オランダはよく合理的な国だと言われる。
日々の生活の中でも折に触れてそう感じるが、
今回の新型肺炎の政府対応を見ているとその思いを強くする。
オランダでは2020年3月16日から初等教育が閉鎖された。
子どもはリスクが高いグループではないということで
政府は直前まで学校を継続させる意向で粘っていた。
しかし、欧州のほとんどの国がそれまでに学校を閉鎖しており、
世論の声に押し切られる形で学校閉鎖が決まった。
3月15日の夕方のことである。
その後オランダは、新型肺炎の拡大に息をひそめた状態となる。
オランダのICUのベット数を超える患者数が予測されたため、
大急ぎで増床が図られた。医療資源が逼迫するオランダ南部から
比較的ゆとりのある北部まで患者を運んだ。ドイツにもICU患者を輸送した。
幸いにして社会的距離や飲食店休業、自宅勤務などの措置が効果を発し、
通常のICUベット数を少し超える程度で第一波を超えた。
最近のオランダはすっかり弛緩ムードが出ている。
その中での問題の一つは、いつ学校を再開するかだった。
学校を明日から閉鎖するとアナウンスされた当初は4月6日までとされていた。
しかしそれは結果的に延長されることとなるのだが、その理由が興味深い。
オランダ政府は延長措置を取る前に、子どもが感染源となっているかの
調査を行うとアナウンスし、その結果を踏まえて判断するとした。
その調査は短期間で終わるものではない。数週間を要するしっかりとしたものだ。
3月31日に首相はその他の措置延長と合わせる形で
5月休暇まで学校の閉鎖継続を国民に告げた。
そして4月21日、首相らの会見で5月11日より
小学校が再開されることが伝えられた。
この決定の背景には先ほど触れた調査を得た知見がある。
調査結果によると、子ども→子ども、子ども→大人への
感染はごく限られていると判明したという。
調査結果は翌4月22日の国会議員対象の
テクニカルブリーフィングで詳細が当局から報告された。
報告の様子は中継が入っていて視聴ができる。
プレゼンテーション資料も公開されているので
一般市民も確認できる。政策決定の背景が非常にクリアだ。
それにしても、議論をする土台、政策を判断する土台を作るために
時間と予算と人を使って調査することを早々に決め、
その知見に基づいて実際に判断していった道筋は見事だと思う。
そうした合理性が日本の危機管理の文脈で
今まさに必要とされているのではないか。