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【災害と気象情報 vol.3】気象情報の有効利用のための3つのポイント

渡邉です。こんにちは。

前回のブログ(リンクはこちら)では、「情報の伝達」だけに焦点を当てても、
期待するような効果が表れないことを記しました。

では、求められる防災情報のあり方とは何でしょうか。

今回はこれまで2回の検討を踏まえて、解決策の試案として
情報提供や能力向上のための働きかけ(キャパシティビルディング)の必要性を訴えています。

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■気象情報の利用者のローカルな知識
情報が整備されたり高度化されたりしても、利用者が積極的に利用しなければ意味がないというのが問題の本質であるので、情報の中身や伝達手段に加えて目を向けるべきは利用者という「人」の部分です。

さて、これまでは情報を出す/利用者が利用するという側面を強調した説明をしてきました。

この議論は、災害に関する情報を持つ人や組織から、情報を持たない人や組織への一方通行の流れを前提としています。確かに、気象庁などが持つ情報量と気象を専門としない自治体や個人の利用者が持つ情報量は異なるため、前者と後者のコミュニケーションを考えた場合、欠如している情報を補うという要素が強調されがちです。

「気象情報」という括りで考えれば確かに差があるかもれません。一方で、気象情報の利用者は住んでいる地域に関する情報や個人の置かれた状況などに関する情報を持っています。ローカルな事柄に関する知識という面から見れば、気象情報の利用者は気象関係の専門家よりも豊かな知識があるのです。

この視点を利用しながら再度「人」の問題を考えると、ローカルな知識が活きる形で気象情報が積極的に利用されないことが問題であることが明らかになってきます。

■「どの情報をどう使えば私にとってどう役に立つか」
気象情報の利用者はただ情報を受け取るのではなく、自らが置かれた状況と照らし合わせながらそれを有効に利用していくことが求められるわけですが、そうしたことを可能とするためには国や自治体はどのような働きかけが必要なのでしょうか。

これまでの議論を踏まえた上で1つの試案として考えられるのは、以下の3つの点を他のリスク情報(洪水や土砂崩れのハザードマップなど)に合わせて情報提供していくことではないかと思います。

【1】どういった情報があるのか(What)
【2】その情報が私の状況にとってどう役に立つのか(Why)
【3】どうすればその情報が使えるのか(How)

情報の認知度を上げるのが【1】、気象や災害に関する情報を人々のローカルな知識や洪水リスクなどの情報と融合させる働きをするのが【2】、情報を実際に使いこなすためのノウハウを提供するのが【3】です。

この方法は、予測困難と言われる局地的・突発的な豪雨に対しても有効です。

気象レーダーや雨量計のデータなどで大雨は表現されています。また、気象庁などから警戒を促す情報も発表されます。肝心なのはそれらを使いこなす「人」の部分であり、【1】~【3】に着目することでその利用能力を高めることに結びつきます。

自治体などが発行する防災パンフレットなどの啓発誌では、主に【1】がメインとして扱われ、【2】や【3】は記載があったとしても表面的な記述であったり、各種情報の入手先が書かれている程度だったりが多いのではないでしょうか。

また、防災の講演会が企画されても、「洪水リスクに関する解説」や「防災の心構え」などに主眼が置かれ、うまく行けば具体的な防災行動へ結びつく可能性のある【1】~【3】のポイントには全く触れられないことがあります。

気象情報の有効利用の促進策に関しては、この意味でまだまだ未開拓の部分があります。自治体や国は、気象情報の利用者の能力向上(キャパシティビルディング)に本腰を入れて取り組んでいく必要があると考えています。

(「『情報の収集』に見る受動性の問題」に続く)
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※「気象情報の利用特集」では、上記の1~3を意識した上で気象情報の利用方法を提示していく予定です。