こんにちは。渡邉です。
PCの古いフォルダーを整理していたら、2013年1月にオーストラリア・クイーンズランド州のブリスベン川が増水した際の情報が出てきました（何かで使えると思ってとっておいたのですね）。
その中の1つがブリスベン市が出した洪水予報のPDFでした（PDFが必要な方はこちらからお問い合わせください）。これは、日本の洪水予報（指定河川洪水予報）の伝え方と大きく異なっており、今後の洪水予報のコミュニケーションを考えていく上で参考となる事例であるのでここでご紹介したいと思います。
まず、日本の洪水予報の場合ですが、基準としている水位観測所の水位がいつ・どの程度まで増えていくかを伝えることに主眼が置かれています。以下の例は2014年の台風時に静岡県内を流れる菊川に出された洪水予報ですが、加茂水位観測所（菊川市）というところの水位がどう増えていくかということが予測されています。
ちなみに、オーストラリアの気象庁（Bureau of Meteorology:BOM）が発表する洪水予報も基本的な伝達内容は同じで、どの地域でどの程度の出水が見込まれているかを文字で伝えています。
さて、冒頭でもお伝えしましたとおり、2013年1月末の大雨でブリスベン川が増水しました。
ブリスベン川は1974年に戦後最大規模の洪水が発生し、2011年にはそれに次ぐ規模の洪水が起こり各地で甚大な被害が発生しました。下の図はブリスベン川の最高水位を年別に示したものです。2013年1月の洪水は結果的には2011年の規模までは達しなかったのですが、テレビでは2011年の増水に匹敵するかどうかという点が盛んに報道されていました。
2011年の洪水に匹敵するか否か、ということが人々の注目を集めていたわけですが、ブリスベン市のホームページでは洪水リスクに関するリアルタイムの情報が公表されていました。その情報を一言でいえば、BOMの洪水予報に基づいて、個々人の住宅にどういった影響があるのかを示すものです。
市のホームページから次のような文書とそれに続くリストをPDFで入手することができました。主文には、市が提供する情報の読み解き方や注意が書かれています。
主文の後には各ストリートと家屋番号ごとに洪水リスクを示した情報が続きました。以下に一部を抜粋しますが、赤で書かれている住所はLikely to flood（洪水の恐れあり）、緑はUnlikely to flood（洪水の恐れなし）を示します。
このリストには、ブリスベン川がBOMの予測に基づいて増水した場合、その住所の土地の高さから見て水位が何メートルになるかが書かれています。Likely to flood/Unlikely to floodの横に数字が2つありますが、左側は土地の一番低いところから見て、右側は土地の一番高いところから見た際に、増水した水位がどの高さに達するかを示します。例えば左側の数字がプラスであれば、土地の低いところは水に浸かることを意味し、その数字自体を見れば何メートル浸水するかが分かります。
このように、ブリスベン市はBOMの洪水予報を個人（家庭）のレベルに翻訳してより利用しやすい情報として公開しました。実際にこの情報にあたって洪水の危険性を判断するという動きが市民の間にも見られました。
ブリスベン川は日本の多くの河川のように天井川（増水時の水位が住宅街などの標高より高くなるもの）ではないのでできる情報提供のあり方かもしれませんが、河川の増水で個人の家がどうなるかといういわば「私にとっての具体的な影響」がリアルタイムで把握できるという点は注目に値すると考えています。
（関連情報）
ブリスベン市は普段からFlood Wiseというシステムを市のホームページ上に準備しており、それぞれの住宅の洪水リスクをわかりやすい形で示しています。このことについては以前記事にしましたのでこちらも併せてご覧ください。
【オーストラリア】個別住居の洪水リスクに関するレポートが簡単に手に入る利点とは
http://wpcdnote.blogspot.nl/2014/11/blog-post_16.html
（参考）
*1：ブリスベン川の洪水履歴
http://www.bom.gov.au/qld/flood/fld_history/brisbane_history.shtml
PCの古いフォルダーを整理していたら、2013年1月にオーストラリア・クイーンズランド州のブリスベン川が増水した際の情報が出てきました（何かで使えると思ってとっておいたのですね）。
その中の1つがブリスベン市が出した洪水予報のPDFでした（PDFが必要な方はこちらからお問い合わせください）。これは、日本の洪水予報（指定河川洪水予報）の伝え方と大きく異なっており、今後の洪水予報のコミュニケーションを考えていく上で参考となる事例であるのでここでご紹介したいと思います。
