こんにちは。渡邉です。
一昨日の特集記事(こちらです)の続編で、
今度は土砂災害をもたらし得る雨量についてまとめました。
ではどうぞ。
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■土砂災害警戒情報の発表基準線と2つの雨量
地域の危険性を雨量面から見ていくという方法で、下水道・中小河川・大きな河川の弱さを分析してきました。次は土砂災害につながる雨量の目安について考えたいと思います。
土砂災害を引き起こす雨量を考える際に考慮しなければならないのは、先行する降雨や長時間に渡る雨によって土壌にしみ込んだ雨量と、短時間の雨量の2軸です。このどちらか、あるいはこれらの組み合わせで土砂災害が発生することが知られているからです。
土砂災害の危険度が非常に高まった際、気象庁と都道府県が共同で発表する土砂災害警戒情報の判断基準も基本的には上記の2軸が利用されています。
下図は土砂災害警戒情報の発表根拠に関する気象庁の概念図ですが、左の2つの図はこの考え方に準拠しています。これらの図の縦軸は短時間の雨量を、横軸にある「長期雨量指標」や「土壌雨量指数」は地中にしみ込んだ雨量をそれぞれ指します。
都道府県によって土砂災害警戒情報の発表の判断方法が若干異なります*1。「AND/OR」方式では、府県の基準と気象庁の基準の両方で発表基準線(上図の青線)を超えると予測された時に土砂災害警戒情報が発表されます(震度5以上の地震が発生した後に暫定基準が制定された場合は、府県又は気象庁のどちらかの方法で基準を超える際に発表されます)。下の連携案方式では、気象庁と都道府県は1つの基準を共有し、発表基準線(青線)を超えると予測された時に土砂災害警戒情報が発表されます。
土砂災害警戒情報の発表基準線は、「土砂災害発生危険基準線(Critical Line)」とも呼ばれます*2。「連携案方式」を採用する都道府県では、5キロ四方という単位で土砂災害発生危険基準線が設定されており、基準線の設定に当たっては、過去の降雨と土砂災害の発生状況等が分析されています*2。基準線を超える場合は、過去の災害事例に照らし合わせて土砂災害発生の危険性が高いことを意味します。
この基準線は、その地域にとっての危険な雨量の目安として考えることができます。ただし、この基準線がわかりやすい形で提示されている場合もあれば、明確に示されていない場合もあります。現在のところ、気象庁のホームページでは各基準線を確認することができません。都道府県によっては図で公表をしているところがあります。
北海道の場合、ほぼリアルタイムで5キロ四方ごとの土壌雨量指数や降雨予測が確認できます。以下の図がホームページで紹介されているサンプル例であり*3、赤色で示された部分は土砂災害の発生基準線を超えた部分です。
お住まいの地域のメッシュを見ておけば、土壌雨量指数と1時間雨量のどういった組み合わせが危険なのかが分かります。なお、場所によってこの組み合わせは大きく変わります。参考として、富良野市と洞爺湖畔の壮瞥町の基準線を以下に引用しましたので比較してみてください。
北海道のホームページで公開されている情報は視覚的に見やすいのですが、すべての都道府県で同じようなレベルの情報が入手できるわけではありません。土砂災害をもたらし得る土壌中の雨量と短時間強雨の組合わせについては現状では把握しづらい部分がありますので、この点に関して今後の改善が望まれます。
また、過去の土砂災害を分析して作成された発表基準線については、設定に至った根拠や分析に利用した過去の災害事例まで明らかにされていると地域の危険度がよりわかりやすくなるのではないでしょうか。
(「危険な雨を知り、大雨を迎え撃つ」に続く)
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(出典)
*1:土砂災害警戒情報・土砂災害警戒判定メッシュ情報
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/doshakeikai.html
*2:国土交通省河川局砂防部と気象庁予報部の連携による土砂災害警戒避難基準雨量の設定手法(案)、p.1
http://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/sabo/dsk_tebiki_h1706.pdf
*3:北海道土砂災害警戒情報システム
http://www.njwa.jp/hokkaido-sabou/others/vocabulary2.do#top
一昨日の特集記事(こちらです)の続編で、
今度は土砂災害をもたらし得る雨量についてまとめました。
