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防災行動計画のストレステストを行う際のチェックポイント例

防災行動計画やタイムライン防災に対する ストレステスト の観点として何が適切だろうか。 チェックポイントの例として考えられることをいくつか列挙してみたい。 --- ■想定される災害は適切か? 計画の前提としている災害が都合のよい条件で設定されていないだろうか。 「この非現実的な規模のことは起こらないだろう」と前提条件から除外し、 結果的に重すぎる代償を払ったのが2011年の原発事故である。 ■意図した情報が手に入らなくても判断ができるか? 行動のトリガーとして利用しようとしていた情報が出なかったらどうするか。 情報は必要な時に必要な形で提供されるとは限らない。 意図しないタイミングでこれまでの判断を覆すような情報が 提供されたらどうするかという問題もある。 ■意思決定の代替策はあるか? 情報を使って判断できる体制が組まれていたとしても 電話をしても責任者と連絡が取れないなど、 何らかの理由で機能不全になることがある。 想定上の意思決定ラインが機能不全となった場合、代替計画はあるだろうか。 ■リードタイムが確保できない状態に耐えれるか? 情報発表が間に合わなかったり、予報よりも状況が早く悪化したりする場合、 何らかの対応ができるだろうか。それともお手上げだろうか。 ■限られたマンパワーで対応できるか? 災害対応に当たるマンパワーが確保できない場合もある。 その際にどう対応するか。何を優先するか。 対応が長期化するという観点は組まれているか。 ロジ面や交代要員の面で計画を組んでいるか。 食事や休息といった面も現実的な問題となるが対応できるか。 ---

防災行動計画やタイムライン防災への事前ストレステストの必要性

防災の行動計画やタイムライン防災を作った場合、 どの事態まで適用できるか、どの時点以降は 緊急対応でやるしかないか見極めておいた方が安全だ。 せっかく作った計画だからという理由だけで固執していると 状況の悪化に対応できない可能性がある。 もとより自然現象を相手にしているので 思ってもないことが起こるのが災害の常だ。 そのような中でも有効な計画とは何であろうか。 ■より実践的な防災行動計画作りの方向性 計画を有効なものにしていく方向性は2つある。 一つは想定外の事態をできるだけ少なくするために できるだけ過酷な条件を前提として計画を練っておくことである。 悪い条件が重なっても、それにも耐えられる 行動計画にしておこうという発想法だ。 高地でトレーニングすることで体を鍛えるアスリートと同じだ。 文字通り、雨風に耐える計画にしていく道である。 もう一つは、理想的に防災対応が進むプランAと 緊急対応用のプランBに分けて計画を整理しておく方法だろう。 プランAが適用できない事態に直面した時には すぐにプランBに切り替えるのである。 ただし、その場合でも重要なのはプランAが適用できる 限界を知っておくことであることは言うまでもない。 ■防災行動計画にストレステストを 金融機関の健全性は、過酷な条件の下で対応しきれるかという 視点から検証されるという。これがストレステストだ。 防災の行動計画やタイムライン防災にも このストレステストの考え方を準用すべきではないか。 過酷な条件下( 想定の例 )で発生する問題点が見えておいた方が 取るべき改善点がわかる。計画の限界も分かる。 計画を有効にしていく方法で2つ方向性を挙げたが、 そのどちらにもストレステスト的な視点は有効だろう。 ■「計画を後から振り返る」では遅い 実際の災害の際に足を掬われない計画としておくためにも、 ストレステストは防災行動計画作成時に導入されるべきだ。 タイムライン防災では災害対応を行なった後の 振り返り(AAR/ After Action Review)を 大切にする としているが、 これは一度計画を運用した後での反省と改善になる。 しかし、初めから失敗の芽が隠れている場合がある。 わざわざ実地で失敗す...

