大雨で災害が起きた時に、実際に何ミリ程度降っていたのかを知るには過去の雨量計データを見ることが助けになります(詳しくはこちらのページ参照)。
過去のデータのストックはその地域の長期的な気象特性を知る上で重要な訳ですが、オーストラリアではデータがそろっていないことがままあります。
例えばメルボルンの日単位の降水量データを調べてみる*1と、地点によっては数年分が抜け落ちていたり、年によっては3割程度しか記録できなかったりすることがあります。
論より証拠ということで、オーストラリアの気象庁のサイトでメルボルンの雨量を探すと出てくる9か所のデータを見比べてみます。図の横軸は年、縦軸はデータがどの程度そろっているかを示します(100%がデータが全てある、0%がないという意味)。地点名の後ろのカッコ内の距離は、メルボルン(南緯37.84度、東緯144.98度)からの距離です。
(1)MELBOURNE BOTANICAL GARDENS (1.1 km)
途中で歯抜け部分があります |
(2)MELBOURNE (OLYMPIC PARK) (1.6 km)
こちらは2013年から観測が開始されました |
(3)PRAHRAN (COMO HOUSE) (2.2km)
こちらは1890年代からデータがありますが、 1990年代以降などでデータがない部分があります |
(4)MELBOURNE REGIONAL OFFICE (3.7km)
2010年代のデータに一部欠損があるのが残念ですが、 他はほとんどデータがそろっています |
(5)HAWTHORN (SCOTCH COLLEGE) (4.4km)
1980年代の中盤に年単位の欠測があります |
(6)CAULFIELD (RACECOURSE) (6.6km)
データが概ねそろっています |
(7)FLEMINGTON RACECOURSE (8.4km)
美しい・・・ |
(8)BENTLEIGH (12.8km)
2000年代がバーコード状です |
(9)OAKLEIGH (METROPOLITAN GOLF CLUB) (12.9km)
1990年代と2010年代がもう一歩です |
気象現象は全世界共通ですが、気象現象をどう記録するかは文化などの影響を受けます。
日本では戦前の中央気象台長が「観測精神」という言葉を作り、自分の全人格と全知識をこめて観測にあたるべしと説きました*2。日本の、特に観測に従事されている方などから見て、オーストラリアの例をどう評価されるかが興味深いところです。
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(参考)
*1:過去のデータはこちらのページから検索します。
*2:柳田邦男著『空白の天気図』、P.128