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【世界】ベルギーでは10日先までの洪水予報の詳細が簡単に閲覧できます

こんにちは。渡邉です。 欧州の気象情報/洪水予報等のポータルサイトを巡る旅、第2弾はベルギーです。 WATERINFO.be がそのサイトです。ちなみにこのサイトの表示言語は3種類あります。ベルギー北部はオランダ語圏、南部はフランス語圏のため、蘭語・仏語の他に英語も選ぶことができます。 ベルギーの降水・河川状況等のポータルサイト( こちら です) 基本的なメニューとしては、以下のとおりです。 1. 洪水  1.1  現在の状‘況  1.2  48時間以内の短期の予測  1.3  10日間先までの長期の予測  2. 潮の影響(沿岸部だけではなく、潮の満ち引きで影響を受ける河川も含む)  2.1  現在の状況  2.2  48時間先までの短期の予測  3. 降雨  3.1  現在の状況  3.2  過去から48時間先までの短期の予測  4. 干ばつ  4.1  現在の状況  4.2  10日先までの予測 実際に触ってもらえると分かるのですが、かなり細かい情報が公開されています。特に便利そうだと思うのは、1.3として挙げた10日先までの長期の洪水予報です。実際の例は次のようになります。 10日間の洪水予報の例 一番上のグラフが河川の流域雨量("NU"とあるのは現在の時間です)、2段目が水位、3段目が流量です。 先のことになると不確実性が増す訳ですが、そこはモデル計算結果のばらつきがそのまま表示されているようです(1段目では予測の線が複数あること、2段目・3段目ではグラフの示す幅が広いことを指して言っています)。 「予測には幅があるものだ」という理解を持ちながらこれを利用すれば、概ねいつ・どのような規模で増水する可能性があるのかを前もってつかみ、ある程度対策に活かすことができます。 このレベルの情報が一般に入手しやすい形で公開されているのはベルギーの1つの特長だと思います。

【世界】オーストリアでは「○年に1回の大雨」に関する情報がウェブで簡単に入手できます

こんにちは。渡邉です。 今日から何回か、ヨーロッパ各国のハザードマップや気象データを網羅した地図を見ていきたいと思います。 ちなみに、ただの地図ではなく、ウェブ上のシステムで情報を引き出していくというインタラクションができるものを紹介していきます(各国のインタラクティブなマップのリスト自体は こちら の報告書(p.31)にあります)。なお、「これは便利かもしれない」というのが私の説明のポイントです。 第1弾となる今日はオーストリアです。 Austria: Hochwasser Risikozonierung Austria HORA ( http://www.wassernet.at/ ) オーストリアの上記のマップからは、「○年に1回の雨」という情報を簡単に見ることができます。 オーストリアの洪水や過去の降水等の情報マップ( こちら です) オーストラリア(豪州)の場合は緯度経度を入力して○年に1度の雨を知るというシステムでしたが(詳しくは こちら の回のブログです)、こちらオーストリア(墺)の場合は赤い点々(グリッド)ごとにデータがまとまっています。 赤の点を選択してPDFを見ていくと次のような情報が入手できます(ある地点の例(PDF)は こちら です)。表の縦軸は時間、横軸は○年に1度の「○」にあたる年、表中の数字は雨量で単位はミリです。計算手法によって導き出される数値が異なるので各条件で3パターンずつ挙げられています。 ある地点の○年に1回の雨量 データがこのような形で簡単に手に入ると、たとえオーストリアに行ったことがなくても現地の「大雨」はどの程度のレベルを指すのかなどが定量的に分かるので便利です。

【コラム】災害情報の伝達はいつも注目を集めますが・・・(後編)

こんにちは。渡邉です。 前回( こちら です)は災害情報の「伝達」に注目が集まることを札幌市の事例をあげて紹介しました。 一方で、世界気象機関(WMO)が発行した報告書"Flood Forecasting and Early Warning"では、災害警戒情報のコミュニケーションを考える際のモデルとして以下の図と説明をあげています。 災害警戒情報と行動変容のモデル(WMO報告書より( こちら )) この報告書では災害情報がうまく使われるようになるためには人の行動に着目する必要があることを指摘しています。そのうえで、人々の行動変容をもたらす説得力のあるコミュニケーションには次の3つの段階が必要であると述べます。キーワードの後の説明は例として挙げられているものの訳です。 1.気付き(Awareness):自分たちの置かれている状況に関するリスクに気づいていること  2.理解(Understanding):家族や地域に対して進行する大雨などがどのような影響を及ぼし得るか分かること  3.承諾(Acceptance):警戒情報に従わなければ怪我やいのちの危険があるという見解を受け入れること 情報伝達重視のパターンと上記を比較して1つ事実として言えることは、情報が伝達されればすべて解決するという枠組みではないということです。また、上記の1・2・3どれもが情報を受け取った個々人の対応力を問題としています。 「情報伝達がうまく行けば自動的に人は避難行動をとるはず」という見方を批判的に検証しながら対策を練っていかない限り、災害情報の有効利用に関する議論は表面的なもので終わる可能性があります。 「人の行動変容」についてより積極的に着目していくことが必要ではないでしょうか。

