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【コラム】オランダの水害対策企業のひとこと

先週、ロッテルダムで開催されたThe Resilient City( https://vencaf.nl/the-resilient-city/ )というイベントに参加してきました。 パネルディスカッション参加者の一人はオランダのエンジニアリング会社ARCADIS( https://www.arcadis.com/en/global/ )で水害対策部門を率いる人物でした。ARCADIS社はオランダが培った水害対策の技術をもとに、途上国から先進国まで文字通り世界中で活躍するユニークな会社です。 その彼がパネルディスカッションの最後に「これだけは言っておきたい」という形で話し出した意見が興味深いものだったので、ここで紹介したいと思います。 「水害に対してテクノロジーがあれば解決するということをよく聞くが、テクノロジーの選択肢はすでに揃っている。この意味でテクノロジーはメインの解決策ではない。テクノロジーの不在が問題なのではなく、水害対策の問題はガバナンス(統治)とファイナンス(財政)だ。」 ガバナンスとファイナンス。実際には技術上の開発が待たれる分野もあるとは思いますが、技術を使う側の人・社会・制度の側の問題点がないがしろにできないことを示唆する現場からの発言と私は捉えました。

【コラム】FLOODrisk 2016: European Conference on Flood Risk Managementに参加しました

こんにちは。渡邉です。しばらくぶりの記事の更新となりました。 今週は4年に一回、ヨーロッパの都市で開催されている FLOODrisk というカンファレンスの週でした。第3回となる今回はフランスのリヨンが会場です。参加者は520名。その6割がフランス・イギリス・オランダからの参加者で、日本人は自分を含めて4名でした。 リヨン市内を流れる河川 災害情報という観点で全体会や分科会で報告された内容を見ていると、単なる河川水位や流域の内水氾濫の予測から一歩進み、「いつ・どこで・どのような危険がどの程度の確度で持って発生しうるか」という点に踏み込み、災害対策に当たる当局や一般の住民にとってより利用しやすい情報提供ができないかという方向性を垣間見ることができました。 また、サイエンス(自然科学や社会科学)と政策、あるいはサイエンスと水害対策の現場の乖離はヨーロッパでも問題視されており、それぞれの機関や個人が持つ知識や経験をいかに共有して全体の対策を進めていくかも重要な論点の一つとされていたのが印象的でした。EU全体の枠組みの中や各加盟国で試行錯誤が行われていますが、オランダはすでに各水防機関を束ねたワーキンググループをユニークな形で運用しており、この分野で一歩先を行っているようです。 ところで、オランダというと水害対策の先進地というイメージですが、「これまでの対策は不十分」と自己否定を行って、これから数十年かけて堤防網の大改造を予定しています。また、高度に整備された堤防などのハード対策で水害を抑えている為、水防関係者も水害対応の経験がない、ましてや住民はあまり水害の事を心配していないというオランダ独自のパラドックスもあります。オランダはこのパラドックスに自覚的で、先に触れた知識の共有化プロジェクトを始め、得意とする仕組みづくりの能力を生かしてシステマティックに課題を解決していこうとしています。 全体会の様子 さて余談ですが、一言で「ヨーロッパ」といっても、水害を引き起こす要因は場所によってそれぞれ異なっていました。 地中海沿岸の地方(スペイン南部、フランス南部、イタリア北部など)は短時間強雨による小中河川の急激な増水(Flash Flood)が大きな課題です。逆に北海に面したイギリス・フランス・ドイツ・オランダなどでは冬の嵐による高潮災害や...

【お知らせ】避難勧告や避難指示に関する過去の特集記事ダウンロードについて

こんにちは。渡邉です。 大雨や洪水が予測される事態に対して避難勧告や避難指示の基準をどう設けるか、どのように住民とコミュニケーションを図るかについては、特集記事として事例をもとに以前考察したことがあります。 特別警報の利用の仕方1つをとっても自治体ごとに千差万別であり、多くの事例に問題点が隠れています。今回の水害でも特別警報の扱い方などが問われていますが、平常時からすでに問題を含んでいたものが非常時に顕在化してしまったとも言えます。 また、日本の防災行政や災害時のコミュニケーションの課題として、避難勧告・避難指示を発表した事実(=例えて言えば赤信号をつけたこと)の伝達は重視されますが、避難勧告等を発表した「根拠」の部分(=なぜ赤信号をつけたか)をもとに住民の行動を促していくという視点の欠如が挙げられます。この欠点はアメリカの事例と比較した記事の中で指摘しています。 個別の記事へのリンクは以下の通りです。 これらすべての記事をまとめたPDFについては こちら からダウンロードできますので、今後の水害対策の参考としてご利用を頂ければ幸いです。 ----- 1.避難勧告等の発表基準に関する問題提起 2015年2月13日  【日本】その避難勧告の発表基準に問題はありませんか? 2015年2月14日  【日本】避難勧告等の基準を考える上での論点(愛知県A町) 2015年2月15日  【日本】内水氾濫を対象とした避難勧告等の基準に対する考察(静岡県Y市) 2015年2月16日  【日本】記録的短時間大雨情報を避難勧告のトリガーにしたケースの考察 2015年2月17日  【日本】避難勧告等の基準に大雨の特別警報をどう取り入れるか(愛知県K市) 2015年2月18日  【日本】避難勧告等の基準に大雨の特別警報をどう取り入れるか(山形県S市) 2015年2月19日  【日本】半世紀近く前に作られた基準と現行の土砂災害関係の情報をどう避難勧告基準に織り交ぜるか 2.避難勧告等の基準づくりに役立つ情報 2015年2月21日  【コラム】私が避難勧告の基準づくりに携わるとしたら真っ先に見る情報 2015年2月22日  【コラム】私が避難勧告の基準づくりに携わるとしたら2番目にやること 3.避難勧告等の発表とコミュニケーション 2...

