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【オーストラリア】過去の災害や気候変化の影響をどう見せるか

こんにちは。渡邉です。

地域の災害を知る上で、過去の災害を知ることが重要であるとの
指摘は様々な所で言われています。日本だと、古い地形図を見て
地域の潜在的な危険性を判断すべしと呼びかけている方々もいますね。

今日はオーストラリアのクイーンズランド州の事例をご紹介したいと思います。

その名は、Harden Upというウェブ上のプロジェクトで、州政府などの予算を得て、
私がインターンをしていたGreen Cross Australiaという団体が手掛けました。

プロジェクトのウェブサイトはこちらです。
http://hardenup.org/

↑トップページの切り抜きです








Harden Upを一言でいえば、地域ごとに過去の災害と気候変化による影響を
見せていくサイトです。もちろん、参加型の要素も加えてあり、
閲覧した人がサイト上で災害対策のプランを作ることもできます。

今回は過去の災害や気候変化の影響をどう見せるかに焦点を当てたいので、
その部分について特化してご紹介します。

まずはトップページにあるBE AWAREというところを見てみてください。
地域を入力する欄があります。

例えば州都であるブリスベンと入力してみます。
↑地区名(Suburb)を入力します




















すると、ブリスベンのこれまでの災害と、今後の気候変化による影響の
見込みが一覧となって出てきます。

出てくる情報を順番に紹介しますと・・・

1.過去からの災害
洪水、サイクロン、山火事、高潮、豪雨(severe storm)の事例ごとに
色分けして表示されます。これによってどんな災害のリスクがあるかが
視覚的に分かります。

↑1880年代からの災害一覧がグラフで表示されます


















2.災害事例の詳細
被害が発生した等の顕著な災害の場合、ケーススタディとして
別ページでより詳細な情報が掲載されています。

↑詳細なレポートのある事例には紫色のマークがついています










3.人口増加率
100年以上の間に地域の人口がどう変化してきたのかが
グラフで表示されます。

↑1870年代後半からの人口増加の様子が分かります










4.各種情報へのリンク
ブリスベン市当局や州政府、地元マスコミ、ライフライン会社などへの
リンクや各種情報が網羅されています。

↑関連する情報へのリンクが貼られています

















5.写真や動画での過去災害や気象リスクの紹介
過去の災害の様子を写真や動画で知ることができます。
また、退官した元予報官による気象解説の動画もあります。

↑過去の災害の様子が視覚的に分かります。動画も豊富です









6.今後の気候変化による地域への影響見込み
気候変化により気温や降水量がどうなっていく可能性があるか、
今後の見込みを表で紹介しています。

↑これまでとこれからの状況が把握できます












7.降水量や気温に関する今後の予測
気候変化に伴って降水量や気温、海水面がどう変化する
可能性があるかを示しています。

↑これまでの観測記録と今後の見通しです















いかがでしたか?情報としてかなりまとまったサイトであることを
お伝えできたのではないかと思います。

Harden Upの災害データベースには、クイーンズランド州で発生した
150年間・約3,000件の気象災害が網羅されていて、地域ごとにソートができます。

ちなみに、過去災害に関するデータ提供はオーストラリア気象庁(BOM)の元予報官です。

気候変化に関する予測部分や過去の降水データなどの分析は
国の研究機関(CSIRO)の研究者からボランティアを募って実施したそうです。

今回の記事ではサイトの紹介がメインになってしまいましたが、
重要なポイントとしては、一目で地域の災害史が分かると、
どのような災害の可能性がある地域かが分かりやすいことだと思います。

欲を言えば、過去の災害に関する定量的なデータ(どれくらいの間に
何ミリの降雨があったかなど)がすべての事例で網羅され、
わかりやすい形でまとめられていると、ある雨量でどのようなことが
起こり得るかということを把握しやすくなるのではと思います。

なお、オーストラリアにはこのHarden Upの他にも
過去災害のデータベースがありますので、
そちらはまたおいおい記事にしていきたいと思います。