2014年12月7日日曜日

【オーストラリア】災害時に見る気象オタクの社会的役割

こんにちは。渡邉です。

今日のロッテルダムは曇りで時折雨がぱらついています。基本的には毎日この天気が続いています。

さて、今日は、オーストラリアでは災害時に気象オタクが情報発信・情報収集の面で活躍しているという話です。

以前にも少し書きましたが、ブリスベンにはThe Brisbane Storm Chasersという団体があります。このほかにも、オーストラリア全土の気象現象をカバーするJohn's Weather Channel(JWC)という団体があったり、他の都市でも似たようなコンセプトの市民団体があったりします。

彼らのFacebookページを見ると、大雨が予測される時は気象予測モデルの図を利用して解説したり、レーダー画像を使って雨雲はどう動くかをリアルタイムで伝えたりしています。もちろん、雨雲が発達しそうになったら車を飛ばしてその場に駆けつけて写真や動画を撮ったりする団体もあります(なぜそれをやっているか?と聞くのは野暮です。純粋に楽しいからだと思います)。

グループのメンバーが普段何をしているのかは分かりませんが、空港の管制塔から撮った写真などをフェイスブックページで公開していたので(←日本でこれをしたらたぶんアウトですが、オーストラリア的にはOKのようです)、何らかの業務で気象にかかわっている人が多いようです。

ところで、彼らの伝える大雨情報は、「形」よりも「内容」重視です。大雨に対して注意や警戒を呼びかけるときは、書きたいこと(伝えるべきだと思っていること)を書きたいだけ書いています。

先日、ブリスベンで雹や突風が吹いて短時間強雨による災害が発生したのですが、その豪雨をもたらした雨雲の接近を彼らがどう伝えたのかを例に挙げてみたいと思います。以下の図が当時のフェイスブックページへの投稿で、図の下の英文は、投稿の本文を抜き出したものです。

大雨の時の解説の一例(JWCのFacebookページより)














HEADS UP!! BIG DANGEROUS INTENSE STORM MOVING THROUGH SOUTHERN SUBURBS OF BRISBANE IN A NORTH TO NORTH EAST DIRECTION, THIS STORM IS DANGEROUS WE REPEAT THIS STORM IS DANGEROUS AND IS ABOUT TO MOVE THROUGH THE LOGAN AREA AND THROUGH SOUTHERN SUBURBS OF BRISBANE & SHOULD HIT THE CITY AREA BY 5PM AND NORTHERN SUBURBS AND BRISBANE AIRPORT BY 5:30PM *****
本文は全部大文字で書かれ、重要な情報が含まれることをアピールしています。加えて、冒頭で警戒を呼びかけ(HEADS UP!!/ただ事じゃないぞ、といったニュアンス)、この雨雲が危険であるということは繰り返し(THIS STORM IS DANGEROUS WE REPEAT THIS STORM IS DANGEROUS)、各地への影響時間を伝えています。

図の中の細い矢印は雨雲の進行方向を、注釈ではこのエコーが通過する際に起こり得ること(大雨、短時間での洪水、降雹、風向きの急変)を書いています。実際にオーストラリアの気象庁が発表する警戒情報の図(以下)と比べると、彼らのやり方の特長が浮き彫りになってきます。

オーストラリア気象庁が発表する警戒情報
























この短時間強雨によって、ブリスベンでは数センチ大のひょうが降ったり、突風が吹いたりしたので、ビジネス地区の建物のガラスが割れる、高速道路を走っていた車の窓ガラスにひびが入る、小型飛行機がひっくり返るなどの被害がでました。これらの写真は気象マニアのフェイスブックページに順次投稿(メンバーと読者からの投稿による)され、既存メディアが報じる前に被害の状況が明らかになっていました。

オーストラリアの場合、私的な集まりである気象オタクのグループは一定の社会的な役割を災害時に果たしていると言えます。

オーストラリアの気象庁や行政などのいわゆる「公」セクターと民間の気象愛好者の連携は一部で進んでいますが(いつか記事で書こうと思います)、気象愛好者を災害対応にどう生かすかということがオーストラリア国内でも時折議論されていますので、関係はまだまだ模索されているような印象を受けます。

が、そんなことは彼らにとってはおそらくどうでもよく、好きだから(「儲かるから」ではありません)やってきたのであり、これからもやっていくのだろうと思います。

日本のように、気象現象の予想を発表する際に法律的な規制がないことも彼らの活動を後押ししているのですが、損得なしで自分の特技を生かし、結果として社会の役に立つというモデルは注目に値します。

多くの場所から今日も気象マニアの団体が情報を発信しています。こうした人たちがそれぞれの地域で動き、気象情報に特化した市民メディア的な役割を担っているところがオーストラリアの良さの1つかもしれません。