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【災害と気象情報 vol.6】情報を能動的に使いこなす重要性

こんにちは。渡邉です。

昨日のブログでは、オーストラリアの自治体が洪水予報を利用する際に、
気象当局からの情報を受動的に利用するのではなく、
能動的に使っている事例があることを紹介しました。

今日は自治体ではなく「個人」に焦点を当てながら、
これまでの2回の議論のまとめをしたいと思います。

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■情報を能動的に使いこなす重要性
日本の場合は気象情報の「発信」・「受信」や「情報の収集」に目が向けられがちですが、オーストラリアの例に目を転じれば、気象当局と利用者が対等な関係を築いて両者が合意できる予報を作りだしたり、自らの洪水モデルを走らせて気象当局の予報を評価することがある訳です。

受動的・能動的というキーワードで気象情報の利用の仕方を再度整理すると、日本の自治体の場合は、より能動的に気象情報を使っていくという点を伸ばしていく必要があります。

同じことは、個人が気象情報を利用する姿勢に対しても言えます。

各種の気象情報がインターネット上などで入手できるようになっていますが、これらの情報が自分の置かれた状況に対して何を意味するか能動的に解釈していくことができなければ、仮に情報が入手できていたとしても意味がない場合があります。

この点について、再度オーストラリアの事例をもとに説明してみたいと思います。

2011年1月11日、クイーンズランド州のGranthamは短時間で起こる水害に見舞われました。2005年からその地に住み、この水害で九死に一生を得る体験をした農家のAさんは河川の水位に関する情報を次のように使いました。

その日、大雨の影響を心配したAさんが気象当局のホームページで水位を確認すると、上流部にある町で測られた水位が12.68mに達していることが目に飛び込んできました。「まさか」という思いからパソコンの不調を疑ったAさんは電源を入れなおして再度確認しましたが、水位は増水した状態を確かに示していました。

Aさんは、その12.68mという数字が彼の身に何をもたらし得るのかを知っていました。2010年12月下旬に同地で何度か発生した小規模な水害の経験から、Aさんの家に影響が出始める水位の基準(4メートル)が頭にあったからです。

危険を確信したAさんは、家族に家の高い所に移るよう指示するとともに、衣服や重要な書類をまとめました。インターネットで増水を初めて確認してから10分~15分後には床上浸水が始まったことから、いかに進行の速い洪水であったかが分かります。その後も水が上がり続け、結果的には天井裏を突き破って屋根へ逃げ、Aさんの家族は事なきを得ました。

Aさんが短時間に発生する水害に対応できた要因の1つは、インターネットで入手した水位に関する情報を自分の状況に当てはめてとらえることができたからです。言い換えれば、Aさんは情報を能動的に使うことができた訳です。

繰り返しになりますが、気象情報は受け取るだけでは意味がなく、地域の状況であったり、個人の状況に照らし合わせた上で利用していくことが必要です。気象情報の利用者が自治体であれ個人であれ、そうした能動性が気象予報の上手な使い方の基本となります。

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(出典)
・Granthamの事例は以下の文献のp. 1044を中心に引用しています。
Queensland Floods Commission of Inquiry. (2011d). Transcript of proceedings (Day 12: 29 April 2001, Toowoomba). Brisbane, Australia: Queensland Floods Commission of Inquiry.