ではどうぞ。
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■土砂災害警戒情報の発表基準線と2つの雨量
地域の危険性を雨量面から見ていくという方法で、下水道・中小河川・大きな河川の弱さを分析してきました。次は土砂災害につながる雨量の目安について考えたいと思います。
土砂災害を引き起こす雨量を考える際に考慮しなければならないのは、先行する降雨や長時間に渡る雨によって土壌にしみ込んだ雨量と、短時間の雨量の2軸です。このどちらか、あるいはこれらの組み合わせで土砂災害が発生することが知られているからです。
土砂災害の危険度が非常に高まった際、気象庁と都道府県が共同で発表する土砂災害警戒情報の判断基準も基本的には上記の2軸が利用されています。
下図は土砂災害警戒情報の発表根拠に関する気象庁の概念図ですが、左の2つの図はこの考え方に準拠しています。これらの図の縦軸は短時間の雨量を、横軸にある「長期雨量指標」や「土壌雨量指数」は地中にしみ込んだ雨量をそれぞれ指します。
土砂災害警戒情報の発表判断に用いる指標とその基準 (気象庁ホームページより) |
都道府県によって土砂災害警戒情報の発表の判断方法が若干異なります*1。「AND/OR」方式では、府県の基準と気象庁の基準の両方で発表基準線(上図の青線)を超えると予測された時に土砂災害警戒情報が発表されます(震度5以上の地震が発生した後に暫定基準が制定された場合は、府県又は気象庁のどちらかの方法で基準を超える際に発表されます)。下の連携案方式では、気象庁と都道府県は1つの基準を共有し、発表基準線(青線)を超えると予測された時に土砂災害警戒情報が発表されます。
土砂災害警戒情報の発表基準線は、「土砂災害発生危険基準線(Critical Line)」とも呼ばれます*2。「連携案方式」を採用する都道府県では、5キロ四方という単位で土砂災害発生危険基準線が設定されており、基準線の設定に当たっては、過去の降雨と土砂災害の発生状況等が分析されています*2。基準線を超える場合は、過去の災害事例に照らし合わせて土砂災害発生の危険性が高いことを意味します。
この基準線は、その地域にとっての危険な雨量の目安として考えることができます。ただし、この基準線がわかりやすい形で提示されている場合もあれば、明確に示されていない場合もあります。現在のところ、気象庁のホームページでは各基準線を確認することができません。都道府県によっては図で公表をしているところがあります。
北海道の場合、ほぼリアルタイムで5キロ四方ごとの土壌雨量指数や降雨予測が確認できます。以下の図がホームページで紹介されているサンプル例であり*3、赤色で示された部分は土砂災害の発生基準線を超えた部分です。
各メッシュごとの危険度判定図の例 |
お住まいの地域のメッシュを見ておけば、土壌雨量指数と1時間雨量のどういった組み合わせが危険なのかが分かります。なお、場所によってこの組み合わせは大きく変わります。参考として、富良野市と洞爺湖畔の壮瞥町の基準線を以下に引用しましたので比較してみてください。
富良野市域の危険度判定図 |
壮瞥町域の危険度判定図 |
北海道のホームページで公開されている情報は視覚的に見やすいのですが、すべての都道府県で同じようなレベルの情報が入手できるわけではありません。土砂災害をもたらし得る土壌中の雨量と短時間強雨の組合わせについては現状では把握しづらい部分がありますので、この点に関して今後の改善が望まれます。
また、過去の土砂災害を分析して作成された発表基準線については、設定に至った根拠や分析に利用した過去の災害事例まで明らかにされていると地域の危険度がよりわかりやすくなるのではないでしょうか。
(「危険な雨を知り、大雨を迎え撃つ」に続く)
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(出典)
*1:土砂災害警戒情報・土砂災害警戒判定メッシュ情報
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/doshakeikai.html
*2:国土交通省河川局砂防部と気象庁予報部の連携による土砂災害警戒避難基準雨量の設定手法(案)、p.1
http://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/sabo/dsk_tebiki_h1706.pdf
*3:北海道土砂災害警戒情報システム
http://www.njwa.jp/hokkaido-sabou/others/vocabulary2.do#top