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行動経済学を防災に利用すると同時にすべきこと


水害の際には他の人が避難するのを見て避難を決めるケースが多いため、
「あなたの避難がみんなの命を救う」と呼びかける。

「これまでに、山や急な斜面が崩れる
土砂崩れなどの災害が発生しています。
大雨がもたらす被害について知り、危険が迫った時には、
正しく判断して行動できる力をつけ、災害から命を守りましょう」
という従来型のメッセージに比べると格段に「効果がある」という。

これが広島で進められている「ナッジ」を防災の文脈で利用する
キャンペーンの背景だ。


行動経済学の理論を用いた防災行動への働きかけは注目を集めており、
読売新聞が最近の流れをまとめるような記事も出した。

しかし、「あなたの避難がみんなの命を救う」は
あくまで副次的な要素だと思う。

乱暴な例えを用いれば、見栄えの良い食器に料理を盛った方が
美味しさを感じられると言っているように見える。

しかし、肝心の料理がまずければ見た目が良くてもダメだ。

避難の文脈では、避難勧告等のメッセージがその料理に当たる。
そこが本質であり、ナッジを利用したメッセージはそれをサポートするものだ。

メッセージという核の部分に問題が残ったままでは、
「あなたの避難がみんなの命を救う」方式で盛り上げたとしても
実質的な効果が期待できないのではないか。

過去の記事で指摘した通り、自治体の避難勧告のメッセージには
多くの場合で問題がある。

どこにいる誰が対象か、いつまでにどんな行動を取るべきか、
具体的に何をすべきか、その行動を取らなければどうなるかなど、
危機を伝えるメッセージの中で研究者から有効と指摘されている部分が
ほとんどの場合で伝えられていない。

器以前に、料理がまずいのである。

行動経済学を持ち上げるのもいいが、それだけに止まらず、
情報発表のあり方という本質部分について改善を行なっていくべきだろう。