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【お知らせ】気象情報利用力の向上に特化したツールの自治体向け販売開始について

こんにちは。渡邉です。 以前に少し記事として書いていましたが、住民が気象情報をうまく使って防災対策を行えるようにする小冊子を作成しました。『住民防災ツール』と名付けています。 住民防災ツールは全8ページで、日本向けということでキャラクターを多く取り入れ、読みやすい形にしています。中身は、気象レーダーを使って大雨に気づく方法や、雨量情報を基に地域への影響を把握できるようにデザインしています。 私自身は10年以上前、被災自治体の防災担当者でして、気象に関する知識がない状態で仕事をしていました( この回 のブログで懺悔しました)。このツールにはもちろん、その当時の自分にとってあったらよかったなというノウハウなどを数多く詰め込んでいます。 住民防災ツールは自治体で防災対策に当たられている方にのみ、サンプルをお配りしています(個人向けには制作費の都合上、現在のところ販売しておりません)。 サンプルのお申し込みは、以下の特設ページからお問い合わせください。 ”住民防災ツール” http://www.jyuminbousai.com/ 気象とコミュニケーションデザイン編集の『住民防災ツール』 Designed by Akiko Miki

【コラム】災害の可能性をキャッチする「気象情報利用力」を高めよう

こんにちは。渡邉です。 100回目の記事は、「気象情報利用力」についてです。 これは私の造語です。 「気象情報利用力」は、「インターネット上などで手にすることができる気象情報などから、自分や自分の地域にとっての危険性を見抜く力」です。 大きな気象災害が起こると、災害情報の高度化や情報伝達手段の改善などに焦点が当たりますが、「気象情報利用力」は残念ながらあまり注目されていません。 しかし、私自身はこの「気象情報利用力」は気象防災の要であると考えています。 仮にこの力がないと、最新の気象情報を見ても次のような結果となる懸念があります。 気象情報利用力がないと? 例えば、異常な降雨によって災害の危険性が増していて、気象レーダーや雨量計のデータがそれを裏づけているのにその異常性に気づくことができず、そのまま何もできず被災するという恐れがある訳です。 一方、気象レーダーや雨量計のデータから災害の可能性を読み解くことができるようになれば、違ったシナリオが描けます。 気象情報利用力があると? 「物事はそんなに単純じゃないよ、渡邉くん。」という声もあるかもしれませんが、そうだとしても、「気象情報利用力」があれば、気象情報がうまく利用できないよりはましな状況になると信じています。 気象災害は増えていますが、同時に、利用が可能な気象情報も整備が進んでいます。後はまさにそうした情報を使う「人」の問題の方が実は大きいのではないでしょうか。

【日本】「新たなステージとは何をさすのか」という疑問はどう防げたか

こんにちは。渡邉です。 昨年10月以降、国土交通省では防災などの専門家(委員名簿は こちら )を招き、「新たなステージに対応した防災・減災のあり方に関する懇談会」を計3回開きました。「新たなステージ」とは、昨今の豪雨災害で極端な現象が発生していることや、いつ大噴火が起こってもおかしくないことを指しています(以下の図を参照)。 国土交通省作成資料から http://www.mlit.go.jp/common/001066500.pdf 懇談会での検討を経て、2015年1月20日に国土交通省は報告書を公表し、今後の対応の青写真を描きました(本文は こちら です)。 この、「新たなステージに対応した防災・減災のあり方を提案する」という国土交通省の試みは、皮肉なことに、そもそも「新たなステージとは何か」を巡って議論が錯綜するという経緯を経ました。 第3回(懇談会の最終回で、報告書の素案( こちら です)が提出された回)の議事録( こちら です)を見ると、その点について次のような指摘が委員からなされています。 ・そもそも国民の皆さんがこれを読んでも新たなステージとは何をさすのかわかりません。最近、雨が多いことが新たなステージなのか、最大の外力により天変地異が起こることが新たなステージなのか、国民の皆さんが読んで、納得し、「なるほど、それじゃ、俺たちも行動しなくちゃいけない」と思ってもらえるように書いていただいたほうが結果として良いのではないでしょうか。(p. 8)  ・この素案では、「新たなステージ」の定義がはっきりしていません。「新たなステ ージ」とは我々が経験したことのないような激甚な現象だとイメージしていましたので、私の専門とする火山災害で言えば、カルデラ噴火以外にないと思っていました。しかし、そのことには全く触れておらず、最近 100年程度で我々が経験したような災害くらいのイメージでしかない気がします。ある程度の対応ができる、広域避難の対象となるような火山噴火のレベルで止まっています。(p. 9)  ・「新たなステージ」や「最大クラス」の定義をもう少しきちんと書かないと、一般の国民はわかりません。(p. 10)  ・「新たなステージ...

