2015年2月19日木曜日

【日本】半世紀近く前に作られた基準と現行の土砂災害関係の情報をどう避難勧告基準に織り交ぜるか

こんにちは。渡邉です。

避難勧告等の基準についてシリーズでお伝えしています。今日は土砂災害に対する避難の条件について考察します。

土砂災害対策の基準作りで一つのスタンダードとなっているのが、昭和44年(1969年)に出された消防庁の通知です。「前日までの連続雨量」、「当日の日雨量」、「時間雨量の予測」という3要素の組み合わせで基準が練られており、通知から46年近く経っている今でも各自治体で利用されています(下表参照。以下、「消防庁通知基準」と表記します)。ただ、その利用のされ方に若干の違いがあるので、今日はその点をトピックにしたいと思います。


平成14年版防災白書より(こちら













■タイプ1:消防庁通知基準を踏襲するタイプ
例えば宮城県栗原市のケースでは消防庁通知基準をほぼ踏襲して避難準備情報・避難勧告の基準としています。

栗原市地域防災計画より(出典はこちら












■タイプ2:消防庁通知基準を一部利用して組み合わせているタイプ
土砂災害の発生が懸念される気象条件の際には警報を始め、土砂災害警戒情報や土砂災害警戒判定メッシュ情報が発表されます(2つの情報に関する詳しい情報は気象庁のこちらのページをご覧ください)。これらの情報と消防庁通知基準を織り交ぜた形も生み出されています。

織り交ぜ方を詳しくみるとさらにパターンが2つに分かれます。

(1)タイプ2-1:土砂災害に関する各種情報と消防庁通知基準がAND条件で結ばれている例
実物を見て頂いた方が分かりやすいのですが、例えば長崎市の場合は各種情報が発表された上で消防庁通知基準の雨量を満たした場合に避難準備情報や避難勧告が発表される仕組みになっています。

【避難準備情報】大雨警報 AND 消防庁通知基準越え
【避難勧告】土砂災害警戒情報 AND 消防庁通知基準に該当

長崎市地域防災計画ダイジェスト版より(出典はこちら


















(2)タイプ2-2:土砂災害に関する各種情報と消防庁通知基準がOR条件で結ばれている例
こちらは逆に、土砂災害に関する情報と消防庁通知基準がそれぞれ別個のものとして扱われているという例で、どちらかを満たした時に警戒を強めていくという仕組みです。この例としては山口県の防府市の基準などが該当します。

防府市の基準(出典はこちら



















今回の記事のまとめとしてそれぞれのタイプに関する若干のコメントですが、タイプ1の消防庁通知基準のみの運用の場合、今現在整備されている土砂災害警戒判定メッシュ情報等が判断に活かされないという点があります。

タイプ2はANDとするかORとするかに分かれましたが、大雨警報AND消防庁通知基準の場合は警報の中でも土砂災害の危険性が高いケースを見抜きたいという意図があるかと思います。一方で土砂災害警戒情報と消防庁通知基準をANDで結ぶことの必要性については評価が分かれるかもしれません。

消防庁通知基準の各雨量はあくまで「例」とあるので(先に挙げた平成14年版防災白書の表のタイトルに「基準雨量例」とあります)、地域の災害特性等を加味して基準雨量の変更があってもよいのですが、もともと例示された雨量が長崎市の場合も使われています。このため、「例」として挙げられた雨量に縛られすぎるのはどうか、という論点が考えられます。

しかしながら、消防庁通知基準の雨量例が半世紀近く現役で用いられてきたことが示すとおり、一般論としてはある程度妥当な数字が並んでいるとも言えるかもしれません。タイプ2‐2のOR方式では、消防庁通知基準も活かしながら複数の観点から土砂災害の危険性をキャッチするという点で工夫されたものとなっています。

(「【コラム】私が避難勧告の基準づくりに携わるとしたら真っ先に見る情報」に続く)