2014年11月13日木曜日

【災害と気象情報 vol.1】局地的・突発的な大雨は「予測困難な事象」か?

こんにちは。渡邉です。

前回のブログでお知らせしたとおり、
今回から特集記事を組んでいきたいと思います。

初回は「局地的・突発的な大雨は『予測困難な事象』か?」をテーマに
2014年の各地での災害を受けた国の動きの紹介や、
その議論の前提に対する考察を行います。

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■2014年の気象災害を受けた国の動き
2014年には各地で大雨による災害が頻発しました。この年の7月には台風8号の影響によって長野県南木曽町で短時間強雨が発生。土石流に4名が巻き込きこまれ、うち 1名の方が亡くなりました。7月末から8月末にかけては、台風12号や台風11号の他、前線や湿った空気の影響で大雨となり、特に8月19日夜から20日明け方にかけて発生した広島市の豪雨では住宅街を襲った土砂災害により74名の方が犠牲となりました。

南木曽町や広島市の災害では豪雨の開始から土砂災害の発生までの時間が短く、危険情報の伝達のあり方が課題として残りました。

こうした事態を受け総務省消防庁は、「市町村が避難勧告等の発令の運用を適切に行い、住民の適切な避難行動を促せるようにする」ため、専門家や自治体の首長、関係省庁からなる「突発的局地的豪雨による土砂災害時における防災情報の伝達のあり方に関する検討会」(以下、「消防庁の検討会」とする)を2014年10月に設置し、「エリアを限定した防災情報の伝達」や「市町村の災害応急体制、平時における住民とのリスクコミュニケーション、政令市等規模の大きな市町村における課題」の議論を進めています。

また、国土交通省も極端化する気象現象や地震、津波、火山への対応として、防災の専門家を中心として「新たなステージに対応した防災・減災のあり方に関する懇談会」(以下、「国土交通省の懇談会」とする)を同年10月に設置し、大規模な災害から「命を守ること」と「社会経済の壊滅的な被害の回避」をテーマに検討を重ねていくこととしています。この懇談会では、南木曽町や広島市の土砂災害を例に挙げ、「避難等に必要な時間を十分に確保できない局地的・集中的な降雨等による災害から命を守る」ことが1つの論点とされています。

■「予測困難な事象」
国が議論の中心に据える突発的で予測が難しい豪雨。この課題を乗り越えるべく、気象学等の分野で研究や技術改良が重ねられると同時に、災害時の情報伝達のあり方について専門家を交えての検討が行われている訳ですが、別の見方からこの「予測困難な事象」を考えると、新たな対処法を考えることもできます。

具体例を挙げて説明してみたいと思います。

先に紹介した国土交通省の懇談会の資料を見てみますと、広島の集中豪雨が発生した際の天気予報と実際の降水量が対比されています。その資料によると、広島地方気象台が2014年8月19日17時に発表した広島県南部の天気予報は次のとおりです。
広島県では、土砂災害や低い土地の浸水、河川の増水、落雷に注意してください。
19日夜の広島県は、南からの湿った空気の影響で曇り、雨や雷雨となり、激しく降る所があるでしょう。
20日は、南からの湿った空気の影響で曇り、雨や雷雨となる所がある見込みです。
この気象情報が発表されてから約10時間後には土砂災害が発生しています。結果的にはこの日、広島市安佐北区のアメダス三入では、1時間雨量、3時時間雨量、24時間雨量それぞれの日最大値が1976年3月以来の観測史上で1位を記録する大雨となりました。

上記の広島地方気象台が発表した予報文の中では「雨」や「雷雨」が「激しく降る所がある」ことが触れられてはいますが、20日未明に起こった集中豪雨をこの予報文の中から想定することは難しく、「予測困難な事象」であったような印象をこの資料から受けるかもしれません。

国土交通省の第1回懇談会資料2、p.28より抜粋

■「予測困難な事象」も直前の予報は出来ている
「予測困難な事象」は確かに存在します。現在の気象予報の技術では、数時間前の段階からピンポイントで大雨を予測することはまだまだ難しい段階です。

その一方で、いま起こっている事象を予測に反映させながら目先数時間程度の気象状況を予想するいわゆる「ナウキャスト」の面に着目すると、災害をもたらすような大雨は捉えられていることがあります。

広島市の土砂災害の事例では、実況や直近の予測で大雨の可能性が高まった段階や観測された段階で「大雨警報」や「土砂災害警戒情報」、「記録的短時間大雨情報」等が気象台から発表されています。また、広島市消防局と契約をした民間の気象会社の防災部門から広島市に対して、大雨への警戒を促す電話連絡を7回入れていていたことが報道されています。

このように、気象台や民間気象会社などは、広島市に大雨を降らせた雨雲の危険性をある段階から認識し、警戒を呼びかけていた訳であり、直前の予報という面から見ると、「予測困難な事象」という指摘は必ずしも正確ではないことが分かります。

(「『情報の伝達』という課題/『情報の伝達』にまつわる課題」に続く)

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(参考資料)
・消防庁の検討会関連資料
http://www.fdma.go.jp/neuter/about/shingi_kento/h26/saigai_dentatsu/index.html
・国土交通省の懇談会に関する関連資料
http://www.mlit.go.jp/river/bousai/stage.html