タイムライン防災で前提としない方がよいこと

タイムライン防災に近年注目が集まっているが、 タイムラインを作る上で前提としない方がよいことは見過ごされがちだ。 タイムラインを組む時には次の3つの前提を排除した方がよい。 1. 分かりやすい情報が出るはずだという前提 この先どうなるかについて白黒が はっきり見分けられる情報だけではない。 何が起こるか判断しづらい中途半端な情報や、 はっきりとしない情報も出るはずだ。 それは普通の事である。 不確かな情報を受け取ったときに どう対応するかの指針も含めて検討した方がよい。 2. 十分なリードタイムがあるはずだという前提 タイムラインでは行動のトリガーとする情報が 発表されるタイミングに合わせて誰が何をすべか整理する。 しかし、情報は常に予定された通りに発表されるとは限らない。 遅れて発表されることもあれば、 見込みより早く実況が変わっていくこともある。 「この情報を使って判断すればリードタイムが確保できているはずだ」 そうした思い込みは逆に危険だ。実行しようとしたことを 行なっているうちに時間不足になる。 リードタイムは都度異なることを忘れてはならない。 3.対応が予定通りに完了するはずだという前提 タイムラインではある状況になったら取るべき行動が列挙される。 しかし、そうした行動はいかなる時にも想定された リードタイムの中で実行可能なものであるだろうか? 例えば雨や風が強く、内水氾濫や土砂災害などで 移動が難しくなったときはどうか。 過酷な状況の中で対応できるのかという視点で 見ておくことも必須だと言える。 タイムラインを作る時には優先順位の検討を 情報が分かりづらく、十分なリードタイムもない。 さらに行動を阻害するような要因も重なって すぐに対応が完了しなかもしれない。 そのような時にでもあなたのタイムラインは機能するだろうか? タイムラインは「うまくいくならこれをやろう」という 前提で作られている。A案中心の計画(プランA)だ。 しかし、そのA案が難しい時に運用するB案(プランB)があってよい。 プランBではやるべき事に優先順位をつけておくべきだ。 時間が足りなくなる状況、予定通りに対応が完了しない状況では 優先すべきことをやり、他を切り捨てる...

【考察記事】避難勧告であなたが戸惑うのはなぜなのか?

東日本各地に大きな爪痕を残した2019年台風19号。自治体から伝えられた避難勧告や避難指示を受け取って戸惑ったという声も少ない。そうした戸惑いを引き起こす理由の一つは、自治体が発表する避難勧告のメッセージの中身にあった。 ――― 2019 年 10 月 12 日から 13 日にかけて台風 19 号が関東地方を通過し、東北地方の東海上に抜けた。台風の上陸前から各地で大雨となり、静岡県や関東甲信地方、東北地方にかけて土砂災害や河川の洪水が発生した。 台風接近や河川の増水などに伴って自治体からも避難勧告等が相次いで発表された。総務省消防庁の調べによると、最大で9都県210万人に避難指示が出されたという(毎日新聞の報道より)。 皆さんも、避難勧告や避難指示の発表を受けただろうか。 もしそうであれば、自治体からの発令を知らせる連絡を受け取った時のことを思い出し、自分にこう尋ねてほしい。そのメッセージは、「あなたの避難行動の判断に役立つような十分な情報が含まれていただろうか」と。 自治体が発令する避難勧告や避難指示(本記事では避難勧告や避難勧告等と表記する)はメッセージの内容面で弱みを抱えている。もっと分かりやすく言えば内容が薄い。本記事では、台風 19 号の際に実際に発表された避難勧告を例にしながらこの問題とその解決策を論じていきたいと思う。 江戸川区の避難勧告の問題点 東京都江戸川区も台風 19 号に関連して避難勧告を発令した自治体の一つだ。江戸川区はひとたび荒川や江戸川が決壊したり、高潮が発生したりすると区内のほとんどの区域が長期間水没することが想定されている。災害が発生しそうな時には「ここにいてはダメ」と区のハザードマップで呼びかけたことがこの夏、話題になったばかりだ。 その江戸川区は 10 月 12 日(土)午前 9 時 45 分に「新中川より西側の地域に避難勧告を発令」した。避難勧告の発令を実際に伝えた文が次のものである(江戸川区ホームページより抜粋)。 この避難勧告の主文を以下に抜き出したので注目してほしい。ここには重要な情報が欠けている。それは「なぜ避難勧告を発令したのか」という理由だ。この避難勧告では避難は呼びかけられるものの、何の危機が迫っているのかは一切伝え...