【コラム】天気予報がコケる時の3要素とタイムライン防災

こんにちは。渡邉です。 この話題は特集記事の中で一度触れたことがある気がするのですが、天気予報、特に雨に関する予想がコケる(当たらない)時のコケ方をまとめてみたいと思います。 「天気予報が当たらない」を分解すると? 雨の予報が当たらないのは、「量」、「場所」、「時間」のいずれかかそれらの組み合わせで外しているからです。 ■量的に当たらない時の例 ・大雨になるといわれていたのに降らなかった ・あまり降らないといわれていたのに蓋を開けたら1時間に100ミリ降った など ■場所的に当たらない時の例 ・降るといわれていたが別のところで降った ・予想よりも雨雲が広がって降らないといわれたところで雨となった など ■時間的に当たらない時の例 ・雨の降り出しが予想よりも早くなった ・ピークは今夜すぎと予想されていたのに、実は今がピークだった など 上の図が語っているように、「量」と「場所」、「場所」と「時間」、「時間」と「量」という組み合わせで外すことや、最悪の場合は「量」「場所」「時間」のすべてで予想通りにならないこともあります。 今日はなぜこのことを再度書いたかというと、「外し方を知っている」というのは気象情報を利用する上での一つの技術と考えられるからです。 逆に、「気象予測がどのように外れるか」ということに注意を払わず、例えば今話題のタイムライン防災(事前にすべきことをリスト化して災害前後で誰が何をするのかを示した行動計画表)を気象情報に基づいてがちがちに組んでしまうと、当たらない気象情報に振り回されるだけになってしまう懸念があります。 タイムラインなどを検討するときは、気象予測の不確実性(量的・場所的・時間的なもの)は避けられないということを念頭に置いて、そのリスクをどう減らすかまで踏み込んだ計画を練っていく必要があります。 気象予測のリスクを減らすための答えはシンプルで、雨の現状と直近の予報(今後1時間の雨雲の動きなど)を気象庁の 高解像度降水ナウキャスト などでしっかりと確認するというオペレーションを組み込む方法が1つ考えられます。 少なくとも気象レーダーを見ていれば、もともとの予報と現状の間のずれ(量・場所・時間的なもの)が分かります。 全体的な予報を頭に入れながら...

【天気のトリビア】ニュージーランドの天気図はとにかく細かい

こんにちは。渡邉です。 今日はトリビア的な内容です。 私がオーストラリアの大学院に留学していた時に、選択科目のうち1科目だけ学部生向けの授業を取りました。それは、気象学と水文学(水の循環に関する総合的な学問で、「すいもんがく」と読みます。私がとった科目では、雨として水が地面に降ってから地中にしみ込み、河川に流れていくまでの部分を習いました)をセットにした科目で、気象学の方はニュージーランドなまりの強い教員でした。 その授業の中で彼が自嘲気味にニュージーランドの天気図を紹介していました。その内容が興味深い点だったので、ここも紹介したいと思います。 下の二つの天気図は、ほぼ同じ時刻の気圧配置を示す地上天気図です。ニュージーランドの気象機関が作成したバージョン(上)とオーストラリアの気象機関が作成したバージョン(下)では見た感じの印象が大きく異なると思います。 ニュージーランドの気象機関が作成した地上天気図*1 オーストラリアの気象機関が作成した地上天気図*2 オーストラリア版は割合にシンプルなのに対し、ニュージーランド版は様々な線が書かれていて非常に細かいことが分かります。 その教員はこの細かさを指して一言、"Kiwi Details"(ニュージーランド人のことをkiwiと言います)と紹介していました。「ニュージーランドの場合はオーストラリアよりも高緯度にあり、極域からの影響を受けることもありとにかく細かい」というのが詳細な天気図の背景にあるとその教員は説明していました。 大気中の気象現象は同じでも、利益関心によって天気図上の表現の仕方が大きく異なります。 気象学自体は自然科学ではありますが、気象現象をどうとらえるか(今回の例でいえば天気図にどう落とすかなど)といった実務的なことは文化や置かれた環境などといった社会的な影響を受けます。オーストラリアとニュージーランドの天気図たった2枚がこのことを雄弁に語っています。 *1: http://www.metservice.com/maps-radar/maps/tasman-sea-nz *2: http://www.bom.gov.au/australia/charts/...