【プレゼン】日本の防災文化は気象情報利用力で生まれ変わる

こんにちは。渡邉です。 今日はいつもと少し趣向を変えて、Preziというプレゼンソフトを使って気象情報利用力の紹介です。 以下のプレゼンテーションの題名は少し大風呂敷を広げた形ですが、全くの誤りではないだろうという思いがあるのでそのままにしました。 Preziはぐるぐる動かせるので作っていると若干酔うのと、日本語入力が不安定なのが玉にキズですが、動きがある方がやはりわかりやすいので、今後何回かのシリーズにしてみたいと思います。 (うまく見られない方はこちらからどうぞ) https://prezi.com/repqbcnbicnm/presentation/?utm_campaign=share&utm_medium=copy

【コラム】オランダやオーストラリアの水害対策事例に基づいて意見交換を行いました

こんにちは。渡邉です。 気象とコミュニケーションデザインの事業では、日本に向けて気象情報の利用方法の提案を行っている一方で、水害対策の先進地として知られるオランダにいることのメリットも活かしてオランダ視察の支援も行っています。 先月後半、私にとって記念すべき最初のお客様とアムステルダムでお会いしました。 私のこのブログを見てオランダ訪問に併せて意見交換をしてみたいとおっしゃっていただいたのは、NTTデータの前社長(現在は相談役)である山下徹氏です。 山下氏は総務省が平成26年に設置した「災害時等の情報伝達の共通基盤の在り方に関する研究会」(詳しくは こちら )の座長を務められた他、内閣官房ナショナルレジリエンス(防災・減災)懇談会(詳しくは こちら )等にも参加されるなど、日本の防災施策に関して企業の立場から積極的に貢献されていらっしゃる方です。 アムステルダムにて山下徹氏と筆者(右) 意見交換の中では、日本の防災対策の行政依存性が話題になりました。 私自身、2000年代前半に地方自治体の防災行政を担う立場にいたことがあり、こうした構造的な問題には感覚的に気づいていました(余談ですが、「行政」も「地域」や「住民」に依存していると感じていました)。ただ、「行政依存ではないあり方」の具体像を明確にイメージできるようになったのはごく最近のことで、オーストラリアの自治体や市民がどのように災害に対応するかという知見を豪州留学(2013年~2014年)で得た時です。 日本の防災を分析するには比較する軸が必要だというのが私の個人的な経験からの結論です。 比較軸としてオーストラリアやオランダがどこまで有効かという面もありますが、両国の事例紹介を元とした山下氏との約2時間の話し合いは話題が尽きることなく瞬く間に過ぎました。 なお、意見交換の参考用にオランダの堤防だけを網羅した300ページを超える大型本( こちら です)を持参しました。1ページ1ページ、山下氏に丁寧に見て頂けたのがとても印象に残っています。 最後になりますが、この意見交換会は、私自身にとっても日本の防災の課題を改めて認識することができた貴重な...

【コラム】低地の国、オランダの子どもの遊び場にあるものは?

