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2015年6月17日水曜日

【コラム】気象情報に対する反応的な思考方法から脱しよう

こんにちは。渡邉です。

NHKの解説委員室のホームページに「時論公論 『特別警報 3年目の課題』」という記事が掲載されています(該当ページはこちらです)。今日はその記事を基に概念的な議論をしてみたいと思います。

この記事の中では、これまでの特別警報の発表事例に基づいて、気象庁の運用面の課題や情報を受け取る自治体や住民側の理解不足の課題が指摘されています。

興味深い論考ではあるのですが、「気象情報を有意義に使うということは何をさすか」という視点で見ると私と見解が異なってきます。

この記事を書いた解説委員は最後の段落で次のように述べます(下線部は筆者による)。
災害時の情報は命に関わる情報です。情報を受ける側である自治体と住民が、その情報がでたらどう対応するかがわかっていないと防災に役立てることができません。

上記の主張を図で表すと次のようになります。



この思考方法を読み解くと、「情報が出たら」という前提があり、その情報に反応して行動をすべきであるという枠組みが見えてきます。

この枠組みは一見正しいように見えますが、
  1. 情報が適切なタイミングで発表されることを前提としている(実際には予報に不確実性があるのでタイミングよく発表されるとは限らない)
  2. 「警報」や「特別警報」といった情報の発表自体に注目が集まる(実際は予測されている雨量や大雨の継続時間など、警報や特別警報の中身の方が防災上重要な意味を持つ)
等の問題点を含んでいます。

「気象情報には反応的に対応するものである」と言うのは防災の常識になっている部分があるので他の使い方が見えづらいかもしれませんが、要は思考方法を逆転させれればいいのです。

このブログでも折に触れて何度も同じことを書いていますが、今住んでいる場所でどのような気象災害(水害や土砂災害等)のリスクがあるかということを出発点とし、その危険性が高まっているかどうかを数ある情報群の中から見抜いていくという使い方が代替案です。

これを図にしてみます。


この思考方法の第一のメリットは、情報待ちの姿勢が排除されていることです。

また、災害が起こり得る雨量などを念頭に情報収集をするので、警報や特別警報が本来伝えたい予測情報の方に注目が集まると思います。

さらに、注意報・警報・特別警報の発表有無だけではなく、リアルタイムの観測情報や直近の予測(ナウキャスト情報)など数々の情報も活かして防災上の判断が可能になります。危険が迫ってくることが分かるので、各自の状況の中でどう対応したらよいかが検討できるメリットもあります。

上記のモデルの問題点は気象情報の使い手側に一定の情報利用能力が必要なことです。

市町村職員はもちろん、住民がここまで可能なのかという懸念もあるかもしれません。ウェブサイトなどのシステムを使ってこの負担を減らすこともできますが、残念ながらこの観点から統合的に開発されたものは私はまだ見たことがありません。

ただ、この部分についての投資をせずに気象情報の伝達や情報発表の効果を高めていこうとしても、さらに「分りやすい」とされる情報が増えていくだけであったり、あるいはいつまでも堂々巡りの議論が続いたりするだけではないでしょうか。

最後に今回の記事で提唱した思考枠の転換を簡単にまとめてみたいと思います。

先ほども引用したこの一文、私ならこう書き変えます。
災害時の情報は命に関わる情報です。情報を受ける側である自治体と住民が、その情報がでたらどう対応するかがわかっていないとただし、そうした情報の中から自分の身や地域に及ぶ災害の危険性を読み解くことができなければ、防災に役立てることができません。
気象情報に対する反応的な思考方法、この「常識」から脱してみませんか?