まず、日本の洪水予報の場合ですが、基準としている水位観測所の水位がいつ・どの程度まで増えていくかを伝えることに主眼が置かれています。以下の例は2014年の台風時に静岡県内を流れる菊川に出された洪水予報ですが、加茂水位観測所（菊川市）というところの水位がどう増えていくかということが予測されています。
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| 洪水予報の例（静岡県の菊川のケース） |
ちなみに、オーストラリアの気象庁（Bureau of Meteorology:BOM）が発表する洪水予報も基本的な伝達内容は同じで、どの地域でどの程度の出水が見込まれているかを文字で伝えています。
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| BOMが発表する洪水予報の例 http://www.bom.gov.au/australia/warnings/ |
さて、冒頭でもお伝えしましたとおり、2013年1月末の大雨でブリスベン川が増水しました。
ブリスベン川は1974年に戦後最大規模の洪水が発生し、2011年にはそれに次ぐ規模の洪水が起こり各地で甚大な被害が発生しました。下の図はブリスベン川の最高水位を年別に示したものです。2013年1月の洪水は結果的には2011年の規模までは達しなかったのですが、テレビでは2011年の増水に匹敵するかどうかという点が盛んに報道されていました。
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| ブリスベン川の洪水履歴（BOM*1） |
2011年の洪水に匹敵するか否か、ということが人々の注目を集めていたわけですが、ブリスベン市のホームページでは洪水リスクに関するリアルタイムの情報が公表されていました。その情報を一言でいえば、BOMの洪水予報に基づいて、個々人の住宅にどういった影響があるのかを示すものです。
市のホームページから次のような文書とそれに続くリストをPDFで入手することができました。主文には、市が提供する情報の読み解き方や注意が書かれています。
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| 各地区・各世帯別の洪水予報の主文 |
主文の後には各ストリートと家屋番号ごとに洪水リスクを示した情報が続きました。以下に一部を抜粋しますが、赤で書かれている住所はLikely to flood（洪水の恐れあり）、緑はUnlikely to flood（洪水の恐れなし）を示します。
このリストには、ブリスベン川がBOMの予測に基づいて増水した場合、その住所の土地の高さから見て水位が何メートルになるかが書かれています。Likely to flood/Unlikely to floodの横に数字が2つありますが、左側は土地の一番低いところから見て、右側は土地の一番高いところから見た際に、増水した水位がどの高さに達するかを示します。例えば左側の数字がプラスであれば、土地の低いところは水に浸かることを意味し、その数字自体を見れば何メートル浸水するかが分かります。
このように、ブリスベン市はBOMの洪水予報を個人（家庭）のレベルに翻訳してより利用しやすい情報として公開しました。実際にこの情報にあたって洪水の危険性を判断するという動きが市民の間にも見られました。
ブリスベン川は日本の多くの河川のように天井川（増水時の水位が住宅街などの標高より高くなるもの）ではないのでできる情報提供のあり方かもしれませんが、河川の増水で個人の家がどうなるかといういわば「私にとっての具体的な影響」がリアルタイムで把握できるという点は注目に値すると考えています。
（関連情報）
ブリスベン市は普段からFlood Wiseというシステムを市のホームページ上に準備しており、それぞれの住宅の洪水リスクをわかりやすい形で示しています。このことについては以前記事にしましたのでこちらも併せてご覧ください。
【オーストラリア】個別住居の洪水リスクに関するレポートが簡単に手に入る利点とは
http://wpcdnote.blogspot.nl/2014/11/blog-post_16.html
（参考）
*1：ブリスベン川の洪水履歴
http://www.bom.gov.au/qld/flood/fld_history/brisbane_history.shtml