2014年11月16日日曜日

【オーストラリア】個別住居の洪水リスクに関するレポートが簡単に手に入る利点とは

こんにちは。渡邉です。

特集記事を3日間続けましたので、今日は気分転換として、
水害の危険情報を伝える方法について、オーストラリアの事例をもとに
紹介してみたいと思います。

さて、特集記事を書く際に引用した国土交通省の「新たなステージに対応した防災・
減災のあり方に関する懇談会」の第1回懇談会の資料(資料3「欠席委員からの意見について」)を
見ていましたら、以下のような指摘がありました。
「水害のリスクがある場所に住んでいる住民も、その危険がわかって住んでいるのであればまだいいが、全然わかっていない住民もいる。土地・建物の取引時にそういった情報の周知を徹底させることが必要ではないか。」
※引用資料のダウンロードはこちら
http://www.mlit.go.jp/river/bousai/stage/01-03.pdf 
この点に関して、ブリスベンの事例が参考になりますのでご紹介します。

ブリスベン市のホームページでは、任意の住所を入力すると、過去の水害情報や
河川の増水レベルの発生確率が分かるサービスを提供しています。
このサービスは"FloodWise Property Report"と呼ばれていて、無料で利用することができます。
※リンクはこちら

上記のページに住所を入力すると直ぐに結果が分かります。

以下に、ブリスベン市内の何か所かの住所を入れたものをご紹介します。

住所にはgoogle mapのリンクをつけました。なお、例として挙げるいずれの場所も
筆者が土地勘がある場所から選んだのみで、ブリスベンを代表する場所と
いった意味合いなどはありません。

棒グラフで表されたものは、1年のうちに何パーセントの割合で表示されている
水位に達する可能性があるかというものです。オレンジ色のグラフは2011年の
洪水時の浸水深です。緑色のものはその場所の土地の高さを示します。

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■ブリスベン川に面した場所の例(47 Nadine Street, Graceville
土地の高さ(6.8m~7.1m)に対して、1年に2%の確率では浸水深が6.9m、
1%の確率では8.2m達する見込みであることが分かります。
また、2011年の水害時には9.2mに達するなど、
水害のリスクが比較的高い場所であることが伝えられています。
↑ブリスベン川に面した場所の例














※この場所のレポート(HTML版)へのリンク
http://floodinformation.brisbane.qld.gov.au/fio/floodwisesearch/floodwise_property_report/FAM-MAP/property/503925/floodwise_property_report.html?searchAddressCheck=47NADINEST

■小河川に近い場所の例(243 Lambert Road, Indooroopilly
2011年の洪水時の浸水深(8.0m)が、土地の最も低い所(7.8m)を
上回ったことを示しています。こちらも水害リスクが比較的高いと言えます。
↑小河川に面した場所の例














※この場所のレポート(HTML版)へのリンク
http://floodinformation.brisbane.qld.gov.au/fio/floodwisesearch/floodwise_property_report/FAM-MAP/property/473789/floodwise_property_report.html?searchAddressCheck=243LAMBERT

■土地が比較的高い場所の例(180 Gray Street, South Brisbane
河川の近くではありますが、土地の一番低い所(5.8m)でも
年に1%の確率で起こる浸水深(4.3m)以上あることが分かります。
2011年の水害では被害が発生しなかったので表現されていません。
↑土地が比較的高い場所の例















■土地が高い所の例(134 Station Road, Indooroopilly
洪水のリスクがない場所ではグラフなどは表示されません。
↑河川から離れた丘の上にある住宅の例









※この場所のレポート(HTML版)へのリンク
http://floodinformation.brisbane.qld.gov.au/fio/floodwisesearch/floodwise_property_report/FAM-MAP/property/692707/floodwise_property_report.html?searchAddressCheck=WESTVIEW

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以上が"FloodWise Property Report"の例です。
それぞれの場所の洪水リスクが端的に表されています。

個別住居の洪水リスクに関するレポートが簡単に手に入る利点は、
「私にとっての災害リスク」が分かり、事前や事中の対策が立てられる可能性があることです。

2011年のブリスベンの水害以前にこの情報は公開されていたので(当時のレポートの体裁は
こちらのリンクから確認できます)、2011年の洪水時に予測された浸水の深さに関する
情報とこのレポートをもとに得た情報を合わせて実際に防災行動を行った事例もありました*1。

FloodWiseを公開するときには政治的な反対意見があったようですが*2、
自分の家にとってのリスク評価がインターネット上で手軽に手に入るシステムは
個々人の防災対策を進める上で非常に有効ではないかと考えています。

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(参考資料)
*1:FloodWiseを利用したことについて、Queensland Floods Commission of Inquiryの
ヒアリングでこう証言したブリスベン市民がいました。
"We did a Floodwise Property Report and according to the Floodwise Property Report, the rear of our property was 4.5 metres elevation, the front was 6.5 and we were expecting 4 - 5.45 metres, I think, the Brisbane River to rise to based on media reports. So based on that we might have expected about a metre of water through our house, which would have been not so bad, but - so our course of action was to move the stuff from downstairs on the Tuesday morning, start moving it to upstairs, which we thought might be okay."

上記の出典は以下のpp. 1365-1366です。
Queensland Floods Commission of Inquiry. (2011). Transcript of proceedings (Day 15: 5 May 2011, Brisbane). Brisbane, Australia: Queensland Floods Commission of Inquiry.
http://www.floodcommission.qld.gov.au/__data/assets/pdf_file/0015/7260/2011-05-05-QFCI-Day-15-Brisbane.pdf

*2:参考資料へのリンク
http://www.floodcommission.qld.gov.au/__data/assets/file/0015/6450/BCC_Attachment_20_-_Lord_Mayors_media_releases.PDF