今日は避難基準づくりに関する現状の問題点と提言をまとめます。 ■自治体の避難基準の問題点 以前も避難勧告などの基準について記事にしたことがありますが、日本の自治体が設定する避難勧告や避難指示の基準には、気象や河川の観点から見ると「これはちょっと」というものが少なからずあります。例えば、避難勧告などのタイミングに使うべきではない情報を利用していたり、あるいは根拠が不明瞭な雨量基準が一人歩きしていたりする例です(実例を含めた関連記事へのリンクは こちら )。 なぜそうしたことが起こるのでしょうか? 避難勧告などの基準作りを行うのは自治体の役目です。基準案作りに関わる職員が気象や水文に関する知識や経験を有していれば良いのですが、そうではない場合が少なくありません。基準作りの過程で専門家や専門機関からのインプットが十分に行われないと、結果として「これはちょっと」というものが出てきてしまう訳です。 ■専門機関の協力・助言 この問題に対して、国も対策を練っています。 避難勧告などの判断基準の策定に当たっては、災害対策基本法に基づき、河川や気象などの専門機関に助言を得ることができる仕組みがあります。 内閣府防災担当が自治体向けに作成した「避難勧告等に関するガイドライン」でも、「避難勧告等の判断基準を設定する際は、これらの機関(注:河川管理者や気象官署など)の協力・助言を積極的に求める必要がある」としています(以下参照)。 内閣府(防災担当)編 平成29年1月版 避難勧告等に関するガイドライン2(発令基準・防災体制編) より ■専門機関から知恵を借りる意義 専門機関への相談は、実務的に非常に重要な意味があります。 私が防災担当として避難勧告や避難準備情報の基準作りを進めた時は、役場の職員だけで相談していても何も進まなかったので、河川管理者(国)から担当者2名を役場に招いて打ち合わせを行いました。 河川管理者の長が参加するような改まった会議ではなく、現場レベルの担当者と膝を突き合わせて考えた場です。結論とすると、1回の打ち合わせで水位に関する基準案が固まりました。 河川管理者の担当者は過去の出水状況を示すハイドログラフを何事例か持ってきてくれました。そして、避難の呼びかけや実際の避難に要する時間を私たちに問いかけました。私