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【コラム】FLOODrisk 2016: European Conference on Flood Risk Managementに参加しました

こんにちは。渡邉です。しばらくぶりの記事の更新となりました。

今週は4年に一回、ヨーロッパの都市で開催されているFLOODriskというカンファレンスの週でした。第3回となる今回はフランスのリヨンが会場です。参加者は520名。その6割がフランス・イギリス・オランダからの参加者で、日本人は自分を含めて4名でした。
リヨン市内を流れる河川
災害情報という観点で全体会や分科会で報告された内容を見ていると、単なる河川水位や流域の内水氾濫の予測から一歩進み、「いつ・どこで・どのような危険がどの程度の確度で持って発生しうるか」という点に踏み込み、災害対策に当たる当局や一般の住民にとってより利用しやすい情報提供ができないかという方向性を垣間見ることができました。

また、サイエンス(自然科学や社会科学)と政策、あるいはサイエンスと水害対策の現場の乖離はヨーロッパでも問題視されており、それぞれの機関や個人が持つ知識や経験をいかに共有して全体の対策を進めていくかも重要な論点の一つとされていたのが印象的でした。EU全体の枠組みの中や各加盟国で試行錯誤が行われていますが、オランダはすでに各水防機関を束ねたワーキンググループをユニークな形で運用しており、この分野で一歩先を行っているようです。

ところで、オランダというと水害対策の先進地というイメージですが、「これまでの対策は不十分」と自己否定を行って、これから数十年かけて堤防網の大改造を予定しています。また、高度に整備された堤防などのハード対策で水害を抑えている為、水防関係者も水害対応の経験がない、ましてや住民はあまり水害の事を心配していないというオランダ独自のパラドックスもあります。オランダはこのパラドックスに自覚的で、先に触れた知識の共有化プロジェクトを始め、得意とする仕組みづくりの能力を生かしてシステマティックに課題を解決していこうとしています。

全体会の様子
さて余談ですが、一言で「ヨーロッパ」といっても、水害を引き起こす要因は場所によってそれぞれ異なっていました。

地中海沿岸の地方(スペイン南部、フランス南部、イタリア北部など)は短時間強雨による小中河川の急激な増水(Flash Flood)が大きな課題です。逆に北海に面したイギリス・フランス・ドイツ・オランダなどでは冬の嵐による高潮災害や夏の間の長雨・短時間強雨の組み合わせによる洪水の危険性と隣り合わせです。その他にも、ノルウェーでは増水した際に地質の関係から地下水の水圧が上がり基礎が持ち上げられて建物が傾く、ラトビアは雪解け水による洪水が起こる、ブルガリアはシベリアの高気圧と西からの低気圧、そしてその気圧傾度が影響して黒海に面した場所で高潮災害の被害が出るなどなど、その場所に住んでいる水害対策関係の人から実際に話を聞くとヨーロッパの多様性に改めて驚かされました。

今回のカンファレンスを通じてヨーロッパ全体の中でのオランダの位置づけや、イギリスやフランスなどの水害対策についても知る事ができ、大きな収穫でした。このコンファレンスには自分が作成したツールと、コンセプトを紹介したカードも持参しました。これをネタにしてオランダの研究機関や北欧の水害対策の会社とネットワークができたことも嬉しい収穫です。
「日本人ってキャラクター好きだよね。最新のゴジラ見た?」と
オランダ人の博士課程の大学院生に聞かれもしました