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【提言】防災気象情報と自治体の避難情報をリンクさせるには

今日は避難基準づくりに関する現状の問題点と提言をまとめます。

■自治体の避難基準の問題点
以前も避難勧告などの基準について記事にしたことがありますが、日本の自治体が設定する避難勧告や避難指示の基準には、気象や河川の観点から見ると「これはちょっと」というものが少なからずあります。例えば、避難勧告などのタイミングに使うべきではない情報を利用していたり、あるいは根拠が不明瞭な雨量基準が一人歩きしていたりする例です(実例を含めた関連記事へのリンクはこちら)。

なぜそうしたことが起こるのでしょうか?

避難勧告などの基準作りを行うのは自治体の役目です。基準案作りに関わる職員が気象や水文に関する知識や経験を有していれば良いのですが、そうではない場合が少なくありません。基準作りの過程で専門家や専門機関からのインプットが十分に行われないと、結果として「これはちょっと」というものが出てきてしまう訳です。

■専門機関の協力・助言
この問題に対して、国も対策を練っています。

避難勧告などの判断基準の策定に当たっては、災害対策基本法に基づき、河川や気象などの専門機関に助言を得ることができる仕組みがあります。

内閣府防災担当が自治体向けに作成した「避難勧告等に関するガイドライン」でも、「避難勧告等の判断基準を設定する際は、これらの機関(注:河川管理者や気象官署など)の協力・助言を積極的に求める必要がある」としています(以下参照)。

■専門機関から知恵を借りる意義
専門機関への相談は、実務的に非常に重要な意味があります。

私が防災担当として避難勧告や避難準備情報の基準作りを進めた時は、役場の職員だけで相談していても何も進まなかったので、河川管理者(国)から担当者2名を役場に招いて打ち合わせを行いました。

河川管理者の長が参加するような改まった会議ではなく、現場レベルの担当者と膝を突き合わせて考えた場です。結論とすると、1回の打ち合わせで水位に関する基準案が固まりました。

河川管理者の担当者は過去の出水状況を示すハイドログラフを何事例か持ってきてくれました。そして、避難の呼びかけや実際の避難に要する時間を私たちに問いかけました。私たちの希望は、危機的状況になる2-3時間前には住民に避難を呼びかけたいというものでした。

河川事務所が用意した過去事例のハイドログラフを見れば、水位の上昇過程がわかるの…

【特別記事】その時、リアルタイムの防災気象情報は何を伝えていたか

2018年7月8日に高知県西部に特別警報が出る前後のタイミングで発表されていた気象情報や避難情報。それらの記録を一部保管していたので、高知県南西部の宿毛市と大月町を主な対象として当時の状況をまとめてみます。記録の羅列のみで考察は含めていません。

■レーダー(気象庁の高解像度降水ナウキャスト(こちら)から作成)
・下の図は2018年7月未明から大雨となった高知県南西部の様子です。
・オレンジ色、赤色、紫色の雨雲がかかっている地域に注目してみてください。大雨のエリアです。地図の中で変化する数字はアメダスで観測された10分間雨量です。
・最初は四万十町に強い雨雲がかかっていますが、アメダスの10分間雨量で見ると5ミリ前後(1時間降れば30ミリ前後の雨)です。
・状況が悪くなったのは3時すぎごろから。大月町、宿毛市、四万十市、四万十町にかけて伸びた南西から北東へのライン上で大雨になりはじめ、10分間雨量で10〜15ミリ(1時間降れば60〜90ミリ前後の雨)を観測。4時を挟んだ時間帯には10分間雨量で15〜20ミリ(1時間降れば90〜120ミリ前後の雨)となりました。
・5時半ごろからは、愛媛県宇和島市や松野町にかけて南北に伸びるラインが顕著になり、宇和島市や松野町でも一時的に大雨になっていることが分かります。
・一方、大月町や宿毛市に隣接した土佐清水市では一部を除き大雨のラインからほんの少し離れているだけでこの時間は大雨となりませんでした。
・「発達した雨域が1つのところでほとんど動かないように見える形」は大雨を意味すると以前の記事(こちらです)で書きましたが、その形がしっかりと現れています。


■ナウキャスト情報(気象庁の高解像度降水ナウキャスト(こちら)から作成)
・今後1時間の雨雲の様子を予報するのがナウキャスト情報です(詳しい気象庁による説明はこちら)。
・7月8日の午前5時15分を起点として、その後の雨雲の動きを示した予想が次のものです。

・全体的に大雨のラインは東方向に動いていき、大月町や宿毛市から強い雨雲が抜けていく予想が出ていました。
・上のレーダーと比べてみると分かりますが、結果的には大雨のラインは東に動いていくことはありませんでした。
・愛媛県の宇和島市や松野町あたりで5時30分前後から大雨となったことは表現できていませんでした。

