2014年11月17日月曜日

【災害と気象情報 vol.4】「情報の収集」に見る受動性の問題

こんにちは。渡邉です。

前回までは3回に分けて、
 (1)局地的・突発的な大雨は「予測困難な事象」か?
 (2)「情報の伝達」という課題/「情報の伝達」にまつわる課題
 (3)気象情報の有効利用のための3つのポイント
を書いてきました。災害があると気象情報の伝達が見直されますが、
情報を利用する利用者の能力向上という視点が必要であるとまとめました。

今日からは少しテーマを変えて、「気象や災害関連情報の使われ方」を
考察してみたいと思います。気象情報は受身的に利用するのではなく、
能動的に利用していくことが重要なことを書いていきます。

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■気象情報利用の受動性・能動性
気象情報や災害情報の伝達に関して、利用者がその情報を知らなかったり、参照しようという意向を持たなければ情報は活かされないことを紹介してきました。

情報そのもの存在や情報利用の利点に関する認知度を上げたり、情報の使い方まで立ち入って情報提供をしたりすることが今後求められるわけですが、そもそもの問題点として、日本の場合は気象情報・災害情報が受動的に利用されることが背景としてあります。この点は、海外の事例と比較してみると分かりやすいので、まずは日本の自治体の災害対応例に触れた後、オーストラリアの自治体で気象や洪水に関する予報がどのように使われているかを例として挙げて行きます。

■「情報の収集」が中心となる自治体の災害対応
災害に対する自治体の対応は災害対策基本法の規定に基づいて「地域防災計画」というもので定められています。気象情報や洪水予報などの情報は、地域防災計画では一般的に「情報の収集・伝達」という観点で扱われます。

例えば広島市の地域防災計画(2014年11月現在)*1の場合、「気象情報」は以下のような場面で顔を出します。
第3節 情報の収集及び伝達
災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、迅速かつ的確な応急対策を実施するため、現有の通信連絡手段を最大限に活用し、防災情報(気象情報等や災害情報)等各種の情報を迅速かつ確実に収集、伝達及び報告を行う。(p. 81)
なお、ここでいう「気象情報等」や「災害情報」は一覧表としてまとめられていますのでご紹介しますと以下のとおりです(出典は同計画p. 81)。

気象情報等の種類(広島市地域防災計画より)






















上記の記述や表から明らかなように、自治体の災害対応の枠組みでは、気象情報などのインプット、得た情報に基づいた判断、住民へのアウトプットとしての伝達・周知という流れが想定されています。これは広島市に限らず、自治体の防災対応の仕組みとして一般的です。

「情報を収集して判断する」という構造は一見すると妥当な印象を受けますが、実際の運用という面で見ると欠点が含まれています。

それは、気象情報等の発信者からの情報提供が地域にとって重要な情報であると理解されているか、積極的に使うべき情報として認識されるかという自治体の読解能力が問われることがもちろんありますが、より大きな点としては、自ら気象情報を使って判断していく積極性・能動性が生まれにくいところです。気象情報の利用方法が受動的であると先に述べたのはまさにこの意味です。

情報に対する自治体の受動的な側面は、広島市の豪雨災害を受けた検証の場でも顔をのぞかせています。広島市は外部の専門家や地域の代表を集め、「8.20 豪雨災害における避難対策等検証部会」を設置しました。検証部会は2014年11月に中間報告*2を発表し、興味深い仮説を述べています。

検証部会では、仮に、地域防災計画に沿った手法以外の情報も駆使したとしたら、避難勧告の発表が可能であった時間はいつだったかを検証しました。その結果を踏まえると、現行の防災計画の手順に沿った場合と比べて、45分程度は早く避難勧告を発表できたのではないかと述べています。
仮に、市の管轄以外の雨量データやレーダーの10分毎の雨量の推移などの状況も駆使した場合、また、安佐南区・安佐北区に限って見た場合の避難勧告が必要との危険度認識ができた時間は2時30分頃だと思われる。であるとすると、45分程度は早い段階で発令できたと考えられる。(p. 3)
気象情報を見た場合、情報の更新があれば何らかの形で自治体に送られてくるものもあれば、更新があってもそれを自治体側で監視しなければ気づかないといった種類のものもあります。

前者はたとえば注意報や警報といった類のものであり、後者は雨量データやレーダーなどによって示されるリアルタイムな情報です。また、市域を離れた情報は気象台から市への情報伝達ルートに直接乗ってこないこともあるので、市側が気象庁のホームページなどを利用して自ら情報を取りに行く必要があります。

「情報収集」が「送られてきた情報を集めること」程度にとらえられていたり、実態としてそのレベルであったりすると、災害時の意思決定に重要な意味を持つ情報を見逃してしまうことがあります。

(「気象当局と自治体のコンセンサスで導き出す洪水予報」に続く)

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(引用文献)
*1:広島市地域防災計画
http://www.city.hiroshima.lg.jp/shobou/bousai/01kihon-fuusuigai.pdf
*2: 8.20 豪雨災害における避難対策等検証部会中間報告
http://www.city.hiroshima.lg.jp/www/contents/0000000000000/1415963630100/files/261113tyuukan_houkoku.pdf