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【地域の弱さを知る vol.8】観測史上の値や年間降水量等を参考に危険な雨の量を知る

こんにちは。渡邉です。

私が好きなとある作家は毎日文章を書くことでリズムを壊さないとインタビューで答えています。

「地域の弱さを知る」シリーズの途中で全然別のこと(会社ができた件)を一昨日挟んだので、続けて書かないと何を書いていたか忘れますね・・・。

簡単にここまでのおさらいですが、50年に1回の雨の値、注意報・警報の基準値、過去の災害時の雨量、ハザードマップでの想定雨量をもとに、地域に影響を与える雨量を知ろうという内容でした。前回のブログはこちらです。

特集記事の合間にどうしても書きたくなった件(例えば今週、ブリスベンで集中豪雨が起こり日本でもニュースになったのですが、これに関するソーシャルメディアのつかわれ方など)は、一つのシリーズが終わった時に書いていこうと思います。

今日はこれまでと少しアプローチを変えて、極値という値や月間降水量、年間降水量を基に地域にとっての大雨を探ります。

それではどうぞ↓

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■極値・月間降水量・年間降水量との比較
「災害を与えうる雨量」について、過去に災害が発生したときの雨量や、発生が想定される雨量を基に考えてきました。こうした見方の他にも、地域にとって大雨となっていることを把握する方法として、観測史上の値と比べたり、月間や年間の降水量と比べる方法があります。これらの方法はこれまでの手法とは違い、どのような災害が起こり得るかを直接的にイメージできるものではありませんが、ある地域にとって尋常ではない降水を定性的に把握することができます。

気象庁のホームページでは、これまでに観測された雨量データを容易に利用できます。

少し前にも紹介した「過去の気象データ検索」のページを開き、都道府県と最寄りのアメダスを選びます。「年月日の選択」は選ばず、そのまま「データの種類」の中から「地点ごとの観測史上1~10位の値」を選択します。
※過去の気象データ検索のページはこちらです。
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php

過去の気象データ検索の画面(気象庁ホームページより)
















試しに名古屋のアメダスのデータを上記の方法で調べてみますと、以下のようなデータを入手することができます。

観測史上1~10位の値(年間を通じての値) アメダス名古屋
(気象庁ホームページより)














このデータの中で、「日降水量」(1日の降水量)と、「日最大1時間降水量」が大雨が大雨であることをつかむ際に非常に参考になります。

例えば、仮に上記のデータを2000年9月11日・12日に発生した東海豪雨で大雨となっているときに見たと考えてください。東海豪雨以前の第1位の値(これを「極値」といいます)は、日降水量が1896年9月9日に記録された240.1ミリ、日最大1時間降水量は1919年 7月18日の92.0ミリです。

東海豪雨では、9月11日だけで428.0ミリの日降水量が降り、100年以上前に観測された極値を大幅に更新しました。9月11日の時間雨量97.0ミリもそれまでの極値を約80年ぶりに更新しています。つまり、東海豪雨によってもたらされた降雨は、アメダス名古屋の観測史、特に日降水量という面から見て、それまでの記録を200ミリ近くも塗り替える極端な量であったことがわかります。

東海豪雨のように比較的大規模な災害は、その地域の極値を更新するか、あるいはこの1位から10位の表のどこかに入ってくるような規模であることがあります。豪雨が局地的・集中的に発生し、アメダスの観測地点以外で大雨となっているケースもあるため、この手法にも一定の限界がありますが、異常な降水かどうかを知る上では非常に参考になる情報だと思います。

なお、「過去の気象データ検索」で都道府県と観測地点を選び、「データの種類」から「年・月ごとの平年値を表示」を選ぶと、月間や年間の平均降水量がわかります。

平年値(年・月ごとの値) アメダス名古屋
(気象庁ホームページより)














アメダス名古屋の値を見ると、例えば9月の平均降水量は234.4ミリ、平均の年間降水量は1535.3です。数時間程度の集中豪雨で、その雨が起こった月の平均降水量を超えたり、あるいは台風や前線の影響で年間降水量の数十パーセントに匹敵する大雨となることがあります。観測史上の値に加え、地域にとって危険な雨の量を知る際に、月間・年間降水量の統計値も参考情報としてご覧いただきたい情報です。

(「下水道の対応能力から見た地域の弱さ」に続く)
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