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6月, 2015の投稿を表示しています

【コラム】低地の国、オランダの子どもの遊び場にあるものは?

こんにちは。渡邉です。 オランダで子どもたちを公園に連れていくと船をモチーフとした遊具がよく目に入ってきます。例えばこうしたものです。 オランダは17世紀~18世紀に海上交易の覇権を握っていたという歴史があるからか、あるいは単にヨーロッパ最大の港があるからか、個人の家にはミニチュアの船が飾ってあったり、大型客船が寄港したことがテレビのニュースになったりするなど、船に対する思い入れがひときわ強い土地の様です。このため船の遊具が多いのかもしれません。 そしてもう一つ。公園でよく目にするものはこちらです。ロッテルダム市内の別々の場所(1枚目は公園、2枚目は幼稚園の一角で休日などに一般開放されている場所)で撮った写真ですが、共通するものは何でしょう? 答えは、「アルキメデスのポンプ」と呼ばれる水を低いところから高いところに送る装置です。子どもたちが取っ手をぐるぐる回すと水が昇ってきて上から出てきます。 オランダは国土の約26%が海水面以下のため、雨水や地下水の強制排水が欠かせません。この仕組みを使った揚水ポンプはオランダでも現役です。以下の動画はロッテルダムからほど近いキンデルダイクと言う場所にあるポンプ場です。 子どもたちが遊ぶ公園に揚水ポンプや河川をモチーフとした遊具がさりげなく設置されているあたりに、何世紀にも渡って水と関わってきたオランダならではの土地柄を感じます。 (関連記事) 【オランダ】子どもも大人も体験を通して河川管理を身近に http://www.wpcd.jp/2014/11/blog-post.html 【オランダ】オランダの小学生が参加した「波に負けない砂山作り」のイベントが面白い http://www.wpcd.jp/2015/06/blog-post_84.html

【オランダ】オランダの小学生が参加した「波に負けない砂山作り」のイベントが面白い

こんにちは。渡邉です。 今日はオランダの防災・環境教育について書いてみます。 オランダは水との何世紀にも渡る格闘の中で国土を作ってきた国です。このオランダが一番恐れている水害は北海からの高潮によるものです。 1953年にオランダ南部で大規模な高潮被害が発生し、1800人以上が犠牲になるという災害が起きました。これを契機に国を挙げた治水計画(デルタプラン)が動き出し、堤防や高潮用のバリアなどが張り巡らされ、オランダでは1953年の災害以降、水害で人命は失われていないとのことです。 海面上昇の見込みや地盤沈下により高潮は今後も大きな課題とされていますが、治水インフラが高度に整備され、すでに半世紀上大規模な水害が国内で発生していないため、人々の災害に対する意識が逆に低いというパラドックスがあります。 このため、水関係の当局は様々な機会を通じて住民の危機意識の向上に取り組んでいます。 その一環として開かれたのが今日ご紹介するイベントです。以下の写真をご覧ください。 これは、2015年6月16日にオランダ国内の8つの小学校が参加して行われた"The Battle of the Beach"という催しの一コマです。子どもたちが海辺で美しい砂の城を作って競い合うというイベントではなく、満ちてくる潮に対して抵抗力の高い砂山が作れたら勝ちというルールです。 工夫を凝らして砂山を守る小学生のチーム(出典は こちら ) 波にさらわれていく砂の城を見て驚く子どもたち(出典は こちら ) 海に近いところに幾重にも堤防を築いたチームもありましたが、どの砂山もすべて波に洗われ跡形もなくなって行くのを見て、子どもたちは視覚的に波の力や堤防の重要性を学んだとのことです。 The Battle of the Beachのホームページ( こちら )には去年のイベントの動画がありますので以下に引用しました。楽しいイベントの中でオランダの防災の根幹に関わる重要なことをさりげなく学べるようにしている所が非常に興味深いと言えるのではないでしょうか。 The Battle of the Beach (関連記事) 【オランダ】子どもも大人も体験を通して河川管理を身近に http://www.wpcd.jp/2014/

【コラム】気象情報に対する反応的な思考方法から脱しよう

こんにちは。渡邉です。 NHKの解説委員室のホームページに「時論公論 『特別警報 3年目の課題』」という記事が掲載されています(該当ページは こちら です)。今日はその記事を基に概念的な議論をしてみたいと思います。 この記事の中では、これまでの特別警報の発表事例に基づいて、気象庁の運用面の課題や情報を受け取る自治体や住民側の理解不足の課題が指摘されています。 興味深い論考ではあるのですが、「気象情報を有意義に使うということは何をさすか」という視点で見ると私と見解が異なってきます。 この記事を書いた解説委員は最後の段落で次のように述べます(下線部は筆者による)。 災害時の情報は命に関わる情報です。 情報を受ける側である自治体と住民が、その情報がでたらどう対応するかがわかっていないと防災に役立てることができません。 上記の主張を図で表すと次のようになります。 この思考方法を読み解くと、「情報が出たら」という前提があり、その情報に反応して行動をすべきであるという枠組みが見えてきます。 この枠組みは一見正しいように見えますが、 情報が適切なタイミングで発表されることを前提としている(実際には予報に不確実性があるのでタイミングよく発表されるとは限らない) 「警報」や「特別警報」といった情報の発表自体に注目が集まる(実際は予測されている雨量や大雨の継続時間など、警報や特別警報の中身の方が防災上重要な意味を持つ) 等の問題点を含んでいます。 「気象情報には反応的に対応するものである」と言うのは防災の常識になっている部分があるので他の使い方が見えづらいかもしれませんが、要は思考方法を逆転させれればいいのです。 このブログでも折に触れて何度も同じことを書いていますが、今住んでいる場所でどのような気象災害(水害や土砂災害等)のリスクがあるかということを出発点とし、その危険性が高まっているかどうかを数ある情報群の中から見抜いていくという使い方が代替案です。 これを図にしてみます。 この思考方法の第一のメリットは、情報待ちの姿勢が排除されていることです。 また、災害が起こり得る雨量などを念頭に情報収集をするので、警報や特別警報が本来伝えたい予測情報の方に注目が集まると思います。