【特別記事】その時、リアルタイムの防災気象情報は何を伝えていたか

2018年7月8日に高知県西部に特別警報が出る前後のタイミングで発表されていた気象情報や避難情報。それらの記録を一部保管していたので、高知県南西部の宿毛市と大月町を主な対象として当時の状況をまとめてみます。記録の羅列のみで考察は含めていません。 ■レーダー(気象庁の高解像度降水ナウキャスト( こちら )から作成) ・下の図は2018年7月未明から大雨となった高知県南西部の様子です。 ・オレンジ色、赤色、紫色の雨雲がかかっている地域に注目してみてください。大雨のエリアです。地図の中で変化する数字はアメダスで観測された10分間雨量です。 ・最初は四万十町に強い雨雲がかかっていますが、アメダスの10分間雨量で見ると5ミリ前後(1時間降れば30ミリ前後の雨)です。 ・状況が悪くなったのは3時すぎごろから。大月町、宿毛市、四万十市、四万十町にかけて伸びた南西から北東へのライン上で大雨になりはじめ、10分間雨量で10〜15ミリ(1時間降れば60〜90ミリ前後の雨)を観測。4時を挟んだ時間帯には10分間雨量で15〜20ミリ(1時間降れば90〜120ミリ前後の雨)となりました。 ・5時半ごろからは、愛媛県宇和島市や松野町にかけて南北に伸びるラインが顕著になり、宇和島市や松野町でも一時的に大雨になっていることが分かります。 ・一方、大月町や宿毛市に隣接した土佐清水市では一部を除き大雨のラインからほんの少し離れているだけでこの時間は大雨となりませんでした。 ・「発達した雨域が1つのところでほとんど動かないように見える形」は大雨を意味すると以前の記事( こちら です)で書きましたが、その形がしっかりと現れています。 ■ナウキャスト情報(気象庁の高解像度降水ナウキャスト( こちら )から作成) ・今後1時間の雨雲の様子を予報するのがナウキャスト情報です(詳しい気象庁による説明は こちら )。 ・7月8日の午前5時15分を起点として、その後の雨雲の動きを示した予想が次のものです。 ・全体的に大雨のラインは東方向に動いていき、大月町や宿毛市から強い雨雲が抜けていく予想が出ていました。 ・上のレーダーと比べてみると分かりますが、結果的には大雨のラインは東に動いていくことはありませんでした。 ・愛媛県の宇和島市や松野町あたりで5時30分前後から大雨となっ...

【コラム】天気予報がコケる時の3要素とタイムライン防災

こんにちは。渡邉です。 この話題は特集記事の中で一度触れたことがある気がするのですが、天気予報、特に雨に関する予想がコケる(当たらない)時のコケ方をまとめてみたいと思います。 「天気予報が当たらない」を分解すると? 雨の予報が当たらないのは、「量」、「場所」、「時間」のいずれかかそれらの組み合わせで外しているからです。 ■量的に当たらない時の例 ・大雨になるといわれていたのに降らなかった ・あまり降らないといわれていたのに蓋を開けたら1時間に100ミリ降った など ■場所的に当たらない時の例 ・降るといわれていたが別のところで降った ・予想よりも雨雲が広がって降らないといわれたところで雨となった など ■時間的に当たらない時の例 ・雨の降り出しが予想よりも早くなった ・ピークは今夜すぎと予想されていたのに、実は今がピークだった など 上の図が語っているように、「量」と「場所」、「場所」と「時間」、「時間」と「量」という組み合わせで外すことや、最悪の場合は「量」「場所」「時間」のすべてで予想通りにならないこともあります。 今日はなぜこのことを再度書いたかというと、「外し方を知っている」というのは気象情報を利用する上での一つの技術と考えられるからです。 逆に、「気象予測がどのように外れるか」ということに注意を払わず、例えば今話題のタイムライン防災(事前にすべきことをリスト化して災害前後で誰が何をするのかを示した行動計画表)を気象情報に基づいてがちがちに組んでしまうと、当たらない気象情報に振り回されるだけになってしまう懸念があります。 タイムラインなどを検討するときは、気象予測の不確実性(量的・場所的・時間的なもの)は避けられないということを念頭に置いて、そのリスクをどう減らすかまで踏み込んだ計画を練っていく必要があります。 気象予測のリスクを減らすための答えはシンプルで、雨の現状と直近の予報(今後1時間の雨雲の動きなど)を気象庁の 高解像度降水ナウキャスト などでしっかりと確認するというオペレーションを組み込む方法が1つ考えられます。 少なくとも気象レーダーを見ていれば、もともとの予報と現状の間のずれ(量・場所・時間的なもの)が分かります。 全体的な予報を頭に入れながら...