2018年7月8日ごろにかけて、「西日本・東日本で非常に激しい雨が断続的に降り続き、記録的な大雨となるおそれ」(気象庁発表資料より)があり、厳重な警戒が呼びかけられています。
大雨災害に備える上で重要なのは、大雨が起こりうる場所や時間を事前にできる限り把握することです。そのような際に非常に役に立つのが気象レーダーや今後の雨雲の動きです。
しかし、そうした便利なツールを漠然と見るだけでは、なかなか必要な情報が取りづらい面もあります。そこで今回は、レーダーや今後の雨雲の動きから大雨を見抜く方法をまとめてみたいと思います。現在進行中の大雨への備えとしてお役立てください。
■レーダーを見る時のコツ
レーダーや今後の雨雲の動きを見る時には、大雨の形が現れていないか確認することが重要です。
大雨の形を具体的に説明すると、「発達した雨域が1つのところでほとんど動かないように見える形」です。次のイラスト図では2014年広島豪雨の際のレーダー画像を例に挙げています。3つのレーダーの図は1時間ごとの様子を示していますが、この日は1時間経っても、2時間経っても、3時間たっても発達した雨雲が同じところに次々とかかり、結果として発達した雨域が1つのところでほとんど動かないようになっています。この大雨により土砂災害が発生し、多くの人命が奪われました。
気象とコミュニケーションデザイン作成資料 |
大雨の形のことを念頭におきながら、2018年7月5日の雨の降り方をレーダー画像で見てみましょう。
次の動画は、雲研究者で、気象庁気象研究所研究官の荒木健太郎さんがご自身のフェイスブックのページ(こちらです)で公開したレーダーのタイムラプス画像です(ご本人の了解を得て掲載しています)。
この中で大雨になっていたところはどこでしょうか?
答えは、強いエコー(オレンジや赤など時間雨量が多いことを示すもの)がへばりついたようにかかり続けていたところです。西日本各地でそうした状態となりました。
■大雨を監視するツール
これまでの雨雲の様子と、今後の雨雲の予測は、気象庁のホームページから確認ができます。
例えば「高解像度降水ナウキャスト」のページ(こちらです)では、3時間前からの雨雲の動きと今後1時間の雨雲の動きの予想を見ることができます。
また、同じく気象庁の「今後の雨(降水短時間予報)」のページ(こちらです)では、12時間前から15時間後までの雨雲の様子が分かります。
これらの予報ツールを使いこなすことで、今後大雨になる可能性のある場所、タイミング、ピークなどを読み取ることができます。
例えば下の図は、気象庁の「今後の雨(降水短時間予報)」から抜粋した1時間ごとの雨の予測です(2018年7月5日の日本時間22時40分すぎの時点で作成したもの)。
動画の最初は、2018年7月6日02時40分までの1時間降水量です。その後、同03時40分までの1時間降水量、同04時40分までの1時間降水量、同05時00分までの1時間降水量、同06時00分までの1時間降水量と続きます。
同じところで強いエコーがかかり続ける=危険な雨ですから、予想を見ると、この時点では愛知から静岡と大阪を中心にまとまった降り方になると表現されていたことが分かります。なお、予測で表現された大雨となる場所や影響時間、雨量の見込みは頻繁に変わることもあるため、最新の情報やナウキャスト情報を常に確認することが重要です。
■雨の影響(インパクト)も確認する
レーダーや今後の雨で危険な雨に気づいたら、どういった影響が出る可能性があるかというインパクト予想まで含めてぜひ確認してみてください。気象庁のホームページでは「危険度分布」を公表しています(こちらです)。
以下の図は2018年7月5日05時10分現在の土砂災害(上)、浸水害(中)、洪水(下)の危険度分布です。
同じところで強いエコーがかかり続ける=危険な雨ですから、予想を見ると、この時点では愛知から静岡と大阪を中心にまとまった降り方になると表現されていたことが分かります。なお、予測で表現された大雨となる場所や影響時間、雨量の見込みは頻繁に変わることもあるため、最新の情報やナウキャスト情報を常に確認することが重要です。
■雨の影響(インパクト)も確認する
レーダーや今後の雨で危険な雨に気づいたら、どういった影響が出る可能性があるかというインパクト予想まで含めてぜひ確認してみてください。気象庁のホームページでは「危険度分布」を公表しています(こちらです)。
以下の図は2018年7月5日05時10分現在の土砂災害(上)、浸水害(中)、洪水(下)の危険度分布です。
土砂災害警戒判定メッシュ情報 |
大雨警報(浸水害)の危険度分布 |
洪水警報の危険度分布 |
大阪や和歌山、高知など、場所によっては、極めて危険(紫色の箇所)・非常に危険(ピンク色の箇所)のレベルに達しているところがあります。今の段階ですでに、土砂災害や水害がいつ起こっても不思議ではない異常事態であることがこの図から分かります。
■大雨への備え
最後に今回の大雨に対するポイントや注意点をまとめてみたいと思います。
◯冒頭で引用した気象庁の報道発表資料にある通り、今回の大雨はまだまだ続きます。
◯これまでの雨ですでに危険な状態にある中で、さらに追い討ちがかけられる事態です。
◯実際にどこでどのような大雨になるかは、直前にならなければ分からないこともあります。このため、随時、レーダーや今後の雨を見て大雨になりそうかどうかを判断してください。
◯どのような災害が迫っているかを知るために、インパクトの情報(土砂・浸水害・洪水)を見て危険度を掴んでください。
◯洪水予報の対象河川の場合は、洪水予報発表の有無と、発表されている場合はその内容を確認してください(こちらのページで確認できます)。
◯自治体が避難勧告や避難指示などを発表した場合は、これらを軽く考えないでください。
◯自治体からの避難の呼び掛けが遅れたり、発表されないことも起こり得ます。避難に関する情報がない場合でも、気象情報や危険度分布、雨の降り方、水位などから危険だと思ったらご自身で避難行動を取ってください。