【コラム】災害情報の伝達はいつも注目を集めますが・・・(前編)

こんにちは。渡邉です。 毎日新聞の記事によれば、去年9月の災害を受けて札幌市が避難勧告等の情報伝達のあり方を見直すそうです。いずれリンクが切れると思いますが、該当記事は2015年3月23日配信の「 避難勧告:昨秋集中豪雨被害の札幌 情報伝達方法を見直し 」というものです。 その記事を要約すると次のような中身です。 ・昨年9月に特別警報が出された集中豪雨の際、札幌市から約78万人に避難勧告が出され、緊急速報メールが町内会単位で20回以上配信されたが実際の避難者は約500人だった。  ・災害後のアンケートで町内会名が分からない住民がおよそ40%近くいるなど、町内会を対象とした情報伝達に課題があった。  ・このため、町内会単位ではなく町名単位で情報提供を行っていくほか、広報車や防災ラジオ、警戒が必要な施設への一斉ファックスなどで情報を伝えていくことが検討されている。 全体としてこの記事は「情報伝達経路さえうまく整備されれば避難行動がもっと取られるようになる」という直線的な関係が基本的な前提になっています。 この前提に対する比較として面白いのは、世界気象機関(WMO)が2015年3月に発行した"Flood Forecasting and Early Warning"という報告書です。この報告書には、洪水予報の技術的な点が網羅されているほか、警報などの早期の警戒情報が一般市民によって使われるためのポイントも含まれています。 報告書のリンクは こちら です 結論を先に言えば、この報告書では毎日新聞の記事の論調のようにすべての問題を「情報の伝達」に帰している訳ではありません。詳しくは次回述べたいと思います。 (続く) メモ: WMOの報告書の表紙写真はオランダにあるノアの箱舟のレプリカです。キリンは船の上から大洪水を見ているはずです。

【オーストラリア】冠水した道路の危険性を伝えるドライバーに伝える際の工夫点

こんにちは。渡邉です。 道路が冠水しているところに車が進んでいき、犠牲者が出るということはオーストラリアでもしばしば起こります。 クイーンズランド州政府は"If it's flooded, forget it"というフレーズを用いて道路冠水の危険性を呼びかけています( こちら のページです)。 以下はそのキャンペーンの一環で州政府広告として放送されたものの動画です。「夏に買ったばかりの2.5トンの新車は何でもできると思っていたが・・・」という内容です。起承転結がはっきりしているので、英語が聞き取りづらくても見ていると流れが分かります。 この人の話が本当にあった話かどうかは別として、全体のトーンとしては押しつけがましい説教のようなスタイルを巧みに避けながら道路冠水に向かっていくことの危険性を伝えようとしている好例だと思います。

【コラム】「バックビルディング」の解説が気象庁の予報用語集に復活する日は近いか?

こんにちは。渡邉です。 豪雨をもたらした大雨をニュースなどが報道・解説するときに「バックビルディング」という言葉を聞いたことはありますか? 以前このブログで以下のように取り上げたことがありました( こちら の回です)。 ・・・2014年のユーキャン新語・流行語大賞の候補語に「バックビルンディング」という気象関係の用語が含まれていました。流行語大賞の候補語をまとめたサイト*1を見ると、2014年8月の広島豪雨発生メカニズムの解説から広まっていった言葉であるようです。  マスコミが取り上げた「バックビルディング」の説明(「積乱雲が建ち並ぶビルのように見えることから、バックビルディング現象と呼ばれる」といったようなもの)が、気象研究者から見たらトンデモだった*2というのもコミュニケーションを考える上では興味深いテーマですが・・・ 実際のバックビルディングを見ると「積乱雲が立ち並ぶビルのように」見えますか?右側のイラストを見るとそのように見えなくもないですね。 バックビルディングの例( 気象庁資料 より) さて、このマスコミの誤解が生まれた遠因の1つを昨日たまたま見つけました。気象庁の予報用語が2007年に見直された際、それまでは用語集に含まれていた「バックビルディング」が削除されていたのです。 予報用語見直しのプレスリリースに「天気予報や解説では用いないことから削除した用語」としてつけられたPDF( こちら です)を引用すると次のとおりです。 2007年の気象用語の見直しで削除された用語(気象庁HPより) 削除された「バックビルディング」の定義を見ると、「積乱雲が進行していくその後ろ側で、繰り返し新しい積乱雲が発生する状態。集中豪雨は、このように繰り返し積乱雲が発生することで生じることがある」とあります。これを読むと「バックビルディング」は「積乱雲が立ち並ぶビル」といった見た目ではなく、雨雲の発生のメカニズムに注目した用語であることが分かります。 「バックビルディング」は2014年3月現在の予報用語集( こちら です)にも含まれていません。 流行語大賞の候補用語になるなど昨今の豪雨災害を受けて人目に触れる言葉になってきていることや、大雨の危...

