから約2億7千万円まで)などが評価されています。

このように災害時の情報伝達手段に注目が集まりますが、情報が届いたら人は行動するという前提が背景にあります。

しかし、情報が届くことと避難行動がとられることは別問題です。

以下は以前紹介したイラスト(この回のブログです)の抜粋です。この絵に表したのは若干極端な例かもしれません。しかし、現実問題として仮に情報が届いたとしても何も対策が取られないということがあり得ます。















重要なのは災害情報が届くということに加えて、避難の行動をどう引き出すかということです。この点について消防庁の検討会が何を案として持っていたかについて次回はまとめたいと思います。

(「【コラム】情報収集の重要性を説くこと以上にすべきこと」に続く)

【コラム】避難勧告の基準特集に関するまとめ(情報共有という課題)

こんにちは。渡邉です。

避難勧告に関する特集記事(バックナンバーはこちらです)を15回ほど続けてきましたので、このあたりでひとまずまとめを書きたいと思います。

特集は結果的に次の3部に分けて組んできました。その3つとは、(1)避難勧告等の発表基準に関する問題提起、(2)避難勧告等の基準づくりに役立つ情報、(3)避難勧告等の発表とコミュニケーションです。

それぞれ箇条書きで振り返りたいと思います。

(1)避難勧告等の発表基準に関する問題提起
・避難勧告等の基準づくりについては自治体が最も頭を悩ませる分野の1つであり、様々な基準が考え出されていることが実例からも分かりました。
・特別警報や土砂災害関係の情報など、比較的最近導入された発表情報をうまく織り込ませている例もありました(全く織り込んでいない例もあります)。
・その一方で、特別警報を避難準備、避難勧告、避難指示のどのレベルと結びつけるかはまだ試行錯誤があるようです。
・また、雨量を基準に客観的な指標を作っている自治体もありましたが、肝心の雨量の基準に課題が残っているような例がありました。
・雨量を基準とする場合は、地元気象台に一度相談されるとよいと思われます。

(2)避難勧告等の基準づくりに役立つ情報
・気象台が各市町村の警報基準を作成した際には「散布図」と呼ばれる過去の災害を分析した図を作っています。
・避難勧告等の基準を考える際にはこの散布図情報は大変貴重ですので、気象台から取り寄せることをぜひご検討ください。
・気象台や民間気象会社が実際にどのような予報をいつの段階で発表できるのかなどを押さえた上で基準を作らないと、せっかくの基準が絵に描いた餅となります。
・気象予報にはできることとできないことが含まれるので、そのあたりを気象台の現場レベルの予報官等とすり合わせることが重要です。

(3)避難勧告等の発表とコミュニケーション
・避難勧告等の空振りを恐れずに発表していこうという流れがある中、避難勧告慣れを防ぐための心構えを平常時から伝えている自治体がありました。
・避難指示を発表した市の例では、なぜ避難指示を発表したのかという事後の振り返りを市長が公表する例もありました。
・これらはともに避難勧告等のコミュニケーションを考える上で参考となる事例でした。
・一方で、日本のケースの場合、避難勧告の発表根拠が詳しく…

【コラム】「気象情報利用力」は、防災の要

「気象情報利用力」は、「インターネット上などで手にすることができる気象情報などから、自分や自分の地域にとっての危険性を見抜く力」です。これがあるとないとでは、気象情報の持つ意味が大きく変わります。詳しくはコンセプト(こちらです)をご覧ください。