■雨量
・アメダス宿毛…

【特別記事】特別警報が出ている地域の方へ

特別警報が発表されているのに、 「どうせたいしたことないさ」は禁物です。


災害の危険性を素早く確認し、 身を守るための行動をとることが必要です。

■特別警報の発表区域を調べる時にみる情報 https://www.jma.go.jp/jp/warn/
■災害の危険性の切迫具合を調べる時にみる情報 ・土砂災害警戒判定メッシュ情報 https://www.jma.go.jp/jp/doshamesh/
・大雨警報(浸水害)の危険度分布 https://www.jma.go.jp/jp/suigaimesh/inund.html
・洪水警報の危険度分布 https://www.jma.go.jp/jp/suigaimesh/flood.html
・河川の水位情報 https://www.river.go.jp/kawabou/ipTopGaikyo.do?init=init&gamenId=01-0101&fldCtlParty=no

【特別記事 】気象情報で現在進行中の大雨に備える

2018年7月8日ごろにかけて、「西日本・東日本で非常に激しい雨が断続的に降り続き、記録的な大雨となるおそれ」(気象庁発表資料より)があり、厳重な警戒が呼びかけられています。
大雨災害に備える上で重要なのは、大雨が起こりうる場所や時間を事前にできる限り把握することです。そのような際に非常に役に立つのが気象レーダーや今後の雨雲の動きです。
しかし、そうした便利なツールを漠然と見るだけでは、なかなか必要な情報が取りづらい面もあります。そこで今回は、レーダーや今後の雨雲の動きから大雨を見抜く方法をまとめてみたいと思います。現在進行中の大雨への備えとしてお役立てください。
■レーダーを見る時のコツ レーダーや今後の雨雲の動きを見る時には、大雨の形が現れていないか確認することが重要です。
大雨の形を具体的に説明すると、「発達した雨域が1つのところでほとんど動かないように見える形」です。次のイラスト図では2014年広島豪雨の際のレーダー画像を例に挙げています。3つのレーダーの図は1時間ごとの様子を示していますが、この日は1時間経っても、2時間経っても、3時間たっても発達した雨雲が同じところに次々とかかり、結果として発達した雨域が1つのところでほとんど動かないようになっています。この大雨により土砂災害が発生し、多くの人命が奪われました。
大雨の形のことを念頭におきながら、2018年7月5日の雨の降り方をレーダー画像で見てみましょう。
次の動画は、雲研究者で、気象庁気象研究所研究官の荒木健太郎さんがご自身のフェイスブックのページ(こちらです)で公開したレーダーのタイムラプス画像です(ご本人の了解を得て掲載しています)。
この中で大雨になっていたところはどこでしょうか?


答えは、強いエコー(オレンジや赤など時間雨量が多いことを示すもの)へばりついたようにかかり続けていたところです。西日本各地でそうした状態となりました。

■大雨を監視するツール
これまでの雨雲の様子と、今後の雨雲の予測は、気象庁のホームページから確認ができます。

例えば「高解像度降水ナウキャスト」のページ(こちらです)では、3時間前からの雨雲の動きと今後1時間の雨雲の動きの予想を見ることができます。



また、同じく気象庁の「今後の雨(降水短時間予報)」のページ(こちらです)では、12時間前から15時間後までの雨雲の様子が分…

【オランダ】オランダで使われていた警報伝達の手段

オランダがその歴史を通じて向き合い、そして恐れてきた災害は高潮災害です。

嵐によってもたらされた高潮は、畑や牧草地を侵食し、堤防を壊し、人々の生命や家畜などを含めた財産を奪ってきました。そのオランダでは過去どのような手段で、高潮に対する警戒を住民に呼びかけてきたのでしょうか。

■音で合図
Schoklandという高潮災害に非常に脆弱だった島(今は周りが干拓されて、陸地の中に島の面影を残しています)では、海沿いに大砲が設置されていました。この大砲は外敵を撃つものではありません。住民に高潮に対する警戒情報を伝えるためのものです。

大砲1発は牛を避難させるタイミングの合図でした。状況が悪化した際には大砲が2発鳴らされます。これは、家財道具や貴重品をより高い2階部分へと移動させるタイミングを意味しました。

■視覚的に合図
そして、次の写真は、19世紀後半から20世紀前半の漁村の様子を再現したZuiderzee Museumという野外博物館で撮ったものです。これは、今風に言えば、高潮注意報・高潮警報を伝える装置です。




この仕組みは、Stormbal(ストーム(嵐)ボール)と呼ばれています。高く建てられたポールの上・中・ 下どの場所に大きな玉が位置するかで危険を示しました。

玉が地面近くにある場合は平常、ポールの高さの半分のところに玉がある場合は牛を避難させるタイミング、ポールの一番上にある場合はすでに高潮が発生しているので、住民は避難せよという情報でした。沿岸沿いに堤防が設置されている場合は増水の状況が堤内からは見ることができないので、人々はこのボールの位置を頼りに判断をしました。

非常時にはStormbalの玉の位置だけではなく、教会の鐘が鳴らされたそうです。

また、Stadsomroeper(新聞などもなく、また識字率も低い時代に公的な知らせを広場などで伝える役職を持った人)も人々に警報を伝えました。住民から住民へ口づて情報が伝達されてもいたそうです。警報の発表自体は公的機関である水管理委員会が担いました。

こうした、大砲や玉の位置で合図を送るという仕組みは一見すると何でもないようなものにも見えますが、運用として行うことを考えると中々大変なことが想像できます。

例えば、警戒の段階に応じて人々がとるべき行動をあらかじめ定め、普及させておかなければならなかったり、警報をタイム…