【天気のトリビア】国が違えば気象用語で使われる時間の説明の仕方が変わる例

こんにちは。渡邉です。 2015年3月20日金曜日の午前中はヨーロッパは皆既日食でした。ちょうどその時間には日食のことをすっかり忘れてしまっていましたが、家の中が夜のはじめごろのように一時的に真っ暗になっていたのは今振り返ると日食のせいだったのだと思います。 さて、今日はコラム的に気象用語で使われる時間の概念について書いてみたいと思います。 冒頭の日食の話題の中で使った「夜のはじめごろ」というのは何時から何時頃だと思いますか?天気予報で「夜のはじめごろ」というキーワードが出た時はその言葉が指す時間が決まっています。 気象用語として使われる時間の 伝えられ方( 気象庁HP より) 「夜の初めごろ」は18時頃から21時頃のことを指します。ちなみに、18時~21時という時間帯は2007年に気象用語が広範囲で見直されるまでは「宵のうち」と言われてました(詳しくは こちら です)。 ちなみに、気象用語(Weather Words)として使われる時間の区切り方は地理的又は文化的な要素などが絡んでくるので各国を比較してみると面白いです。 例としてオーストラリアの場合を取り上げると以下のとおりで、日本とは全く異なる時間の区切り方がされています。 以下を見ると、日本でいう「夜の始めごろ」の18時から21時はオーストラリアでは"late afternoon"(~19時)から"evening"(19時以降)にかけてとなります。 オーストラリアの気象庁(Bureau of Meteorology)の 場合の時間の区切り方(出典は こちら です) 気象自体は自然現象ですが、天気予報や気象情報となるとそれが使われる社会の通念であったり文化が色濃く反映される場合があります。気象用語としての「時間の説明の仕方」という面を見ただけでもこの点を垣間見ることができます。

【日本】「逃げ時マップ」を補完する「気象情報利用力」

こんにちは。渡邉です。 2000年東海豪雨から15年近く経ち、その間に旧西枇杷島町は清須市として新市に移行しました。 清須市の現在のホームページを見ると、「逃げ時マップ」という形で個々人の住居形態に応じて避難のタイミングや避難行動のあり方などがまとめられています(該当ページは こちら です)。 以下は庄内川が決壊した場合を想定しての「逃げ時」を示したものです(出典は こちら です)。逃げ時マップ上の掲載事項を順を追って引用していきます。 1.庄内川が決壊するとこの程度浸水すると考えられているので・・・ 庄内川の浸水想定 (清須市逃げ時マップから) 2.私の住まいを考慮すると・・・ 住宅形態別の避難フローの整理の例(清須市逃げ時マップから) 3.いつの段階でどこに避難行動をとるのがいいのかが分かります 条件別行動指針の例(清須市逃げ時マップから) 逃げ時マップは普通の洪水ハザードマップに時間的な要素(浸水が起こる前と起こった後)と空間的な要素(住宅の位置する高さと浸水深との関係)が加えられ、より個々人の生活実態に近い部分に洪水の予想を落とし込んで判断をしてもらおうという試みです。この視点は2000年東海豪雨の時点ではまったくなかったもので、ソフト面の防災対策という面で1つの重要な進歩であると言えると思います。 しかし、実はまだ問題が残っています。その問題は「逃げ時マップ」の中の次の一文に隠れています。 総合的な判断を呼びかける注意文(清須市逃げ時マップから) 引用した最後の部分には、「気象情報・水位情報・避難情報や周辺状況などに注意をはらって、ご自身の判断で行動してください」とあります。 入手可能な気象情報や水位情報、あるいはメディアや行政から伝えられる情報などから水害の危険性を見極めて、行動指針にまとめられた行動を開始することが期待されていますが、この「見極める」という部分がおそらく一番難しいのではないでしょうか。 行動指針はできたものの、その指針に基づいて判断するのは基本的には個人であるため、やはりここでも気象情報等をうまく使いこなすことができるかという「気象情報利用力」が本質的な課...