【日本】特別警報の説明時の工夫点(佐賀地方気象台資料より)

こんにちは。渡邉です。 昨日調べ物をしていたら、たまたま佐賀地方気象台の作成した特別警報に関する資料を見て、それ以来頭からそのキャッチコピーが離れないので紹介したいと思います。 それはこちらです↓。 http://www.jma-net.go.jp/saga/bosai/jyouhou/bosai_18.htm 気象庁のキャラクター・はれるんの表情とキャッチコピーとのギャップに惹きつけられもしますが、特別警報を「最後のメッセージ」と位置づけて紹介している点がある意味分かりやすいと感じています。 佐賀地方気象台が作った特別警報に関する資料(以下参照)を見ていくと、「最後」に至る前までに避難が呼びかけられています。 佐賀地方気象台作成資料より筆者加工*1 注目したいのは、「特別警報が発表された時は、すでに避難のタイミングを逃した可能性があります」とはっきり述べていることです。 一般的に、特別警報は、「発表された時にはただちに命を守る行動をとってください」という呼びかけが行われます(例えば以下の気象庁のページ等)。 http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/tokubetsu-keiho/ 佐賀地方気象台の資料も気象庁のホームページも、特別警報が発表されたら命を守る行動をとれという結論は同じです。ただし、「あなたはもう逃げ遅れているかもしれない」ということを前提とした方が、「命を守る行動=避難所へ行く」という図式を崩すことができ、無理な避難に伴う災害を未然に防ぐことができるのではないでしょうか。 (参考) *1: http://www.jma-net.go.jp/saga/bosai/jyouhou/tokubetsu-keiho.pdf

(コラム)これまでの記事トップ9(もうすぐ100回目の記事なので)

こんにちは。渡邉です。 このブログを書き始めたのが11月の下旬のことで、以来更新を続けてきました。間もなく100回なので、これまでの記事からページビューが多かったものの上位9つを紹介します。 まずは第4位から第9位までです。 ▼第4位 【オーストラリア】緯度経度から「○年に1度の雨」の雨量が分かります オーストラリアの気象機関のホームページには便利な機能がついていて、緯度経度を入れるとグラフや表などで〇年に1度の雨の量が分かるということをまとめました。 http://www.wpcd.jp/2014/12/1.html ▼第5位 【オーストラリア】各家屋向けに発表されるブリスベン市の洪水予報 ブリスベンでは水害リスクに関する詳細な分析をインターネット上で確認できることを紹介しました。 http://www.wpcd.jp/2015/01/blog-post_6.html ▼第6位 【災害と気象情報 vol.2】「情報の伝達」という課題/「情報の伝達」にまつわる課題 「気象情報は伝えさえば万事OK」という考え方に対して疑問を投げかけた記事です。 http://www.wpcd.jp/2014/11/blog-post_14.html ▼第7位 【オランダ】子どもも大人も体験を通して河川管理を身近に 個人のフェイスブックページで紹介したこともあって多くの方に見て頂いた記事です。 http://www.wpcd.jp/2014/11/blog-post.html ▼第8位 【無料ツールで災害対策 vol.11】今後の雨雲の動きをインターネットで見る(高解像度降水ナウキャスト その1) 気象庁の高解像度降水ナウキャストを見るときは拡大しすぎると見づらいですという内容でした。 http://www.wpcd.jp/2014/12/vol111.html ▼第9位 【無料ツールで災害対策 vol.3】「雨量に対する地域の弱さ」確認シート 雨量を判断基準にして大雨の影響を整理するのに便利なシート案を作って載せた記事です。 http://www.wpcd.jp/2014/12/vol3.html 見て頂くと分かるのですが、テーマ的には結構バラバラです。続いて第3位はこちらの記事です。 ----...

