2015年2月25日水曜日

【日本】避難勧告などを出す時は「根拠」をどう扱っていますか?

こんにちは。渡邉です。

昨日に引き続き、2014年の台風11号で避難指示を出した鈴鹿市を例に避難勧告等に関するコミュニケーションを考えていきます。

昨日は、避難指示を発表するに至った台風接近時の状況を市長(災害対策本部長)が振り返った例を紹介しました(こちらの記事です)。

記事で取り上げた市長のメッセージですが、このテキストは「どのような判断根拠で避難指示が出されたか」という一次資料としても読むことができます(メッセージの原文はこちらです)。

市の避難指示の判断に影響した状況を市長のメッセージから抜き出して整理すると、少なくとも以下の7点があったことが分かります(下図の上半分に該当)。

1. 鈴鹿川がはん濫危険水位を超過
2. 台風本体の雨雲の接近でさらなる降水量の予想
3. 重大な意味合いを持つ大雨特別警報の発表
4. 土砂災害警戒情報の発表
5. 日没が迫り、夜間に避難行動をとることの困難性・危険性を考慮
6. 市内各地の河川の増水状況
7. 市内の広い範囲に深刻な被害が生じる可能性が高まったとの認識

2014年台風11号時の避難指示発表前後の流れ





















災害対策本部内では、気象台や河川管理者等からの各種の情報や実況などをまとめた上で、総合的な判断を下して避難指示の発令を決定していることが分かります。

ところが興味深いのは、住民に避難指示の情報が伝達される段階(上図の下半分に該当)になると、先に挙げた理由の中の3番目、「重大な意味合いを持つ大雨特別警報の発表」のみが根拠として提示されました。当時の避難指示の発表状況が以下のシステムに残っていたので引用します。

鈴鹿市のHP上からリンクされているシステム上に
当時の避難の呼びかけが残っています(リンクはこちら
















市がこの段階で判断根拠を取捨選択した背景には、広報伝達文の文字数的な制限や、要点を簡潔に伝えたいという発想などもあると思います。しかし残念なことに、住民の中には「特別警報が発令されたから、市は安直に避難指示を出したんだろう」と受け止め、避難指示を「真に受けなかった」人もいたとのことです(こちらの新聞記事からの引用です)。

こうした誤解や批判は、市の判断根拠が詳しく説明されていたとしたら避けられたものかもしれません。

もちろん、批判を避けることが重要なのではなく、危険が迫った状況にあることを避難勧告や避難指示を通じて呼びかけ、いのちを守ることこそが本質なのですが、その点から言っても根拠の一部省略は避難指示等の説得力をある意味削ぎかねず、慎重な運用が求められる部分ではないかと考えられます。

(「【日本】発生する可能性のある災害が具体的にイメージできない避難勧告の伝え方」に続く)