【日本】「顔見知りの町内会の役員さんに言われたから避難しました」が示唆する様々な問題点

こんにちは。渡邉です。 2000年東海豪雨の事例をここ何回かお伝えしていますが、今回は住民の視点をご紹介します。 本題に進む前に1つご紹介ですが、東海豪雨時のアメダス名古屋の雨量と気象台からの各種情報を一つにまとめたグラフが次のものです。 東海豪雨時の雨量と各種情報の発表状況 西枇杷島町編「平成12年東海豪雨災害記録誌」より これを見ると記録的短時間大雨情報が愛知県下に何度も発表されており、異常な事態が進行してたことが分かります。ちなみにこの日(2000年9月11日)の雨は観測開始以来の日最大1時間雨量や月最大24時間降水量を簡単に上回っています。 アメダス名古屋の観測開始以降の歴代雨量等 (気象庁ホームページより) こうした中で新川・庄内川の水位が上がり、庄内川がいよいよ危ないとなった9月11日23時55分に西枇杷島町では全町を対象とした避難勧告が発表され、町から12地区の地区長を通じて57の町内会に連絡が行きました(避難勧告を発表するまでのいきさつは こちら です)。 私の実家にも避難勧告の連絡が入り家族は近くの小学校に避難しました。その時はどちらかというと町内会の役員さんの顔を立てて避難したというのが実情に近いようです。「庄内川が危ない」ということは聞いたそうですが、「まあ避難所で一泊してくるか」ぐらいの心づもりだったそうです。皮肉にも、その数時間後には新川決壊により水没した西枇杷島町を避難所の窓から見ることになりました。 さて、このエピソードは3つの意味で示唆的です。 1つは新川の危険性が住民側でも見過ごされていた点です。庄内川が危ないという情報が町役場に入り、それを受けて避難勧告が出されたため、「新川も危ない」ということが主題に上りませんでした。このため新川決壊はまさに背後から刺されたものとして行政や町民に受け止められました。 また、2つ目として、桁違いに記録的な大雨となっていても人は案外何もしていないことが指摘できます。私の実家が特に鈍いという訳ではなく、これは大雨による災害で共通する課題だと思います。雨量や水位のデータ、あるいは気象台から発表される情報の数々を災害が発生した後から振り返ってみれば、災害発生に直結する危険性を数多く指摘...

【日本】災害情報は手元にあるだけでは使えないという例

こんにちは。渡邉です。 今日も2000年東海豪雨時の続きです。 旧西枇杷島町の西を流れる新川が計画高水位を超えたのは2000年9月11日19時40分であったのですが、町が避難勧告を発表した直接の契機は町の東側を流れる庄内川が危険な状態になる見込みであると河川管理者から伝えられた後の同日23時50分のことでした。 新川の緊迫した状況に対して積極的な避難が呼びかけられなかった理由には、目が庄内川に向いていたというものに加えて、そもそも河川水位を避難の判断に活かすことができなかったという点も指摘されています。 この点について詳しく調査した結果が吉井博明氏の論文(出典は こちら です)のP128にまとめられているので以下引用します。以下の引用で町長とあるのは当時の西枇杷島町長のことです。 町長は避難勧告をいつ出すべきか迷っていた。庄内川と新川の水位については、テレフォンサービスにより、ある程度入手できたが、水位が何メートルになったところで避難を呼びかけるべきか、天端まであとどのくらいあるのか、いつ越流しそうなのか、といったことがわからず、判断に迷っていたのである。  そこに一本の電話がかかってきた。庄内川工事事務所所長からの電話であった。庄内川がはん濫する危険性があり、避難勧告を出した方が良いのではないかという内容だった。この電話でのやりとりにより、町長は避難勧告を出す踏ん切りがついたという。午後11時55分、町長は全世帯を対象に避難勧告を出した。「庄内川が氾濫する恐れがあるので、避難してください」という内容であった。 「災害情報は認知されただけでは活用されない」というのは災害情報の研究者の指摘です*1。水位に関する情報から町にとっての危険性を読み解くという点は旧西枇杷島町では残念ながらうまく行うことができませんでした。 ただ、当時は洪水ハザードマップが整備される前の段階で、新川・庄内川ともに浸水想定区域図は未整備でした(東海豪雨を受けて水防法が改正され、浸水想定区域図が整備されるようになっていきました)。また、新川は当時、洪水予報の対象河川ではありませんでした(出典は こちら )。 社会制度的にも、町の行政能力的にも、河川管理や気象の面で素人の町長が丸腰で避難を判断しなければならないという状況でした。庄内川工事事務所長という専門...