【オーストラリア】洪水対策アイデアの洪水プロジェクト(Flood of Ideas)の意義

こんにちは。渡邉です。 今日は、水害被害を受けた地域がどのように住民を巻き込んで今後の対策を練っていくかという点に関する事例のご紹介です。 参考として取り上げるのは、このブログでも何度か紹介しているオーストラリアのブリスベンの事例です(ブリスベン関係の過去の記事は こちら からご覧ください)。 2011年の洪水により、ブリスベンの中心市街地や住宅街は浸水被害を受けました。 「どうすれば水害と共存できる街を作れるか」がブリスベン市民にとってのテーマとなったわけですが、突拍子もないものから専門的なものまでどのようなアイデアでもいいので集めようというプロジェクトが実施されました。 プロジェクトの名称は、Flood of Ideasです。訳すとすれば「アイデアの洪水」といったところですが、もちろん洪水(Flood)はブリスベン川の2011年の洪水にかけています。 プロジェクトの実施主体はクイーンズランド州の州立図書館とHealthy Waterways(HPは こちら です)という水環境に取り組むNPO団体です。 Flood of Ideasのサイトでは市民から寄せられた数多くのアイデアを現在も見ることができます。 http://floodofideas.org.au/ アイデアの提案自体は2012年あたりを最後に自然に終了していますが、ウェブサイトを見ると専門家から市民のアイデアまで幅広い声や知識が集まったことが分かります。 こうしたプロジェクトに対しては、実際の政策形成過程や洪水対策に活かされる(活かされた)のかという厳しい見方もできます。 一方で、往々にして<専門家>が主体となり進めていく洪水対策への対抗軸(あるいは補完軸)として、市民の中にある知識をウェブサイト上で共有して川との折り合い方を考える場を作り、被災後の洪水対策立案の中で一定の存在感を示していったことは高く評価されています*1。 (関連情報) *1: http://www.lat27.com.au/assets/Newsletters/2013-03-May-AILA-Awards.pdf

【日本・オランダ・オーストラリア・イギリス】気象機関のtwitterアカウントを見比べてみると?

こんにちは。渡邉です。 気象庁がtwitterを始めたというのが話題になっているので、少し便乗してみたいと思います。 実物はこれです↓ 気象庁ツイッターアカウント https://twitter.com/JMA_kishou 各国の気象機関のtwitterアカウントを見比べてみると単純に面白いです。 ▼オランダ こちらは警報を発表していますが、割と事務的な印象で淡々としています。 https://twitter.com/KNMI ▼オーストラリア オーストラリアもごく最近、twitterでの情報発信を始めました(詳しくはオーストラリア気象庁のこのページです( こちら ))。州単位の発表で、先行して3州が実験的に運用を開始しています。内容は現在のところサイクロンに関する情報をアップデートしていくものに限っていますが、今年前半には発信する情報内容を広くしていく予定とのことです。 https://twitter.com/BOM_Qld ▼イギリス 注意報や警報を伝えるだけというわけではなく、フォロワーが興味を持ちそうな話題を織り交ぜながら情報発信をしています。人の手を介さずに警報などを発信し続ける、Met Office warnings@metofficeUKという アカウント や、嵐に関することに特化したMet Office Storms@metofficestormsという アカウント もあります。 https://twitter.com/metoffice ちなみに最近ではこのような記事が投稿されています。 なぜ寒くなっているかを天気図上で解説する記事 なぜ雪の予報が難しいかという問いと答え ジェット気流の予測動画を使いながら 週末寒くなることの解説 写真や動画を使って、分かりやすくコミュニケーションをとっていこうという意思が感じられます。イギリスは科学コミュニケーションの分野で力を入れ始めた国ということがしばしば言われますが、こ...

【オーストラリア】小規模な自治体とはいえ水害対策は侮れない(その1:洪水マップ)

こんにちは。渡邉です。 今日はオーストラリアの話題です。 昨年5月に参加したThe Australian & New Zealand Disaster and Emergency Management Conferenceという学会(HPは こちら です)で仕入れた資料をオランダに持ってきていました。 その資料とは、クイーンズランド州のNorth Burnettという自治体が作った防災マニュアルです。 North Burnettは人口1万人強で、面積は20,000平方キロです(場所は こちら です)。東京都の面積が2,103平方キロ*1なので、およそ9~10倍の広さに1万人しか住んでいません。 この町は次のような防災冊子を作っています。 North Burnettの防災啓発冊子 なぜこの冊子をわざわざ手元に置いているかというと、洪水マップの見せ方が日本とは異なったからです。 写真の関係で少し見づらいかもしれませんが、North Burnettの洪水マップは「川が〇メートルまで増水したらどこが浸水するか」という視点でまとめられており、増水した川の水位がプロットされています。シナリオとしては水位が14メートル~21メートルまで、1メートル刻みになっています(下の拡大図参照)。 North Burnettの洪水マップ North Burnettの洪水マップ(拡大) ちなみに日本のハザードマップは浸水の深さを色別で示しているタイプのもの(例えば以下の例)が主なのでオーストラリアとは見せ方が異なります。 世田谷区の例 オーストラリアの洪水予報は「〇月〇日〇時ごろ、ピークが〇メートルになる見込み」という発表形態です( この回 のブログ記事を参照ください)。 このため、North Burnettの洪水マップを使えば、「ピークは〇メートル」という洪水予想からどのエリアに影響が出るのかということが簡単に分かります。この洪水マップには個人の住宅まで特定できる情報がついているので、自宅や自宅周辺、避難経路が影響を受ける可能性があるかどうかも知ることができて便利です。 ...