こんにちは。渡邉です。 オランダで子どもたちを公園に連れていくと船をモチーフとした遊具がよく目に入ってきます。例えばこうしたものです。 オランダは17世紀~18世紀に海上交易の覇権を握っていたという歴史があるからか、あるいは単にヨーロッパ最大の港があるからか、個人の家にはミニチュアの船が飾ってあったり、大型客船が寄港したことがテレビのニュースになったりするなど、船に対する思い入れがひときわ強い土地の様です。このため船の遊具が多いのかもしれません。 そしてもう一つ。公園でよく目にするものはこちらです。ロッテルダム市内の別々の場所(1枚目は公園、2枚目は幼稚園の一角で休日などに一般開放されている場所)で撮った写真ですが、共通するものは何でしょう? 答えは、「アルキメデスのポンプ」と呼ばれる水を低いところから高いところに送る装置です。子どもたちが取っ手をぐるぐる回すと水が昇ってきて上から出てきます。 オランダは国土の約26%が海水面以下のため、雨水や地下水の強制排水が欠かせません。この仕組みを使った揚水ポンプはオランダでも現役です。以下の動画はロッテルダムからほど近いキンデルダイクと言う場所にあるポンプ場です。 子どもたちが遊ぶ公園に揚水ポンプや河川をモチーフとした遊具がさりげなく設置されているあたりに、何世紀にも渡って水と関わってきたオランダならではの土地柄を感じます。 (関連記事) 【オランダ】子どもも大人も体験を通して河川管理を身近に http://www.wpcd.jp/2014/11/blog-post.html 【オランダ】オランダの小学生が参加した「波に負けない砂山作り」のイベントが面白い http://www.wpcd.jp/2015/06/blog-post_84.html

【オランダ】オランダの小学生が参加した「波に負けない砂山作り」のイベントが面白い

こんにちは。渡邉です。 今日はオランダの防災・環境教育について書いてみます。 オランダは水との何世紀にも渡る格闘の中で国土を作ってきた国です。このオランダが一番恐れている水害は北海からの高潮によるものです。 1953年にオランダ南部で大規模な高潮被害が発生し、1800人以上が犠牲になるという災害が起きました。これを契機に国を挙げた治水計画(デルタプラン)が動き出し、堤防や高潮用のバリアなどが張り巡らされ、オランダでは1953年の災害以降、水害で人命は失われていないとのことです。 海面上昇の見込みや地盤沈下により高潮は今後も大きな課題とされていますが、治水インフラが高度に整備され、すでに半世紀上大規模な水害が国内で発生していないため、人々の災害に対する意識が逆に低いというパラドックスがあります。 このため、水関係の当局は様々な機会を通じて住民の危機意識の向上に取り組んでいます。 その一環として開かれたのが今日ご紹介するイベントです。以下の写真をご覧ください。 これは、2015年6月16日にオランダ国内の8つの小学校が参加して行われた"The Battle of the Beach"という催しの一コマです。子どもたちが海辺で美しい砂の城を作って競い合うというイベントではなく、満ちてくる潮に対して抵抗力の高い砂山が作れたら勝ちというルールです。 工夫を凝らして砂山を守る小学生のチーム(出典は こちら ) 波にさらわれていく砂の城を見て驚く子どもたち(出典は こちら ) 海に近いところに幾重にも堤防を築いたチームもありましたが、どの砂山もすべて波に洗われ跡形もなくなって行くのを見て、子どもたちは視覚的に波の力や堤防の重要性を学んだとのことです。 The Battle of the Beachのホームページ( こちら )には去年のイベントの動画がありますので以下に引用しました。楽しいイベントの中でオランダの防災の根幹に関わる重要なことをさりげなく学べるようにしている所が非常に興味深いと言えるのではないでしょうか。 The Battle of the Beach (関連記事) 【オランダ】子どもも大人も体験を通して河川管理を身近に http://www.wpcd.jp/2014/...

【コラム】気象情報に対する反応的な思考方法から脱しよう

こんにちは。渡邉です。 NHKの解説委員室のホームページに「時論公論 『特別警報 3年目の課題』」という記事が掲載されています(該当ページは こちら です)。今日はその記事を基に概念的な議論をしてみたいと思います。 この記事の中では、これまでの特別警報の発表事例に基づいて、気象庁の運用面の課題や情報を受け取る自治体や住民側の理解不足の課題が指摘されています。 興味深い論考ではあるのですが、「気象情報を有意義に使うということは何をさすか」という視点で見ると私と見解が異なってきます。 この記事を書いた解説委員は最後の段落で次のように述べます(下線部は筆者による)。 災害時の情報は命に関わる情報です。 情報を受ける側である自治体と住民が、その情報がでたらどう対応するかがわかっていないと防災に役立てることができません。 上記の主張を図で表すと次のようになります。 この思考方法を読み解くと、「情報が出たら」という前提があり、その情報に反応して行動をすべきであるという枠組みが見えてきます。 この枠組みは一見正しいように見えますが、 情報が適切なタイミングで発表されることを前提としている(実際には予報に不確実性があるのでタイミングよく発表されるとは限らない) 「警報」や「特別警報」といった情報の発表自体に注目が集まる(実際は予測されている雨量や大雨の継続時間など、警報や特別警報の中身の方が防災上重要な意味を持つ) 等の問題点を含んでいます。 「気象情報には反応的に対応するものである」と言うのは防災の常識になっている部分があるので他の使い方が見えづらいかもしれませんが、要は思考方法を逆転させれればいいのです。 このブログでも折に触れて何度も同じことを書いていますが、今住んでいる場所でどのような気象災害(水害や土砂災害等)のリスクがあるかということを出発点とし、その危険性が高まっているかどうかを数ある情報群の中から見抜いていくという使い方が代替案です。 これを図にしてみます。 この思考方法の第一のメリットは、情報待ちの姿勢が排除されていることです。 また、災害が起こり得る雨量などを念頭に情報収集をするので、警報や特別警報が本来伝えたい予測情報の方に注目が集まると思います。 ...

