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【地域の弱さを知る vol.3】大雨注意報・警報の発表基準を手掛かりに

こんにちは。渡邉です。

昨日のブログでは「○年に1回の大雨」をキーワードに
地域の弱さを把握する方法をまとめましたが、
今日は注意報・警報の基準値をもとに議論します。

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■災害が起こる目安としての注意報・警報などの基準値
これまでは「○年に1回の大雨の量」いう視点から地域の弱さについて述べてきました。この他にも、気象台が発表する大雨注意報や大雨警報などの発表基準値が参考になります。

「注意報」と「警報」のそれぞれの定義ですが、気象庁ホームページでは以下のように紹介しています(下線部は筆者による補記で、注意報と警報の相違点を示します)*1。

   注意報:災害が起こるおそれのあるときに注意を呼びかけて行う予報
   警報:重大な災害が起こるおそれのあるときに警戒を呼びかけて行う予報

大雨に関する注意報や警報の発表基準は、降ってくる雨の量や土壌雨量指数を利用して自治体別に定められています。土壌雨量指数とは土壌中に含まれる水分量を基にした指数であり、土砂災害への注意警戒のために2008年5月28日から運用が開始されました。

「災害」と「重大な災害」、「注意」と「警戒」が注意報・警報によってそれぞれ異なるわけですが、「重大な災害」とは何でしょうか。気象庁のホームページでは以下のように定義しています*2。
被害が広範囲に及ぶ、または被害の程度が激甚であり、地域がその社会の一般的な規範(社会通念)によって「重大」と判断するような災害。 (備考)そのような災害が起こるおそれがあるときの気象状況が警報の対象となる。
注意報や警報の基準値は、気象台が自治体ごと(注意報や警報の発表区分ごと)に過去の災害時の被害やその時の気象条件を調査した上で、都道府県と協議され設定されます*3。なお、この手続きを経て設定された注意報基準・警報基準は気象庁のホームページで閲覧することが可能です。
※以下のページからアクセスできます。
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kijun/

注意報基準・警報基準は隣接する市区町村でも大きく違う例があります。

例えば東京の都心部の大雨警報の基準値を見ると*4、基準とする時間的な幅を1時間(R1)とするか、3時間(R3)とするかが異なっています。また、同じR1であっても、新宿区や文京区などは40ミリ、目黒区や渋谷区などは50ミリ、世田谷区と杉並区などは60ミリ、中央区は70ミリとなっています(平成24年6月7日現在)。


東京都心部の大雨警報の基準値(気象庁ホームページから)














基準値は隣接した自治体であっても地域特性によって大きく異なりますので、先ほど紹介したページでお住いの市区町村の基準を確認されることをお勧めします。なお、大きな地震があった場合など、地域の状況に変化があった場合は暫定的な基準値に変更される場合があります。

この注意報基準・警報基準は、地域の弱さを知る目安として非常に有益な情報です。ただし、現在の気象庁の情報提供のあり方では、基準値は示されているものの、その基準を策定するに至った根拠が明らかにされていません。

コミュニケーションの観点から言えば、実はこの根拠の部分を気象情報の利用者と共有することが必要であると考えています。ただ単に警報などの発表基準値を知っておくことよりも、「注意報」や「警報」がそれぞれの地域で具体的にどのような危険性を示すかを把握することの方が本質的に重要であると考えるためです。

(「過去の災害を調べる(その1)」に続く)
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(出典)
*1:気象庁ホームページ 警報・注意報発表基準一覧表
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kijun/
*2:気象庁ホームページ 気象災害に関する用語
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/saigai.html
*3:気象庁ホームページ 警報・注意報、天気予報について
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq10.html
*4:東京都の大雨警報基準(気象庁ホームページより)
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kijun/tokyo/1_tokyo.pdf