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【日本】記録的短時間大雨情報を避難勧告のトリガーにしたケースの考察(福井県S市)

こんにちは。渡邉です。

避難勧告等の基準を考えるシリーズの第3回目は福井県のS市の事例です。赤で下線を付けている部分について今日は議論します。






















下線部分を抜き出すと次のとおりです。
【避難勧告】
3 大雨警報(土砂災害)が発表されている状況で、記録的短時間大雨情報が発表された場合
【避難指示】
2 土砂災害警戒情報が発表されており、記録的短時間大雨情報が発表された場合
「記録的短時間大雨情報」とは、「大雨警報発表時に、現在の降雨がその地域にとって災害の発生につながるような、稀にしか観測しない雨量であることをお知らせするために発表するもの」です(気象庁のこちらのページより引用)。各都道府県単位で「まれにしか観測しない雨量」というのがあらかじめ基準化されており(基準はこちらです)、これを実際に超える雨量が観測(あるいは解析)された場合に発表されます。

今回の基準に関して論点をあげるとすれば以下の2つになります(「記録的短時間大雨情報」と毎回書くと読みづらいので、以下、「記録雨」と記載します)。


■論点1:記録雨は大雨が降った「後」に出される情報であることについて
・記録雨は大雨が降った後に「〇〇で大雨が降った」と知らせる情報です。記録雨クラスの大雨になるという予測情報ではありません。
・福井県の場合、記録雨の基準は1時間に80ミリですが、この雨量を超えそうかどうかは直前や大雨となっている事中には予測できていることがあります(ケースバイケースですが、例えば10分間に15ミリ前後の降雨をもたらす雨雲が継続的にかかりそうであれば記録雨の発表レベルの雨になるかもしれないと推測できます)。
・ただし、推測が仮にでき、気象台から市にその内容が伝えられたとしても、記録雨が正式に発表されるまで推移が見守られるという状態となります。
・記録雨の発表を待つ時間はおそらく数十分ですが、この時間を必要なものとみるか、あるいは一刻も早く避難勧告を出す上での隠れた障害とみるかが論点です。

■論点2:記録雨が出た後の状況について
・大雨が継続する際には、記録雨が複数回連続で発表されることもあります。
・2014年の白老町のケースでは3時間連続で発表され、一連の降雨の中では計4回発表されました(下表参照)。
・記録雨が発表されて避難勧告・避難指示の発表条件を満たす事態となった時に、さらに記録雨クラスの大雨が降っているということも念頭に置いておく必要があります。

2014年9月10日の白老町の記録雨(出典はこちら










今日は記録的短時間大雨情報をトリガーとした対応について検討を加えました。記録雨は警報発表後の異常事態を示す重要なシグナルではありますが、大雨が降った事後にしか発表されないということに対して注意を払いながら利用することが必要かもしれません。

(「【日本】避難勧告等の基準に大雨の特別警報をどう取り入れるか その1(愛知県K市の案)」に続く)