【コラム】空港予報を使って台風の風のピークを読む方法

こんにちは。渡邉です。 台風や発達した低気圧等による強風・暴風のピークを知る方法の1つに航空機用に発表される飛行場の予報が便利です。TAF(タフ)と呼ばれる「運航用飛行場予報気象通報式」のことです。 TAF自体は以下のように少し暗号じみています。 【那覇空港のTAFの例】 TAF AMD ROAH 111940Z 1119/1224 16025KT 6000 SHRA SCT008 BKN015  TEMPO 1119/1121 16030G45KT 1500 +TSRA FEW005 BKN008 BKN015 SCT020CB  BECMG 1121/1122 19035KT  TEMPO 1121/1124 19045G60KT 1500 +TSRA FEW005 BKN008 BKN015 SCT020CB  BECMG 1123/1201 31015KT NSW  BECMG 1212/1215 05006KT これを見ると現在接近している台風6号の風のピーク時間帯や風速・風向などが分かるのですが、一般的には上記の電文はなじみがありません。そこで役に立つのが こちら のサイトです。 http://www.time-j.net/Metar/Japan このサイトで例えば那覇空港を選ぶと、実況を示す情報であるMetar(メター)(左側)と予測を示すTAF(右側)の電文(冒頭のような暗号じみた文)が翻訳されたものを見ることができます。 那覇空港のTAFの例(右) TAFの便利なところは以下の点です。 強風や暴風が吹く時間帯が詳しく分かる 風速や瞬間風速を通じて風のレベルが分かる 嵐が終わる時間帯が分かる 那覇空港の上記の例でみれば、Metarに示された現状の南西 16m/s 瞬間風速22m/sという風よりも強い風(南 23m/s 瞬間風速 31m/s)が12日9時にかけて一時的に予測されています。 風速と体感的な状況や懸念される被害との関連性は以下の気象庁の表を見ると分かりやすいです。 風の強さと吹き方 出...

【コラム】台風の際に押さえたい「地方気象情報」や「府県気象情報」

こんにちは。渡邉です。 台風6号の風に関する情報提供で沖縄気象台が発表している情報がわかりやすいのでご紹介したいと思います。以下の資料の出典は こちら です。 沖縄地方気象台が発表した台風6号に関する風の情報 (気象庁ホームページより) 分かりやすいと思われる点: 風の影響の出始めや風のピーク、台風最接近が1つの表にまとめられていて判断しやすい 風向や風速、最大瞬間風速までまとめられているので多くの資料を別々に見る必要がない 暴風警報の発表予定時間帯も言及されているので行政等も事前に対策を立てやすい 暴風警報や強風注意報の発表状況が分かる 次の情報がいつ出されるかが分かる 情報の有効期限が「発表時刻からおおむね3時間」であると明記してあるのもこの資料のポイントの1つです。以前、賞味期限が切れたような情報がYahooのトップニュースに流れることがあるという記事を書きましたが( こちら です)、刻一刻と変わっていく状況を反映していない気象情報は有益ではないため、気象情報の有効期限の言及は非常に重要だと思います。 なお、以下のルートで本情報は入手できます。 1.まずは気象庁HPの「防災情報」( こちら )から「気象情報」を開きます。 2.地方のところから「沖縄」を選びます。 3.さらに「府県」のところから「沖縄本島地方」を選びます。 4.その中の1つのファイルが今回紹介したものです。 気象庁のホームページではなく、沖縄気象台のページ( こちら です)からもアクセスできます。 (ア)「台風関連の情報」を開きます (イ)「各地方の情報」を見ます。例として「沖縄本島地方」を選びます。 (ウ)右側に開いた情報が沖縄本島に関する情報なのでそこからファイルを開きます 今回の記事は沖縄気象台の発表情報を例にしました。 このブログでも何度か繰り返し述べていますが、「地方気象情報」や「府県気象情報」といった「気象情報」には詳細でかつ分かりやすい解説や今後の予測情報が含まれていることがありますので台風や大雨の際にはご覧になられるとよいと思います。